飼育ケースで育ったノミは、跳ぶたびに天井に頭をぶつけ、そして最終的には小さく跳ぶようになってしまう─。そんな「ノミの天井」状態に子どもたちを陥らせないようにしたいと語るのは、現役小学校教師の松尾英明さん。松尾さんは、自身の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』の中で、この「ノミの天井」状態から復活する方法を明かしてしています。
まさに「クララが立った!」の瞬間。「ノミの天井」リカバリー
6年以上前になるが、「ノミの天井」という話を紹介したことがある。
● 参考ブログ:教師の寺子屋「ノミの天井」
ここに関連して、面白い話を先日きいた。何と、このノミの天井状態から、復活する方法があるという。以前紹介した「励ます」とは別のアプローチである。
もはや自分には天井以下までしか跳べないと完全自信喪失状態のノミA。彼を本来の自分へ回帰させる出来事とは。
それは、ノミBとの出会いである。ノミBは、脅威の跳躍力の持ち主。自分の身長の150倍もの高さまでジャンプする。人間に例えるなら、軽々都庁を飛び越えるほどの跳躍力を誇る。こういうとすごいノミのように聞こえるが、ノミ界ならごく一般的な、いわゆる普通のノミである。
このノミBと共同生活させる(もちろん、天井なしの環境である)。ノミBは、普通にびょーんと跳ぶ。ノミAびっくり。ノミAは試してみるが、跳べない。「やっぱり自分はダメなんだ」落ち込むノミA。
そんなノミAの悩みも知らず、普通に跳びまくるノミB。何ならノミCとかノミDとかも入れてみる(書いてて痒くなってきた。夏場でなくて良かった)。
ある日、ノミAは無数のノミ仲間と一緒に遊んでいる内に、自分がいつもよりだいぶ高く跳べていることに気付く。ノミAは思う。
「あれ。自分も跳べるんじゃね?」
かくして、試してみたら、跳べる。跳べた。びょーんといけた。
まさに「クララが立った!」の瞬間である。要は、自己催眠をかけていた訳で、元々その能力自体は身体に備わっていたので、当然といえば当然のことである。
ここのポイントは、ずばり「仲間」である。人間も、どんな仲間に囲まれているかで、自分の能力を規定するところがある。進学校に行ったら毎日数時間勉強するのがみんな当たり前だし、部活動の強豪校へ行けば、厳しいトレーニングもみんな日常である。それを普通にこなす人間がいる。そうすると、自分もできる気がしてくる。
小学校などでも同様の現象は起きる。なわとびがわかりやすい。体育で、誰か一人が二重跳びを成功させると、次々にできる子どもが続出する。
ちなみに現任校では、はやぶさのような高度な技を平気でビュンビュンやる子どもが何人もいる。三重跳びをする子どもまで出てきた。昨年度は前跳びの1回旋1跳躍から始めた、現2年生である。
これは、物凄い勢いで練習する先駆けの子どもたちが存在したためである。「○○さんができるなら、自分もできる!」と思い込み、集団が次々とできるようになってしまったのである。潜在能力恐るべし、である。
自分の本来もつ能力を引き出すには、仲間。教育にはもちろんだが、これは大人にも当てはまる。自分は、どんな仲間に囲まれているか。人生を規定する大切な要素である。
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