立地や商品の条件はいいはずなのに、お店の売上が伸び悩んでいる、もしくは大きく下がっている時、どのような改善策があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、すぐにできる「改善案」を提唱しています。
売上が下がっている店
お店の中にいると、現場の人たちはそれまでのやり方に慣れてしまいます。そして、それが当たり前のやり方だと思いがちです。経営者は、なかなか改善方法が思い浮かびません。どうしたら良いでしょう。今回は、改善にやる気のあるお店の話です。
削られる費用
ここ数年で少しづつ売上が下がっているお店があります。店主は、以前のような売上に戻したいという思いです。この店主は60代で、3代目。お店は人口数十万人の中堅地方都市にあります。従業員はパートを含めて6名。1980年代には売上が絶好調でしたが、今はその時から2割ほど低下しています。多くのお店が経験していることですね。
店主に、いろいろとお話を伺いました。まずは売上の推移が知りたかったので、売上データを求めたところ意外にもすんなりと出してくれます。エクセルで作った3年分の商品別・月別売上データです。少しビックリしました。この位の規模のお店で、売上データをしっかり管理しているところはそれほど多くはありません。さっそく、いただいたデータを分析してみます。すると、いくつかのことが分かりました。
・商品別の売上構成比は、毎年大きな変化がない
・月別の売上推移も毎年同じような動きである
・季節による売上の増減が少なく、安定している
・全商品のうち、上位3割で売上の7割を占める
・「主力」としている商品の中に、売れていない商品がある
どうも、じわりじわりと売上が下がっていった様子がうかがえます。「ゆでガエル」状態なのかもしれません。お店も、チラシを配ったり、セールをしたり、ホームページやSNSで宣伝したり、それなりの販売努力をしてきています。しかし、なかなか目だった成果にはつながっていません。今回の分析から、売上アップにつながる提案が出来そうです。
次に、顧客データを活用しているかどうかを尋ねました。パソコンには数千の顧客データが入っていました。これもスゴイことです。ただし、データのメンテナンスが出来ていません。また、DMやレターの送付など、有効活用が出来ていない状態です。データを活用することで、売上アップにつながる可能性があります。
売上を上げるために
そして、店主に大切なことを聞きました。
「どんなお店になりたいと思っていますか」
「お店が大事にしていることは何ですか」
「お店の強みは何ですか」
おそらく、店主はこんな質問をされたことはないのでしょう。返答に詰まってしまいます。しかし、この店長は偉いです。そのことを考える大切さがすぐに分かりました。きっと、普段から思いはあったのでしょう。後で、それを紙に書いて出してくれました。
・地域で一番の専門店になりたい
・お客様に信頼され、従業員が楽しく働ける店でありたい
・こだわりのある、厳選された商品をお届けする
・お客様との会話を大事にし、笑顔があふれる店でありたい
こんな内容です。良いですねえ。早速その言葉を簡単にしたものをボードに書いて、店内に掲げていただくことにしました。それによって、お客様も従業員の皆さんも、お店が目指すところが分かりますし、意識をします。とても大事なことです。
それにしても、この店長は本当に「素直」な方です。アドバイスを差し上げると、いろいろと出来ない理由を述べたり、言い訳をする方も多い中で、これほど「素直」な経営者にはあまり出会ったことがありません。しかも、すぐに実行に移されます。
それはともかく、この次はどうやって売上を上げるか、具体的な提案です。先ほどの売上分析で分かったことがありました。それを基に提案したのが、以下のことです。
・売上の7割を占めている3割の商品の販売に一層力を入れる
・シーズンごとに店頭イベントを行い、売上のかさ上げをする
・売上比率に対応した商品陳列になっていないので、売上の多い商品のスペースを拡げる
・商品POPが単調なので、主力商品のPOPを目立たせる。
決してむつかしいことではありません。すぐに出来ることから始めます。
客数を増やすために
実は、このお店の売上が下がってきているのは、商品が悪いわけではありません。こだわりをもって厳選された商品ばかりです。接客が悪いわけでもありません。店長はじめ、従業員の方たちはお客様と親しく接しています。では、なぜ売上が下がってきているのでしょうか。
その原因は、「客数」が減ってきていることにありそうです。店長によれば、客単価は下がっていないとのこと。それならば、なおさら原因は客数です。そこで、客数をあげるための提案をしました。
・顧客データを見直し、過去5年間で購入履歴のあるお客様にイベントに合わせた「あいさつ状」を送る
・イベントチラシを新聞折り込みで広域配布する
・購入客には、お礼のカードを渡し、ロイヤルティを高める
・来客の少ない曜日には限定の割引券を渡し、来店を促す
・ネットショップに力を入れて、新規のお客様を増やす
これらは、特に変わったアイデアではありません。しかし、何もしなければ、さらにお客様が減っていきます。客数を増やすための手を打っていくことが必要です。
今回提案したイベントを行えば、来店客が増えるでしょう。また、売場の陳列を変えることで、お客様に新鮮に映ります。新しい商品POPで、よりお客様の手が伸びるでしょう。そして、このお店にはネットに強い従業員の方がいます。SNSで発信をすることで、きっとお客様が増えていくに違いありません。
素直で前向きな店長は、今回の提案にいずれも納得し実行することにしました。成果が出るのは、これからです。しかし、結果を見なくても大丈夫です。この店長がいる限り、売上が回復するのは間違いありません。近いうちにも、きっと良い報告が届くことでしょう。
■今日のツボ■
・販売データを分析すると、改善ポイントが見えてくる
・そこから具体策を考えて実行すれば、成果につながる
・結局は、素直で前向きな姿勢が、経営を良くする
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