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再び感染拡大の恐れも。政府の「まん延防止措置」に感じた危険性

新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案が衆参両院を通過し2月3日に公布、13日には施行されます。今回の改正で新たに規定された「まん延防止等重点措置」について、政府は緊急事態宣言解除後に適用する検討を始めたと毎日新聞が伝えました。この方針に違和感と不安を抱くのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』の著者でジャーナリストの内田誠さんです。内田さんは「まん延防止措置」に関する過去の記事から想定外の適用時期の検討に政府の焦りを読み解き、その危険性を指摘しています。

「まん延防止措置」を毎日新聞はどう伝えたか?

《毎日》からです。1面左肩に特措法改正による「まん延防止措置」についての独自記事があります。法律用語としては「まん延防止等重点措置」となるので、《東京》の検索を借りて引いてみると、22件ヒットしました。すべて、新型コロナウイルス対応の特措法改正案に関わる、今年1月以降の記事。この22件を見ていくことにします。

【フォーカス・イン】
まずは《毎日》1面の対象記事の見出しから。

緊急事態解除後に移行
コロナ「まん延防止措置」
政府検討

政府は、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法の成立を受けて、緊急事態宣言を解除する対象地域の感染状況に応じて「まん延防止措置」に移行する検討に入った。現在、宣言の対象になっている地域について、13日の改正特措法施行から3月7日の解除期限前に移行が可能かどうか、調整するという。

「まん延防止措置」は当初、緊急事態宣言に至る前の段階で適用するものと見られていたが、宣言解除後の移行も可能とする。

●uttiiの眼

かなり分かりにくい内容の記事。「緊急事態宣言」よりも緩い措置である「まん延防止等重点措置」を、当初は「緊急事態宣言」を出す前に適用するものと見られていたが、宣言を解除した段階で出すことを想定して、その条件を定めておこうとしているものと見られる。

なぜそんなことが必要になるか。どうも、これによって、一般論で言えば「地域指定の柔軟性」が確保できるからということのようだ。宣言は形式上、都道府県単位で発出されるが、実際にはそれより広く、住民に共有されている「生活圏」(例えば関東南部の1都3県)単位で出され、解除されていく。しかし、解除にあたっても「生活圏」全体で感染が収束しなければ解除できないのは「不都合」。そこで、とりあえず3月7日までとなっている緊急事態宣言を、地域ごとに判断してできるだけ早く解除していく。全面解除となる前の措置として、「まん延防止等重点措置」の段階を用意しておくということのようだ。

ここで言う「不都合」は、経済活動の再開ができないということに他ならないだろう。この「まん延防止等重点措置」をまだ十分に感染が収束していない地域に細かく指定していくことによって、そこでは規制を緩め、多くの地域で段階的に経済活動を再開できるようにしたいのだろう。根拠はないが、こうした“知恵”は、「経産官僚」的な頭の働きによるものかもしれない。感染状況の推移によっては、宣言解除は早かったのではないかという批判が起こることもありうるように思われる。

【サーチ&リサーチ】
*まずは、自公与党が改正案で合意したという記事。

2021年1月19日付
「特措法改正案では緊急事態宣言を避けるため、前段階で対策を進めるまん延防止等重点措置を新たに規定し、都道府県知事は飲食店などの事業者に営業時間の短縮や休業を要請、命令できるとした。知事の命令を拒否した場合、前科にならない行政罰の過料を、まん延防止等重点措置段階では「30万円以下」、緊急事態宣言下では「50万円以下」と定めた。事業者への命令前の立ち入り検査も新設し、検査拒否には「20万円以下」の過料とした」

*この段階では、明らかに「前段階で対策を進める」ものとしての「まん延防止等重点措置」と規定している。因みに、感染症法の改正案では「入院拒否者に1年以下の懲役か100万円以下の罰金を明記」、閣議決定された。これらの内容は、自民党と立憲民主党の修正協議で変わっていく。
*さらに、都道府県知事は「まん延防止重点措置」でも、休業などの命令ができるようになり、要請に応じない店の店名公表ができるようになっていた。

2021年1月31日付社説
「まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言の前段階と位置付け、都道府県知事の権限を強化する。時短要請に応じない事業者に命令を出すことができ、拒んだ場合は過料を科す。付帯決議案は、過料を慎重に運用する必要性にも触れた」

2021年2月1日付
西村康稔経済再生相は「特措法に新設する「まん延防止等重点措置」は、感染状況を示す指標のうち「ステージ3」相当での実施を想定している」と説明。

2021年2月2日付
付帯決議の中に、「まん延防止重点措置」に関する大雑把な条件が記される。「満たすべき要件について、新型コロナ感染症対策分科会が提言したステージ1から4、6つの指標との関係を含め、客観的基準を示す。あらかじめ学識経験者の意見を聴き、国会に速やかに報告する。期間延長、区域変更、解除も同様とする。要請の内容は主として営業時間変更であり、休業や全面的な外出自粛を含めない」と。

●uttiiの眼

「まん延防止重点措置」は、ずっと、緊急事態宣言前に適用されるものと理解されてきたことが分かる。今朝の《毎日》の記事は、その「当然の前提」を突き崩す内容で、そこにどんな意味が隠れているのか、今のところは想像するほかはない。

【フォーカス・イン】の中で述べたように、少なくとも政府にとっては、緊急事態宣言解除のエリア選定が、比較的自由になるというメリットがあるのかもしれないが、なんとか宣言を解除して「まん延防止等重点措置」に持っていかなければ…という心理が働き、大甘の「解除」につながる危険性はないだろうか。また再び、足を掬われることにならなければ良いのだが。

image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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