五輪担当相を兼任することになった丸川珠代男女共同参画担当相が、地方議員に対して、選択的夫婦別姓制導入の決議を上げないようにと要請する文書に署名していたことが判明し、物議を醸しています。ジャーナリストの内田誠さんは、国会での追求を受けた丸川大臣の釈明が支離滅裂と指摘。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では、過去の新聞記事でも言い訳のパターンだけは一貫している丸川大臣に対し、署名の件を謝罪し撤回することを求めています。
丸川珠代男女共同参画担当相の「夫婦別姓制に反対」問題を新聞はう報じたか?
きょうは《毎日》です。丸川珠代男女共同参画担当相が夫婦別姓制に反対していたという話、参院の予算委で厳しく追及されたようです。《東京》で「丸川」と「夫婦別姓」で検索すると、この1年の間では10件にヒット。これらを対象にします。まずは《毎日》5面の該当記事の見出しと【セブンNEWS】第6項目の再掲から。
丸川氏「別姓反対」説明避け 「大臣としてではない」繰り返し
参院予算委。社民党の福島瑞穂議員は丸川珠代男女共同参画担当相に対して、選択的夫婦別姓制導入に反対する理由を10回にわたって質したが、丸川氏は「一議員としての意見表明で、大臣として反対したわけではない」と説明を避け続けた。
閣僚就任前に、選択的夫婦別姓制導入に反対する文書に署名していた丸川氏は「一議員としての意見表明で、大臣として反対したわけではない。議論を誘導したくない」と語っている。丸川氏を含む自民党の国会議員有志が1月、地方議員に対して、制度導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求める文書を送ったことで追及された。
さらに、東京五輪組織委員会の森喜朗前会長が女性差別発言で辞任し、橋本聖子五輪担当相が組織委の会長に就任したことから五輪相を兼務することになった丸川氏は、「この任に就いた経緯を考えると私の考えは脇に置いてでも、国際社会の理解を得る努力をしなければならない」と言葉を濁したという。
●uttiiの眼
苦しい言い訳の2連発。選挙で自分に投票してくれた有権者に対し、次の選挙ではどんな釈明をするのだろうか。「あれは大臣の時に言ったことですから…」とでも言うのだろうか。
もう1つ、自分の考えを脇に置いてでも国際社会の理解を得る…というときの「国際社会の理解」とは何か。男女共同参画に後ろ向きな私でも、大臣になってしまった以上は「前向き」を演じなければならなかった。そんな可哀相な私に是非同情してほしいということなのか。
【サーチ&リサーチ】
*最初は、一昨年夏の参院選東京選挙区の候補者に対する《東京》のアンケート。
2019年7月15日付
「選択的夫婦別姓を巡っては、導入に向けた国会の動きは鈍く、国民の意識とのずれが浮かび上がっている」としたうえで、アンケートの結果、「導入について賛成が12人、反対が1人、どちらでもないが3人と、賛成が最も多かった。「回答なし」は4人だった」と報じている。この「回答なし」のうちの1人が丸川珠代氏。アンケートそのものに一切答えなかった模様。
*続いての記事はもう、橋本聖子氏が組織委の新会長になったあとに飛ぶ。
2021年2月19日付
30歳未満の若者によるプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」の代表で、「森喜朗前会長による女性蔑視発言を巡り、組織委に再発防止などを求めるオンライン署名を呼び掛けた桜井彩乃さん」を中心にした記事。
橋本聖子氏は、若い世代の意見を重要視して、国のジェンダー施策を前に進めてくれていたと評価する桜井さんは、「橋本氏が組織委の新会長に就任したことで「国の動きが後退しないか不安。後任の丸川(珠代)大臣には五輪だけでなく、社会全体のジェンダー平等をさらに進めてほしい」と注文を付けたという。
*そして「要請文」の1件が発覚する。
2021年2月25日付
「自民党の国会議員有志が一部の地方議員に対し、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求める文書を送っていたことが24日、自民党関係者への取材で分かった。そこに丸川珠代男女共同参画担当相も、担当相就任前だったが、名を連ねていた。
国会で追及されたが、組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言とその影響を念頭に、「現在は五輪開催に向けて日本が男女共同参画に取り組む姿勢を見せることが重要だ」として「個人や政治家としての思いは脇に置き、国際社会にどう受け止められるかに力を尽くしたい」と述べた。
●uttiiの眼
言い訳のパターンは当初から変わっていないことが確認できる。追及をかわして言い逃れる技術という点では、比較的うまい方だろうが、言っていることは支離滅裂。
東京五輪を成功させるためには「個人や政治家としての思いを脇に置く」ことが必要なのであれば、地方議員に対して、選択的夫婦別姓制導入の決議を上げないようにと要請する文書に署名してはならないはずだ。全然、「脇に置いていない」。男女共同参画担当相就任前のことと言うなら、署名したことを謝罪して撤回するか、自己の行動を反省する旨、政治家として表明すべきだろう。
image by: 首相官邸