【書評】大学教授がマジで研究した「マジヤバイっす」と日本語の豊かさ

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「です」を「っす」と短縮することを、「ス体」と呼ぶのをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、「ス体」の名付け親である大学教授が著した一冊。言語学の博士による「新しい丁寧語」の研究の成果を、柴田さんはどう読んだのでしょうか。

偏屈BOOK案内:中村桃子『新敬語「マジヤバイっす」: 社会言語学の視点から』

fc20201022-s新敬語「マジヤバイっす」: 社会言語学の視点から
中村桃子 著/白澤社

「そうっすね。おもしろいっす」。関東学院大学の教授、言語学の博士である著者が毎日接している男子学生が、この話し方を始めたのは、1990年代らしい。「そうですね。おもしろいです」の「です」を「っす」に短く縮めた話し方である。大学生がこんな言葉をつかって、バッカじゃなかろかと思う。わたしのような60年代に大学生だった年寄りには、抵抗感しかない。ところが!

著者は大学の体育会系クラブに所属する男子学生の会話を録音してみた。すると、先輩が何か言うと、後輩が「そうっす」「そうっす」と繰り返す。先輩が「センスがねぇや、あいつ」と言うと、後輩は「センスないっす」とただちに同意する。部活では先輩を立てなければならないときに「です」ではなく「っす」をつかう。「です」の堅苦しさを除き、軽く敬意も表している、という。

著者は「っす」を「ス体」と呼ぶ。第一章では「ス体」の特徴と社会言語学的な分析をしており、かなりめんどうくさい。第二章は男子大学生が日常生活でどのように「ス体」を使うのかを見る。以下の章はほとんどは、書かれていることは分からなくはないがダルい。この本は一般的な読み物ではなく、丁寧な研究書である。おおむね退屈だから、ナナメ読みしたっていいでしょ。

どうやら、高校生・大学生が会話で「ス体」を使っているらしい。普通、目上に対しては「ですます体」(丁寧体)を使う。ただ、この言い方は、敬意は表せるけど、相手を遠ざけてしまう欠点があり、先輩に「そうですね」はよそよそしい。というが、そうかなあ。一方、「そうっすね」と「ス体」を使うと、敬意と親しみの両方が表現できる、とか。わたしは全然そんなふうに感じない。

著者によれば、「ス体は後輩が先輩に話す時に使い、決してその逆ではないこと。後輩同士でも避ける。つまりス体は『親しい丁寧さ』を表現する一種の敬語だった」「他にも主張を和らげる、仲間意識を示すなどの意味があってス体はとても繊細」「そこに広がっていたのは、かわいげがあって憎めない豊かな世界だった」。研究家(開発者?)の分析は理解できたが、世間様はどう思う。

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