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眼前の「殴る蹴る」を担任が放置。葛飾区小学校「学級崩壊」の惨状

東京・葛飾区の小学校で信じがたい「いじめ暴行事件」が発生しました。なんと教室内に担任教員がいる目の前で、生徒が殴る蹴るの暴行をくわえていたにも関わらず放置していたというのです。さらに暴行はエスカレートし、被害児童は身体と心身に傷を負い、学校へ復帰できない精神状態にまで追い込まれてしまいました。数々のいじめ問題を解決に導いてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で、学校側の対応の酷さと隠蔽体質を批判。さらに、加害者の親が被害者の親へ放った理解しがたい「暴言」についても明かしています。

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葛飾小学生殴打暴言いじめ事件、被害概要

東京都葛飾区、漫画「こち亀」で全国的に知られているこの区の公立小学校で、強烈な「暴力いじめ」が発生した。

事の発端は、加害児童らが、家庭科で使う「エプロンキット」の入った箱に書いてある家庭科メーカー「アイセック」に「ス」という文字をくっつけて女子児童らにアピールしようとしていたことを被害児童が注意したことからであった。

そもそも、この加害児童らは集団で不特定多数の児童を集中的に攻撃するなどしており、問題行動が多い児童らであったが、学年が上がり担任が替わったことで、指導不能な状態に至っていた。

被害児童A君は、「アイセックス」騒動の翌日、20分間の休み時間に、加害児童らの中心人物であるB君に対して女子が嫌がるようなことをしてはいけないという内容を話した。

その次の休み時間、Bの様子に恐怖を覚え、A君は身の危険を感じて逃げたが、教室内で捕まり、殴る蹴るの暴力を受けたのだ。

さらに昼休み、その後の休み時間も暴力は続いた 。

その翌日も、休み時間には必ず暴力を振るわれた。被害児童A君はとにかく逃げるが追い詰められ、暴力を繰り返し受けたのだ。抵抗しても、加害児童のBはよりひどく暴力をふるうようになったという。

そして、 2020年9月10日、4時限目の授業中に、図書室で被害児童のA君は足や腕をBに殴打され、さらに教室に戻ってからの休み時間に左目を殴打された。その後、頭痛やめまい、吐き気の他、視覚が弱くなるなどの怪我を負ったのである。

また、全身に渡り、四六時中、殴る蹴るの暴力を受けていたA君は、結果的に他のクラスメイトの介助がなければ歩くのも大変な状況にまで追いやられたのである。

A君の診断書の一部。「顔面打撲」と診断されている

驚くことに、こうした暴力行為は教室で起きた事であるが、その間、担任教員は概ね同空間である教室にいたというのだ(図書室暴行の際は居なかった)。

被害児童であるA君の保護者によれば、最もひどく暴力を振るわれた9月10日、帰宅したA君が顔を腫らしているなどの様子やA君本人から「殴られた」という申告に基づいて、学校に確認の電話をした。

つまり、学校はこれほどまでの状況に至っていながら事態把握ができていなかったのだ。保護者からの電話の後、学校は簡易の確認をして応対したのみであった。その後日の説明では、「Bは図書室で別の友人と話しているときに、A君がその間を割り込んできたからイラっとして殴った」という全くの言いがかりの説明を受けたそうだ。

また、「Bは目を殴ったのではなく蹴ったのだと言っている」との説明をしたとのことだった。

あたかもA君の申告が違うのだと言いたいような幼稚な言い訳を、学校側は鵜呑みにして、被害保護者に説明をしている。

学年全体が「学級崩壊」の惨状

殴るも蹴るも暴力という点では同じであり、暴力をふるったことをBが認めていることに変わりはない。

医師による診断の結果、A君はPTSDとの診断が出ている。写真は診断書の一部

大けがをしたA君の様子から、保護者が「なぜ話してくれなかったか?」と問うと、「親に言えばもっと酷くなるかもしれない」とA君は話したそうだ。

もっとも、9月10日の暴力事件の最中、止めに入った同級生がいた。Bは、次はその止めに入った児童をターゲットにすると宣言していたとのことであった。日々暴力を加えられたり、他の児童が暴力や暴言を吐かれ、それを止めようともしない担任の姿を見て、A君は教室内、学年内で有効ないじめ対策はないと考えていたのであろう。

A君に過去に遡って被害状況を聞くと、Bを含めて学年のおよそ2割もの児童の名前が挙がった。いじめ以外にも、授業中に突然騒ぎ出したり、歩き回る行動があったというから、学年全体が崩壊(いわゆる学級崩壊、学年崩壊)を起こしていた可能性が濃厚だ。

学校の判断

A君が打ち明けた内容と学校の説明は噛み合わない。しかも、担任はA君が左目に大きな問題を抱えているほどの怪我の状況であるにも関わらず、これは 子どものじゃれあいで、たいして悪質でもない」と言ってのけたのだ。

一向に改善しない状況の中、A君は目や全身の痛み、「守ってもらえない」ということなどから、学校に行ける状態ではなかった。その間、連絡帳を同級生が届けに来たのだが、それを学校から頼まれたのは、当初は加害児童らであったのだ。

しかも、お休み中に渡される「おやすみたより」には、書かれているはずの「宿題」の欄が消されたりしていた。

これは、もはや「二次被害」と言えよう。

本来、学校はいじめの申告があった場合、いじめの疑いがあるとして調査をしなければならない。早急にその実態をつかみ、把握していく必要があるからだ。

つまり、学校は本来いじめの中でも重大事態にあたる被害を軽視し、単なる日常にある児童同士のじゃれあいだと判断し、被害者への連絡帳の手渡しに加害児童らを無神経にも当てたのだ。

こうした行動は、被害側からすれば、いじめの二次被害として捉えても自然であろうし、加害者側からすれば、大した問題でもないというメッセージを暗に示したことになるだろう。

加害児童ら

クラスメイトによれば、加害児童らはA君が学校にいないことをいいことに、 A君がBに殴りかかり返り討ちにあったのだと言いふらしているとのことだ。

学校を通じてA君の保護者に連絡をしてきたという Bの保護者は、「二発くらい殴られたくらいで大問題にするな」と言ってのけた。

学校にいる間、毎日のように一方的に暴力をふるい、故意に左目を狙って殴りつけ、目に異常が生じるほどの怪我を負わせておきながら、保護者がこの言い草であれば、どんな温厚な親でも怒るのは当然だろう。

何にしても、全体を通じてみれば、学校は加害者らの言い訳を信じ、被害者側の申告を不都合なものとして、このいじめ問題を放置していると言えよう。加害者親の発言を見ればわかるように、被害を軽視し、事実を歪めて加害者親に報告したのだ。

学校から教育委員会への報告の瑕疵

小学校校長が葛飾区の教育長に宛てた報告書は「事故」と表題にあった。いじめを事故とするのは、かなりの違和感がある。

また、その中身は被害実態に追いつかぬものの、Bによるいじめ行為があったことを認定する内容となっている。何より、A君を被害者と示し、Bを加害者として示していることから、B主張のA君からのやり返しを含めた相互攻撃の範疇とする「喧嘩」ではなく、一方的な「いじめ」であることを示している。

また、その内容では、学校は被害実態を被害保護者から初めて聞いたと主張することで、学校からの報告が遅れたことなどは、実態が分かりづらかったからだとしたい意図が読み解ける。

つまり、 隠し切れない事実は認めつつも、それ以外はなんとか覆い隠そうとする、問題ある報告書となっている。

そもそも、当初はじゃれあいだからと、被害側に自らの健康保険証を使えと強固に指示しようとした事実もあり、初動のミスを隠そうとしていると言われても言い返す余地はないだろう。

復帰をしたいジレンマ

被害児童であるA君もA君の保護者も、学校へ再び平和に通える当たり前の権利を求めている。ところが、学校はいじめの中でも重大事態相当の酷いいじめを単なる「じゃれあい」だと主張したほか、教室の中で担任のほぼ目の前とも言える位置関係で起きていた度重なる暴力を放置した。

いじめの加害者らは中心人物であるBを含め学年の2割もいるが、誰一人適切な指導を受けず、反省している様子は全くない。むしろ、自らの暴力や暴言を認めつつも、理由さえあれば、それが不当であってもよいのだと無茶苦茶な自己肯定を繰り返しているのだ。

また、この小学校では、 昨年度中に児童間でカッター切りつけ事件が起きており、それ自体もまるでなかったかのように処理されている。

つまり、被害側は当たり前の教育を受けたいが、それは同時に身の危険を本格的に伴うことになるのだ。一方で、学校に復帰できないことになれば、本来受けられる教育も、加害者ら以外の友人に会うこともできないのである。

学校については早急に「被害者支援計画」を策定する必要があるが、何らの支援も計画されている様子もないのだ。

多くの被害者が同様のジレンマに苦しみ、動きの鈍い学校に大きなストレスを抱えている。

教育委員会は今すぐ動け

学校の無策は結果として、新たな被害者を生み出したり、被害者が当然持っている教育を受ける権利を侵害する。一方で、加害者らは適切な指導を受けることができず、自らを省みる機会すら失う。直接関係のないように見える傍観者であった児童らは、学校への信頼感を失い、次の被害者候補としてビクビクしていなければならない。

この状況は、学校経営という観点から正常運営できていないことを意味する。世間的には、教育委員会があたかも学校の天敵のようなイメージがあるようだが、その実、教育委員会と学校は人事交流をしているし、もたれあい・庇いあいをしていることが指摘される組織だ。しかし、その主体となる役割は、「学校の通常運営の支援」 である。

この小学校は正常運営できていないわけだから、教育委員会は今すぐ、積極的に学校の安全安心を当然に確保するために動く責務がある。

もしも、これで教育委員会が動かぬのであれば、その役割を果たせないわけだから、どこの誰がそんな税金の無駄使い組織が必要だと考えるだろうか。

葛飾区教育行政は、私の私見であるが、いくつもある問題を何とか改善しようと積極的に動いているように思っていた。教育行政に係る一人ひとりが、今一度いじめ問題への取り組みを見直し、今起きている問題は時間の猶予などはなく、できることからすぐはじめ、被害者にとって何が最適なのか、公教育として何が公平なのかを行動で示してもらいたい。

編集後記

10月22日文科省の発表によれば、いじめの認知数は連続で増加し、61万8563件であったそうです。常に増え続けるいじめの認知数をマスコミは一斉に報じますが、専門家に求める意見は、「異常な増加」「けしからん数字」です。

しかし、平成20年代からの推移とそれぞれの年の出来事などを比較すれば、もともと18万件から22万件程度に押さえ込んでいた数字が、文科省の積極的な指導などがあいまって、本来いじめとしなければならぬ件が、指導の強さなどから浮いてきただけであると言えるのです。

それを考えれば、確かに本来いじめで対応しなければならなかったものが放置されていたことを意味しますから、とんでもない数の隠ぺいが起きていたことが浮き彫りになったとも言えます。

様々な学校のいじめ予防の取り組みは、いじめ被害報告を受ける中で、私はできる限り把握しようとアンテナを張っていますが、全国的・全体的にみて、いじめの予防教育が実施されている事例はごく少数だと言えます。ほとんどの学校はやっていません。

これは多くの場合、児童生徒らへの教育を指しますが、教職員や学校経営の立場である校長副校長らは研修止まりで(しかも具体性を欠くカリキュラムが多そうなので…)現場で知識不足だと思える事例が後を絶ちません。

今回の葛飾区の小学校のように、身体に問題が生じるほどの重大事態相当のいじめが起きているにも関わらず、基本である「被害者の立場に立って」の考えが欠如した対応は、懸念される、さらなる認知数の爆発的増加に拍車をかけている危険な学校対応だと感じます。

子どもたちは日本の未来です。未来を明るく、コロナ禍で全てにおいて出口が見えない今、教育行政には細部に至るまで、より緊張感と危機感を持って動いてもらいたいと思います。

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image by: shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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