以上の考察は100%当たっているという自信はありません。ですが、恐らくは菅総理は現在の局面を乗り切って、年末か年明けにコロナと経済の状況好転を待って解散総選挙の勝負に出てくるはずです。そして、その先へと続投するためには、主要派閥同士が争っていたほうがいいし、最大派閥の細田派(清和会)の4人がいつまでも喧嘩していてくれたほうが良いわけです。
ですから、この学術会議の問題は、保守対リベラルの争いというよりも、自民党内の政治力学という観点で見ていった方が分かりやすいのではないかと思います。
ところで、今回の考察にあたって改めて強く感じさせられたのは、現在の自民党の派閥というものが「全く政策や政治思想とは無関係」の「個人間の好き嫌いや距離によって」集合離散が繰り返されているという点です。
例えば、清和会(福田、安倍、細田派)は親米保守で台湾ロビーの末裔で、ネトウヨも抱き込んで右傾化しているかと言うと、例えば稲田朋美がLGBT、夫婦別姓などで軟化したり、下村と萩生田が喧嘩したり、グズグズになっているわけです。
二階派などは、ルーツは中曽根派(渡辺ミッチー派)で、そこから村上正邦など超保守のブループで立ち上げたものの、現在は親中穏健寝技派みたいになっています。
岸田派は名門といっても、宏池会とは名ばかりで地方はかなり泥臭いことになっていますし、首都圏では妙に中道だったり、ここもズブズブです。
麻生派などは完全に人脈だけで出来ている感じで、思想とか政策とかは一貫性はなさそうです。
ということで、菅総理が無派閥という立場を活かして、各派の抗争を誘導しながら、最善手の政策を選択し続けることで政権の長期化を狙うというのは、理にかなっていると思います。ですが、そこに民意のオーソライズがあるのかというと、かなり怪しいわけです。
やはり「マトモな予備選」で候補を選び、「厳格な総裁選」で総理候補を選ぶという抜本的な改革をしないと、自民党という組織はやがて崩壊するのではないかと思います。その際には、維新どころではない極右政党が伸長するかもしれません。そうしないためにも、自民党がもっと透明性のある、積極力のある政党組織に脱皮してもらわないと困ると思うのです。(文中敬称略)
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