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小さなお店ほど効く「マーケティング」の話。照れずにSWOT分析してみよう

会社にとって経営に欠かせないマーケティング。それは大企業のみならず、中小企業であっても同じ。とはいえ、大切だとわかっていても、何をどうして良いのかわからない人も多いでしょう。そこで、今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんがマーケティングのいろはを紹介。戦略を考える上での簡単なトレーニング方法を教えてくれます。

事例からマーケティング戦略を考える 

事例をもとに戦略を考えるのは楽しいです。MBAの勉強には、よくその手法が使われます。いわゆる「ケースメソッド」や「ケーススタディ」ですね。

それらの事例を入手できる方法があります。それは、中小企業診断士の2次試験問題です。ここでは多くの事例が公開されています。今回は、この事例を使って、マーケティング戦略を考えてみましょう。

あるお店のマーケティング戦略

マーケティングとは何でしょうか。

私はマーケティングを「自社の製品や事業をより多くの顧客に買ってもらう仕組みづくり」と定義しています。そして、マーケティングを行う手順は

1.環境分析
2.ドメインの決定
3.マーケティング戦略の策定

です。何だか難しそうですね。

では、地域のスポーツショップにも、マーケティングが必要なのでしょうか。私は必要だと思っています。2019年の中小企業診断士の2次試験に、こんなお店の事例が紹介されていました。

令和元年度(2019年度) 第2次試験問題 2.中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ

そこで、この事例を使って、マーケティングを考えてみましょう。

この紹介されたお店の概要は

・創業数年の小さな完全予約制ネイルサロン
・県内有数の新興住宅地があるX市の大規模商店街に出店
・周辺は高級住宅地
・経営者Bは40代の女性で、社員Yは大学時代の同級生
・顧客は近隣の40代女性が中心で、主な集客は口コミ

おおまかにいえば、このような設定です。詳細は、試験問題をご覧ください。以下、このお店のマーケティング戦略を考えていくことにします。

まずは、「環境分析」からです。今回は代表的な分析ツールである「SWOT分析」を使いました。その分析結果は、次のようです。

【市場の機会】

・X市の商店街は大規模で、週末には他地域からの来訪客がある
・X市は県内有数の住宅地であり、商店街周辺は高級住宅地である
・中心部には小型百貨店があり、有名ブランド衣料品店や宝飾店、ファッション関連路面店もある
・周辺部には飲食店、食料品店、雑貨店、美容室が出店している
・町内会、寺社、商店街主催のイベントが毎月開催される
・X市の中心年齢は40~50歳である
・ネイルサロン市場の成長は鈍化しているが、一定の市場規模はある

【市場の脅威】

・X市の商店街に向かう途中に大手ネイルサロンチェーンがある
・商店街周辺に、自宅ネイルサロンの個人事業が多数ある
・近々改装される小型ショッピングモールに大手チェーンの低価格ネイルサロンが出店する
・そのため、自宅からの近さを理由とした顧客が減る可能性がある

店の強み、弱み、課題、ドメイン

市場の機会・脅威を分析したら、次はお店の強み・弱みの分析です。

【店の強み】

・B社長はパッケージ、販促物のデザイン能力があり、季節感の表現がうまい
・Yさんは衣装やアクセサリーのコーディネート能力がある
・Yさんは接客力が高く、惜しまれて貸衣装チェーンを退職した
・B社長もYさんもネイリスト専門学校に通い、技術を身につけた
・店舗の賃借料は格安である
・店舗の手作り内装は、落ち着く雰囲気で高い評価がある
・商店街の他店とも良好な関係を構築している
・デザインがネット上で評判になり、顧客が増えている
・固定客が50人前後いる

【店の弱み】

・店舗は商店街の中心部から離れた立地である
・店舗は築後年数が経っている
・顧客2人で満員となる、狭く細長いスペースの店舗である
・顧客が自分の希望のデザインを言葉で伝えるのが難しい
・店からの近さを理由とする顧客は、オプション注文が少ない
・数値計画が立案されていないようである

さて、あなたはこのSWOT分析から、どんなマーケティング戦略を考えるでしょうか。

その前に、「この店の課題」を引き出す必要があります。私が考えた課題は、次のことでした。

【課題】

・年間の計数計画を立案・実行する
・顧客の期待以上の提案をして、顧客の増加を図る
・顧客の固定化を一層進める
・競合大手チェーンや個人サロンとの差別化を図る
・貸衣装業界の予約会や町内会、商店街主催のイベント活用をする
・さらなるSNSの活用を進める。

そして、これらの課題を解決するために、「ドメイン」を決めておく必要があります。「ドメイン」は、「誰に、何を、どのように」提供するかということです。事例からは、現状のドメインは次のように読み取れます。

【これまでのドメイン】

・誰に:周辺に住む40代の女性
・何を:店舗から近い利便性、デザイン性の高さ
・どうやって:顧客からの紹介で固定客を獲得する。完全予約制で顧客を囲い込む。写真アプリ投稿で技術力を知らせる

これを、次のように変更してはどうでしょう。

【これからのドメイン】

・誰に:近隣の高級住宅地に住む、20代~50代のおしゃれな女性
・何を:女性の、周囲から愛されたいというニーズ、差別化されたオリジナルデザイン
・どうやって:アンバサダーによるお客様の口コミ。SNSを活用したお店からの積極的な情報発信

ドメインが決まれば、いよいよマーケティング戦略です。

4P戦略

今回はマーケティング戦略を「4P」で考えてみました。ご存知のように、「4P」とは、「商品戦略」「流通戦略」「価格戦略」「販促戦略」です。このお店のこれまでのマーケティング戦略は、次のようなものでした。

【これまでのマーケティング戦略】

・商品戦略:高いデザイン力と装飾力を活かしたネイルサービス。基本施術に加え、オプションサービスも提供する
・価格戦略:決して低価格ではない。
基本料金¥7,000/一人
オプション料金¥500~6,000/1本
・流通戦略:地方都市の大規模商店街に出店。高級住宅地に囲まれた立地である。
店舗内装は手作りで落ち着いた雰囲気にする。商店街の他店と、良好な関係づくりをする
・販促戦略:完全予約制。口コミによる紹介

これらをどのように変えたら、先ほどの「課題」が解決されるでしょうか。次のように考えてみました。

【これからのマーケティング戦略】

・商品戦略:徹底的にデザイン力をアピールする。さらにオプションサービスに力をいれる
・価格戦略:他店より高価格の設定とする。選択しやすいように、上中下の価格ラインを設ける。優良顧客には、価格還元サービスをする
・流通戦略:当面、立地は現状のままとする。いずれ店舗スペースを拡大することを念頭に置く。自宅サロン個人事業者とのタイアップをする
・販促戦略:3週間ごとにお客様にメールで来店を促す。手作りのチラシを配布し、集客する。商店街行事に合わせて、ネイル教室を開催する。SNSに当店のネイルデザインを積極投稿する。お客様の声をSNSにアップする

これで、課題のかなりの部分は解決できる可能性はあります。とはいえ、全てのことがすぐに出来るわけではありません。順番を決めてから実行をしていくのが良いです。その上で、すぐに着手することを決めていきます。

【すぐに着手すること】

・年間の販売、利益計画を立てる
・顧客リストを整理して、アプローチ客を決める
・アプローチ客には、3週間ごとにメール連絡をする
・SNSに自店のネイルデザインを頻繁にアップする
・手作りチラシを近隣家庭にポスティングする

まずはこれらの方法を続けて、効果が現れたら次の方法の実行に移ります。

いかがでしょうか。要するに、今回の作業は戦略を考えるための模擬練習です。あなたも他の事例で試してみてはいかがでしょう。

■今日のツボ■

・地域のスポーツショップにも、マーケティングは必要である
・マーケティングの手順は、環境分析、ドメインの決定、マーケティング戦略の策定である
・中小企業診断士2次試験の事例で模擬演習をすると良い

 image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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