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新型コロナのストレスが原因?カスタマーハラスメント激増のナゼ

長引くコロナ禍により、さまざまなことに不自由や不満を感じている人が増えているためか、顧客という少し優位な立場を利用したカスタマーハラスメント「カスハラ」被害が増えているそうです。毎日新聞と東京新聞の記事から「カスハラ」の実態や問題点を探るのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さん。どこまでが「クレーム」でどこからが「カスハラ」なのか、タクシー業界や菓子業界など業界ごとの取り組みを紹介し、基準作りの難しさを伝えています。

いま「カスハラ」(カスタマーハラスメント)の被害が増えている

きょうは《毎日》から。12面にカスハラ(カスタマーハラスメント)の被害が増えているとの記事。「カスハラ」を検索語として《東京》の5年分の記事から探すと、9件にヒットした。きょうは「カスハラ」について。まずは12面記事の見出しから。

新型コロナでカスハラ被害増

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、スーパーなどで働く人が接客相手から威圧的な言動や理不尽な要求を突きつけられる「カスハラ」が増えているという。産別労組「UAゼンセン」が全国の流通・サービス業の233組合を調査(昨年7~9月)したところ、約20%が「新型コロナの影響による迷惑行為があった」と回答したという。

カスハラの「現場」として多かったのが「ドラッグストア」、次いで「スーパーマーケット」。専門家は、「不安感が高まることで、普段なら許容できることが許せなくなることがある」と。またカスハラは、従業員が精神疾患を発症したり、労災認定に至ったりすることもある問題で、政府も、2021年度予算案に職場のカスハラ対策費1700万円を計上。企業向けの対策マニュアルを作る方針だという。

●uttiiの眼

「新型コロナの影響」というのは、例えば、レジ係の店員が精算の際にペットボトルの蓋の部分を持った瞬間、「汚い手で触るんじゃねえ」と怒鳴られたりすることを指す。あるいは、マスクが品切れと知った客が「あなたたちは自分の分は確保しているのだろう。早く出しなさい」などと長時間責め立てられるなどの例があったという。

【サーチ&リサーチ】

*「カスハラ」に関する記事は、もちろん、「新型コロナ以前」からある。「カスハラ」が知られるようになったのは、どうも、2019年5月末にNHKが「クローズアップ現代+」で取り上げたのがきっかけだったようだ。

2019年6月18日付
「顧客や取引先からの悪質なクレームや理不尽な要求などカスタマーハラスメント(カスハラ)が最近3年間で増えた-。会社の苦情対応の担当者や経験者の55.8%がこう感じている」ことが分かったという記事。ネットで実施された調査の対象は「クレーム対応の経験がある20~60代の男女計1030人」。カスハラの態様としては、「「何度も同じことを言う」、「論点がずれたクレーム」、土下座や社員の解雇といった「不当な要求」」がそれぞれ70%以上だったという。

*《東京》は、10月に大きな記事を書いている。

2019年10月7日付
タイトルは「「カスハラ」から従業員守れ 客からの悪質クレームでストレス 毅然と対応、動く企業も」。記事は「被害に遭った人の中にはストレスから精神疾患になったり、離職を余儀なくされたりする人も。このため、「消費者第一」の考えが根付く業界の中でも毅然(きぜん)とした対応を取る企業が出てきた。ただ、正当な苦情と悪質なクレームとの線引きは容易ではない」という観点からの記事。

「「UAゼンセン」が2017年と18年の2回にわたって実施した悪質クレームのアンケート。飲食店の接客や販売・レジ業務、病院や介護現場で働く約8万1千人から寄せられた回答は、客の暴言やセクハラなどに苦しむ声が多くを占めた」という。

従業員を守ろうとする企業の動きも紹介されていて、「タクシー業界大手の国際自動車(東京都)は16年、客の暴言や嫌がらせが目に余る場合、運転手や会社の判断で車を降りてもらい、警察に通報すると約款に明記。菓子メーカー156社でつくる業界団体「日本菓子BB協会」は昨年、異物混入のクレームは現物がなければ対応しないと内規を変更した」と、カスハラ対策の萌芽のような事例を挙げている。

最後に、記者は「不備があった際に客が意見をすることは、商品やサービスの向上を図るには必要な行為だ」としつつ、「どこからが悪質なクレームか業界が統一した基準などを出せれば、消費者の意識も変わる。サービスを受ける側と提供する側が同じように尊重されるのが望ましい」というUAゼンセン担当者の言葉を紹介している。

*2020年11月には、カスハラに備えた損害保険についての記事も。カスハラを受けたケースはもちろんだが、従業員が取引先に対してカスハラを行った際の損害賠償を補償対象とするものまで。

2021年1月9日付
「介護」の現場におけるカスハラについての記事。「約1万人の介護職員から回答を得た2019年実施の厚労省の委託調査によると、症状の重い高齢者が入所する特別養護老人ホーム(特養)では70%がカスハラを受けたことがある。認知症の人に対応する通所介護(デイサービス)で64%、高齢者の自宅で世話する訪問介護も50%に及んだ。…「つばを吐かれた」「コップを投げ付けられた」といった身体的暴力のほか、「人格を否定する発言」「性的発言を繰り返し言われた」などの嫌がらせ」があったという。

●uttiiの眼

最も困難なのは、どこまでが「クレーム」で、どこから先が「カスハラ」なのかについて、統一的な基準は作りようがないということだろう。それでも、タクシー業界や菓子業界などのように、事例で区分を試みるところも出てきているのは、やはりその境界で問題が起こっているということだろう。

カスハラの当事者にはおそらくカスハラをしている自覚はなく、自分の言動は100%正しいと思い込んでいるが故の振る舞いなのだろう。まあ、その点では「100%正しい」と思い込むこと自体に問題があるわけで、「自分は間違っているかもしれない」、「相手の方が適切なことを言っているのかもしれない」とか、「冷静になれば違う見方ができるかもしれない」と常日頃から意識していれば、もう少し問題をマイルドなところに落とし込んでいけるのだろう。自戒を込めて、そのように思う。

【あとがき】
以上、いかがでしたでしょうか。セクハラ、パワハラにはじまって、アカハラ、マタハラ、そしてカスハラと、すっかりハラスメント流行りですが、特にカスハラの場合、コロナの影響でみんなの心の沸点が低くなっているのが、問題を多発させ、解決しにくくしている要因のようですね。

image by:dekitateyo / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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