新しい年が始まり、仕事でも新しいことに取り組みたいと感じている人も多いのではないでしょうか。けれども現実は、日々の業務を大量に抱えてそれをクリアするのに精一杯。まずは無駄に思える業務を洗い出す「仕事の棚卸」が必要なケースが多くあります。今回のメルマガ『毎月1000人集客するプロ講演家が教えるコミュニティづくりの秘訣』では、著者でベストセラー作家・起業家の岡崎かつひろさんが、「仕事の棚卸」によって不要だと思った業務をやめるため、上司にどう伝えたらいいか、正攻法と裏技的な方法の2つを教えてくれます。
「仕事の棚卸」は定期的に。不要な業務の減らし方
毎日、仕事に追われてばかりで、まったく終わらない。こう感じる人は多そうですね。そんな時は仕事の棚卸をすることが大切です。とはいえ、自分が人を使う立場であれば、不要な仕事を見つけてやめればいいので棚卸はしやすいでしょうが、部下の立場だったら難しいですよね。
たとえば、毎回会議のために頼まれる議事録作成や会議資料作成。最初は、上司も「今度、会議でこの資料が必要だから作って」「議事録を作って」と、本当に必要があって頼んでくるかもしれません。最初は必要があって作っていた資料や議事録も、毎回必ず必要とは限りません。ただ「上司から言われたから続けているだけ」となり、結果、不要な仕事がどんどん増えていく。
この「不要な仕事」を減らすためにも、定期的に仕事の棚卸をする必要があります。「そうはいっても自分で必要かどうか判断できない」という人もいますよね。こんなときは、上司との関係性が良好であれば、率直に聞くこと。
僕も、会社員時代に先輩から頼まれた仕事をずっとやり続けていたんです。ある時「これ、本当に必要かな」と思い、先輩に聞いてみたんですね。それでその先輩に「あの、これっていつまで続けますか?」と聞いたんです。そしたら「え?まだその仕事を続けてたの?もう必要ないよ!」と言われました(笑)。そんなことがあるので、必ず聞いたほうがいいです。
注意したいのが、上司に伝える時の言い方です。「この仕事は必要ないのでやめさせてください」という言い方をする人がいますが、これはNGです。もちろん必要ないことはやめたほうがいいし、率直に意見することも大切です。しかし、全体像が見えてないなかで「やる・やらない」の話をすると、けっこうな確率で揉め事に発展します。
対立する世代間ギャップ。うまい収め方は?
以前、こんな話をしてくれた方がいました。ある閑静な住宅街があり、ここ30年くらいのうちに新興住宅ができて、そこにいる人たちがどんどん変わってきました。ある時、町内会で公園の使い方について、議題が上がりました。 その公園はどういうところかというと、街の中心地にあるいいところです。いい場所にあるけど、禁止事項ばかりなんです。焚火をしてはいけない、ボール遊びをしてはいけない、かけっこしてはいけない、大量に人が集まってはいけない。にもかかわらず、お年寄りが好きなゲートボールはOK。若い子育て世代からしたら、せっかく公園があっても子どもたちが遊べないというのは不満ですよね。
若い子育て世代の人は、「バスケットボールのゴールを設置すれば、子どもも遊べるし、街に住む子どもたちも、遊びを通して仲良くなれる」と思ったのでしょうね。そしたらその町内会の高齢者世帯が大反対をし始めたのです。自分たちの居場所だし、静かな場所を守りたい気持ちがあったのでしょうね。それに加えて、新しい人たちが入ってきて好き勝手しようとしている。
「もしバスケットボールがとんでいって窓が割れたら?」「人が集まり、騒音問題を起こすかもしれない」と、反対意見ばかり出すんです。若い世代はどう言ったかというと、「今は高齢者しか使えないじゃないですか。子どもたちの遊び場も必要ですよ」といい、なかなか対立が収まらない。
難航する話し合い。大事なのは「ビジョンや目的の共有」
問題は、なぜこんな話になってしまったのか。おそらく原因は、手段から入ってしまったことです。要は、ビジョンや目的の共有をせずに手段だけを変えましょうとなってしまっていたんじゃないかと思うのです。
たとえば、「公園にバスケットボールのゴールを設置するかどうか」という話し合いをする際に、次のように伝えたらどうだったでしょうか。「この公園も人が増えてきて活性化しています。より価値が高い街にしていきませんか?そのためにも公園の在り方も見直す必要があると思いますが、いかがでしょうか。子どもたちが遊べるような場所があったほうが、子育て世帯が増えて明るく楽しい街づくりにつながります。その一案としてバスケットボールを設置したらどうでしょうか」。
もしも「バスケットボールが飛んで行って物を壊しそう」と言ったら、「安全ネットをつけるという方法があります」。もしくは「夜遅くまで人が騒いでいたらどうするんだ」と言えば「鍵をかけるという方法もあります」と言えますよね。
お互いに建設的に話をする気があれば、物事は進んでいきます。心が「ノー」になっている状態では、人は決して「イエス」と言いません。アイデアだけ出されても「いやなものはいや」と、感情で「ノー」を言ってしまいます。
これは「一貫性の法則」といって、最初に前向きな意見を出した人は、最後まで前向きな意見を出そうとします。逆に、否定的な意見を出した人は、最後まで否定的な意見を出そうとします。たとえば、議論を始める時に、「反対」という立場をとった人は、なんとか最後まで「反対」の立場を維持しようと一生懸命になるのです。それだと残念ながら物事は前に進んでいきません。
ここで大事なことは、まず最初に建設的な合意形成をすること。全員が「いいね。この方向に進もう」という同意が取れた状態を作ってから、物事の詳細を決めていくことが大切です。
「仕事量を見直してほしい」上司への上手な伝え方は?
上司に「仕事量の見直しをさせてほしい」というときも同じです。単純に「この仕事をやる意味ってないじゃないですか」といったら、当然嫌がられますよね。そうではなくて、もし新年度に向けて仕事の棚卸をするのであれば、「来年度はこういう1年にしていきたいと思います」と伝えること。
たとえば、入社1年目の人であれば、次のように伝えてみるのはどうでしょうか。「来年は新入社員も入ってきます。新しく入ってきた人たちをちゃんと監督して育成できる自分になっていきたいと思っています。そうすると、今やっている仕事量を見直した時に、残念ながらそこまでの時間が割けるようには思えません。実際の仕事量はこれだけです。もしいくつかやめられるものがあれば、いったんこれをペイントさせていただきたいと思っているのですが、いかがでしょうか」実際に上司とかけあってやるのが、一番揉めずに仕事量を減らせる方法だと思います。
意外と気づかれない「こそっとやめてみる」
仕事量を減らすためのもう1つの方法。「これはたぶんいらないだろうな」と感じるものってありますよね。そういうものは、こそっとやめてみる。たとえば、資料作成であれば、一応は作っておく。でも試しに提出しないでおく。上司から指摘がこなければいらないでしょうね。ただ、指摘された時に出せないのは社会人として評価がマイナスになるのでやめたほうがいいでしょう。たとえば、メールで添付資料を送るのであれば、わざと資料なしで送ってみる。
僕が部下の立場で仕事の棚卸をしようと思った時、上司の指示がないとやめられないというのであれば、
1、上司に確認を取ってやめる
2、こそっとやめてみる
この2つの方法でやるでしょうね。
「こそっとやめてみる」時は、必ず上司に言われた時にすぐに出せるようにしておくこと。給料をもらっている以上、義務も責任もあります。ちゃんとやっておかないと、自分の身が守れないでしょうね。
上司も、意図的に仕事を増やしたいと思っているわけではありません。ただ、増えた仕事を全部管理できるほど有能ではありません。現実的には、上司としては一時的に頼んだ仕事であっても、頼まれた部下はずっとやらなければいけないと思い、続けてしまっていることは、よくあります。
どちらにしても、仕事の棚卸はしたほうがいいです。本当は年に1回仕事の棚卸をするのではなく、月に1回は仕事の棚卸をするべきです。今、自分がどんな仕事に取り組んでいて、効果の高い仕事はどれで、低い仕事はどれか。その取捨選択をして、やっていく必要があります。
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