中国が招く「コロナ再拡大からの第三次世界大戦」最悪のシナリオ

 

形成さつつあるRed Team vs.反中国包囲網

では日本経済はどうでしょうか?国内での感染状況はなくなっていないものの“落ち着いてきた”との観点からか、経済活動への制限が次第に緩和され、それに伴って消費志向も上昇してすこし持ち直しているという数値が出ています。しかし、日本経済特有の外需への依存度の高さが日本経済の復活スピードを遅らせていることに加え、シニア層の増加で中長期的な潜在成長率が低く、他国に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション}のスピードも遅いため、楽観視はできないものと考えます。

このような状況の時、これまでのような国際経済の連携が保たれていれば、唯一成長を遂げる中国経済のプラスの影響を各国とも享受できたかもしれませんが、米中対立に加え、コロナのパンデミック、そして香港国家安全維持法の強行採決による一国二制度の事実上の消滅と新疆ウイグルで進む人権侵害などを理由に欧州各国が中国離れを加速させる中、なかなか回復パターンを各国ともに確立できずにいます。

そのような中、中国の強硬策への脅威と反対から欧米諸国を中心に中国包囲網を強化し、その網を狭めようとする試みが見受けられます。例えば、以前にもお話しした日米豪印がクワッドを組む【自由で開かられたインド太平洋地域戦略】では、地域における共同の安全保障体制(中国包囲網の形成)に留まらず、経済、エネルギー、情報(インテリジェンス)など多岐にわたる分野で協力を深める動きが加速しています。そこに中国離れを加速させる独、英、仏が加わり、これまでの二国間ベースでの外交安全保障体制から、マルチでの外交安全保障体制への転換が見られ、完全に中国とその仲間たち(Red Team)vs.反中国包囲網といった2大ブロックが形成されようとしています。

もちろん、私が好きな(?)トルコや、ロシアと言ったどちらのブロックにも属さない独自路線を取っている主要国もあり、これはまた別の緊張を作り出していますが、「困ったときはお互い様」的な国際的な連携は取りづらくなっているのが現状です。

その煽りを受けているのが新興国・途上国です。ラテンアメリカ・カリブ諸国、アフリカ諸国、東南アジア諸国は、日に日に強まる中国の強権的な外交姿勢に対して警戒感を示すものの、実際に困っている際に安価で高水準の技術を提供してくれるのは、欧米諸国ではなく中国という現実に直面して、中国からの支援の確約と引き換えに、国連をはじめとする国際舞台で中国へのサポートを提供するという苦渋の決断を迫られているのが現状です。

例えば、surveillance system、特に顔認証の認証システムについては、アルゼンチンは、日経新聞の記事にもあったように、アメリカからのHuaweiや中国製の排除の依頼にも拘らず、ハイクビジョン社のシステムを首都ブエノスアイレスに導入しましたし、コロナ時にマスクや人工呼吸器、そして医療スタッフと物資の提供をいち早く受け、中国賛美を行ったセルビア共和国は、Huawei製のシステムの導入を決めました。

両国とも「中国製の導入により、多くの個人データなどが中国に吸い取られる危険性については十分認識しているが、背に腹は代えられない」とのことですし、トランプ大統領が対峙するイランも、以前お話しした通り、25年にわたる戦略的なパートナーシップを中国と結びアメリカと対決するための後ろ盾と経済的な支援を得る代わりに、中国への外交的サポート(と原油の継続的提供)を約束しています。

そしてアメリカがアフガニスタン政策の一環でパートナーシップ関係にあるパキスタンも、隣国インドとの歴史的ライバル関係にも押され、中国との接近を強め、アメリカをはじめとする欧米諸国とは(頻繁に人権問題や内政問題にケチをつけられることに嫌気がさしたようで)距離を置くようになってきています。

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