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菅総理が「陰の総理」こと杉田副長官の証人喚問に応じるしかない訳

日本学術会議の会員任命拒否を巡る問題について、以前掲載の「学術会議だけじゃない。「陰の総理」杉田官房副長官を証人喚問せよ」のように、早くから黒幕として、杉田和博官房副長官の暗躍っぷりに注目していたジャーナリストの内田誠さん。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では、杉田氏の名前をキーワードに東京新聞の記事を検証。官邸側の説明の矛盾に加え、2014年の内閣人事局設置後から増えた官邸による人事への干渉の裏に杉田氏の影があることから、改めて喚問の必要性を訴えています。

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10月15日以降、杉田和博官房副長官について新聞はどう伝えてきたか?

きょうは《東京》。学術会議の新会員候補のうち6人が任命拒否された問題で、国会での論戦が続いていますが、キーマン中のキーマン、杉田和博官房副長官を国会に呼ぶ件で与野党の対立が激化しているようです。

当メルマガも早くから杉田氏には注目していて、10月14日付で「杉田和博」で検索を掛けていました。ということで、10月15日以降、杉田氏について新聞がどう伝えてきたか、《東京》の検索機能を使って調べてみたいと思います。

《東京》の記事検索で10月15日~11月5日に期間をしぼり、「杉田」で検索すると22件ヒットしたが、そのうち12件は杉田水脈議員などに関する記事で、官房副長官の杉田和博氏に関する記事は10件。まずは《東京》の1面トップと5面の関連する社説の見出しから。

(1面)
首相「杉田氏から報告」
6人任命拒否で認める
衆院予算委
「見解一貫」根拠示さず

(5面・社説)
学術会議問題
矛盾に満ちた首相答弁

衆院予算委の質疑で、学術会議の新会員候補のうち6人が任命を拒否された問題で、菅首相は、杉田和博官房副長官から事前に6人を除外すると報告を受けたことを認めた。《東京》は「法律で会員の任命権者は首相とされているが、それが形骸化していたことになる」と評している。

菅氏は、99人記載の候補者名簿が作成されるのに先立ち「会員構成の偏りなどに関する懸念などを首相が内閣府に伝えていたこと」も明らかにしたという。

社説は、こうした点を含め、「菅義偉首相の説明は説得力を欠くばかりか矛盾に満ちている」として、任命拒否の理由を明らかにするよう求め、網羅的に問題をまとめている。

1983年の国会審議で中曽根首相(当時)は、首相による会員の任命は「形式的に過ぎない」と裁量権を否定した。政府は2018年になって「推薦通りに任命しなければならないわけではない」とする内部文書を作り、この解釈は1983年以降「一貫した考え方」だとするが、そのことを示す政府内の記録を政権は国会に提出できなかった(存在しない?)。そもそも政府内で作られた一片の文書をもって国会審議で確認された内容を変更するなど、許されないこと。

また、今回の「6人拒否」は「私が判断した」としながら、5人の名前や業績は「承知していない」としていること。拒否の理由として、旧7帝大出身者への偏りとか、若手、女性の割合が少ないことを是正するためのようなことを言っているが、6人の半数は私大教授、50代前半の若手や女性も含むので、逆に多様性を奪う任命拒否になっていること。そして、飽くまで「公務員の人事に関わる」として拒否の理由を語らないこと。今の状態について、社説子は「説明すればするほど矛盾が露呈する」と言っている。

●uttiiの眼

さらに論点としては、学術会議の改革の問題にすり替えようという動きも批判する社説。ここに示された論点は、繰り返し報じられるべきもの。杉田副長官の問題については、昨日の国会質疑を受け、1面トップの記事で指摘されている。

昨日の質疑の中からどの点を捉えるか、新聞によって違いがある。《朝日》は「国民・国会に責任が負えない場合」は拒否できると答弁した点を捉えている。「多様性を確保するため」という“理由”に代えて出てきた“新基準”。しかし、これら6人の教授たちを任命してしまうことが、「国民・国会に責任が負えない」というのも凄い話だ。

ほとんど、“憎しみ”のような暗いパッションさえ感じられる。しかし、その“憎しみ”の出所は菅義偉氏ではなく、杉田和博官房副長官だった可能性がありそうだ。公安警察上がりの杉田氏が、憎しみにも似た激しい排斥感情を6人に対して抱いた張本人である可能性が高いように思う。いったい、何があったのだろうか。

【サーチ&リサーチ】

「杉田」氏に関する報道を10月15日以降の記事で見てみよう。まずは10月15日に野党は杉田氏の国会招致を要求。同日の別記事では野党の要求は当然とする内容の記事。そして、同日の社説では…。

2020年10月15日付
「加藤勝信官房長官は六人を除外した起案段階の人選について「首相が一つ一つチェックするのではなく、事務方に任せていた」と説明している。さらに、首相の決裁前に杉田和博官房副長官が首相に対して口頭で、任命できない人が複数いることを報告していた」と。

10月16日付社説
自民党が、事務方の官房副長官が国会に出ることはあまりなく、慎重にすべきだと言っていることに対して、社説子は「杉田氏と同じく官僚出身の「事務」でも委員会審議に出たケースはある」と援護射撃的な指摘。西松建設事件に絡んで、当時の漆間巌官房副長官が5回も出席した例を挙げる。

*16日付の「こちら特報部」では、杉田氏が警察庁出身で、7年10カ月の長期にわたり、事務方トップの現職を務めたことを指摘。さらに今回の任命拒否の背景として次のようなことを挙げる。

「2013年に成立した特定秘密保護法などに批判的な会員が少なくなかった学術会議に対し、政権内で15年ごろから不満が高まった」ということがあり、杉田氏が動いて「16年の補充人事で後任候補者を決める前に説明を要求し、17年の改選時には、前年の経緯を踏まえ、大西隆会長(当時)に選考途中の候補者リストを出させた」という。さらに、記者は、公安畑の警察官僚が権力中枢の重要ポストに就くのは、戦前の警察国家の反省から公安委員会制度ができた流れに逆らうものと見ているようだ。

2020年10月25日付
翌日に召集される臨時国会を前に、解説記事「核心」で学術会議会員任命拒否問題をまとめる内容の記事。杉田氏に関わる中心的な内容は以下の通り。

「政府関係者らの証言で、2016年以降の会員補充や改選で、事務担当の杉田和博官房副長官が学術会議に前もって人事案を示すよう要求したり、候補者の差し替えを迫ったりしていたことが判明。首相は今回の人事で105人の名簿を「見ていない」と発言したが、杉田氏から複数人の任命を拒否すると事前に報告を受けたことも分かっている」

2020年11月1日付
学術会議の大西隆元会長の話として次のような指摘。

「2016年ごろから、会員選出の途中でも官邸から説明を求められるようになった。内閣人事局が設置されたのは14年5月。大西氏は「人事局ができて、霞が関の幹部人事でも官邸が事前に相談や報告を求める流れが進んでおり、学術会議もその対象になっていったと感じた」と。18年秋ごろには、定年を迎える会員の補充候補に、杉田和博官房副長官が難色を示した」

さらに、大西氏の後任、山極寿一前会長がこのような話をしている…。
「大西氏の後任の山極寿一(やまぎわじゅいち)前会長は、NHKのインタビューで当時をこう振り返った。「杉田副長官に面会を何度も申し上げたが『来る必要はない』と。『官邸に出向きますから』と言ったが『来る必要はない』『理由も言うつもりはない』といった返答ばかり。全く接触を断たれてしまった」。結局、欠員の補充はできなかった」という。

●uttiiの眼

学術会議の新会員任命に際して、最も深く人選に関わったのが、公安警察出身で内調の室長も経験した杉田氏であり、実質的に任命するかしないかについて候補を選別していたことが明白だ。この人を問い質すことなくして、問題解明に至ることはできまい。

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image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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