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渋沢栄一が断言「お金は悪くない」大切なのは“集め方と散じ方”

新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界は一変しました。それはモノや現象だけではなく、人々の考え方や価値観すら変えたと言っても過言ではありません。NHK大河ドラマ『青天を衝け』もスタートした、日本の資本主義の父・渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんは、家族に対する思いが変わったことが一番大きいと説きます。それはどんなところに表れているのでしょうか?

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

子どもが「お金の本質」を学ぶことはとても大切

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

あれからちょうど1年。武漢で発生した新型コロナウイルスがダイアモンドプリンセス号で日本に上陸し、一気に不安が広まりました。しかし一年後の世界が未だパンデミックの脅威に怯えているとは誰も想像できなかったでしょう。

この1年、多くの常識が様変わりしました。一方で、変わらないもの、あるいは再確認できたこともありました。

例えば、「ワークライフの当たり前」が変化して、子どもと一緒に過ごす時間が長くなったご家庭が多かったと思います。一方、お孫さんになかなか会えなくなったと寂しい思いをされているかもしれません。

いずれにしても、今までの日常生活が一変したことで、家族への想いが高まった方々が多いのではないでしょうか。

これが原因かもしれません。コモンズ投信では子ども向けの口座開設が目立って増えているのです。

2008年に同志らと設立したモンズ投信は2009年1月から「世代を超える長期投資」を運用しています。設定以来、子ども(未成年)口座は預かり口座全体のうち6人に1人の割合です。

ところが、2020年通年では子ども口座の開設比率が3割へと高まり、直近の12月、1月では資料請求のおよそ半分になりました。

運用実績12年のコモンズ投信は日本全国の大勢の皆さまのおかげで着々と運用資産残高が積み上がっていますが、まだまだの存在です。しかしながら、コモンズ投信は運用業界で世界一の特長があると自負しています。それは「子ども」です。

もちろん金額や件数ベースではなく、あくまでも資料請求数、口座開設数全体の比率ですが、間違いなく、世界No.1でありましょう。

是非とも、次世代の子ども達に感じてほしいことがあります。それは、「お金」について。コモンズ投信では小学生を中心とした子どもや親御さんたちと一緒に「こどもトラストセミナー」で「4つのお金の使い方」を学びます。

1)使う

例えば、「コンビニでお菓子を食べたい」となれば、お金が必要です。これは小さい子どもでもすぐに分かるお金の使い方です。

2)貯める

例えばゲームが欲しいけれど、お値段がちょっと高価で手元のお金では買えそうにない。でも、お小遣いを貯めれば、いずれ買える。これも、小さな子どもでもよく理解してくれます。

3)寄付する

お子さんが「助けてあげたい」という良心があっても、一人で親から離れて助けに行くこともできないし、仮に行けたとしても力がなくて役に立たない。困ってる人がいるのに何もできないことを想像する子ども達は無力感で顔が曇ります。

しかし「自分は行けないけれども、他にお手伝いに行ける人がいる。その人が困った人を助けにいけるように、自分のお小遣いをちょっとだけ「寄付」すれば良いんだ。

それだけでは全然足らないけど、友達や家族や大人たちと一緒に寄付すれば助けることができる」と気づくと、お子さんたちの表情が今度はパッと明るくなります。「自分は無力ではない。ちゃんとできるんだ。皆と一緒に」と。

消費と貯金というお金の使い方はMe、自分のことなので小さなお子さんでも直ぐにわかってくれます。しかし、寄付というお金の使い方がわかると、Mがひっくり返ってWになる。つまり、Weのお金の使い方があるということに気づきます。

4)投資する

世の中にはたくさんの会社があって、お客さんが喜ぶ商品やサービスを提供している。お客さんは喜んで、「ありがとう。これは、助かる」と言って商品やサービスを購入して代金を払い、会社は「ありがとうございました」とお礼してお金を受け取ります。

会社には自分のお父さんやお母さんみたいな大人たちが一生懸命働いている姿がある。会社は、その大人たちにいつも「ありがとう」お疲れさまと言ってお給料を毎月払います。大人たちは、「ありがとうございます」と、そのお金を受け取る。

だから、自分たち子どもは毎晩、ご飯を食べることができて、着る服があって、たまに家族旅行に行けるんだという、お金に流れがあることへの理解が深まります。

お金は「よく使う」ことで、このように社会に回り回っているんだというイメージが子どもたちの考えに根付くことを期待しています。なぜなら、お金が社会に回る際に必ず存在しているものがあるからです。それは、「ありがとう」です。

その「ありがとう」を応援するWeという投資のお金の使い方がわかる子どもが増えることは、日本のよりよい未来のためには重要なことではないでしょうか。

子ども向けの話でありますが、ここに大人でも理解すべき大切なお金の本質があると思います。いかがでしょう。

□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
『論語と算盤』経営塾オンライン 

『論語と算盤』能く集め、能く散ぜよ

よく集むるを知りて
よく散ずることを知らねば、
その極、守銭奴となる。

今回のコロナ禍で多くの人が感じました。Meのことはすごく大事です。自分が感染しない、発症しないことを考えて行動する。でも、Weが止まってしまうと、Meは何もできなくなる。Weという社会が健全に回っていることで、Meが開放されるのです。

『論語と算盤』孔夫子の貨殖富貴観

孔子の言わんと欲する所は、
道理を持った富貴でなければ、
むしろ貧賎の方がよいが、
もし正しい道理を踏んで得たる富貴ならば
あえて差支えないとの意である

もしかすると多くの子ども達は「お金」に対してネガティブな印象があるかもしれません。なぜなら、いつもマンガでは「お金持ち」は悪い人として描かれているからです。あるいは家庭内で、いつも「お金が足りない」という話を聞いているかもしれません。

でも、渋沢栄一は断言しています。お金は悪くない。ただ大事なことはよいお金の集め方、そして散じ方。子ども達に学んでほしいポイントはここですね。

謹白

image by: Shutterstock.com

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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