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SNSいじめで少女が自殺。報復を怖がる被害児童に大人がすべき事

SNSによる交流が当たり前になった現代において、そのツールはいじめの材料にもなり得ます。今回の無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、SNSが原因のいじめによって自ら死を選んでしまった女子生徒の実話を挙げながら、スクールソーシャルワーカーの経験を持つ堀田利恵さんが「いじめを防ぐ機能」について語っています。

いじめ自殺を防止するために私たちができること

名古屋市立中学校1年の女子生徒が自殺した。報道によると、女子生徒は3月9日午後6時40分頃、自殺を図って救急搬送され、搬送先の病院で約2時間後に死亡が確認された。

女子生徒は昨年11月下旬、担任に、同じ中学の生徒から、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で中傷される嫌がらせを受けていると相談したが、当初は相手の名前は明かさなかった。

今年1月以降、生徒は遅刻や欠席が多くなり、担任が話を聞くと、2ヶ月遅れで嫌がらせをした2人の名前を明かした。しかし、「報復が怖いので本人たちに指導しないでほしい」と訴えたため、学校側は加害生徒に指導は行わず、スクールカウンセラーが女子生徒から話を聞いたり、別室登校を認めるなどの対応にとどまった、と報道されています。

名古屋市は、各区に、「子ども応援委員会」(臨床心理士などのスクールカウンセラー、社会福祉士などのスクールソーシャルワーカー、元校長などのスクールアドバイザー、元警察官のスクールポリスで構成)を常駐させて、チームでの支援を行っている。また、市立の全中学校にスクールカウンセラーが配置されている。

今回も、被害者への対応には、スクールカウンセラーが関わっている。スクールカウンセラーは被害生徒に寄り添ってくれるのですが、相談者との「信頼関係」を守るために、担任や学校との情報共有の場でお伝えする情報が極めて限定的になったり、さらに、担当の先生のところで壁ができたりと、相談者の思いが、学校に伝わりにくい状況が全国で見受けられます。職務上、スクールカウンセラーの言葉としては、「最近、落ち着いておられます」という文言で終わりになってしまうことが多いのです。つまりスクールカウンセラーは、いじめ解決の主体者にならないのです。いじめ解決の主体は、あくまでも学校組織の「教師」であるはずです。

そして、いじめは、自然災害や事故の後のケアとは違います。現在進行形のいじめを止めること、加害者に反省をしていただくこと、いじめをなくすことなど、たとえ本人が、「加害者を指導しないで」と言ったにせよ、何らかの対応をして、具体的に、いじめを解決しなくてはなりません。その結果、被害者の心は安定していくものです。

本メルマガで何回もお示ししているように、いじめは止めさせることができます。では、それを阻んでいるものは何でしょうか。

報復をゆるさない「いじめを防ぐ機能」とは何か、について述べてみたいと思います。

1.いじめ加害者、及びその保護者への指導、教育
2.学校全体としての組織的な取り組み
3.思春期の児童生徒に対する道徳教育

の3つの柱があります。1.の「いじめ加害者、及びその保護者への指導、教育」については、「報復がこわい」と被害者が言っているから…と指導をしなかった、というのは致命的です。中学生ともなると、「先生たちに力がなく加害者を指導できないのではないか」と思う方も多いかもしれません。しかし、常時、メリハリの利いた「毅然とした指導」が行われている学校では、風とおしも良いのです。そういう学校では、「先生に相談したら解決してくれる」と生徒からの信頼が生まれます。

一般の社会での「犯罪」を考えてみてください。加害者が被害者の親族であったり顔見知りだったりすることはよくあります。それでも、警察は、「その行為は犯罪なので、届出してほしい。被害者は必ず護ります」と約束し、知った以上は捜査するでしょう。これは考え方の問題です。学校は捜査機関ではないと言う方もいるでしょう。しかし、荒れた学校には指導力のある先生が配置されてきますが、実によく真実を見抜きます。

2.の「学校全体としての組織的な取り組み」についても併せて考えると、迅速に、組織的に役割分担して関係者全員に聴き取りし、いじめ事実を把握することが必要です。それから、

1)事実と証拠を加害者に示して反省をうながす(保護者同席でもよい)
2)加害者の保護者に説明する
3)謝罪の場を設けるかどうか、被害者に確認する

ことです。まして今回はSNSという、しっかり残る証拠があるわけですから、このような対応ができたはずなのです。解決しない状況を、いたずらに放置しておくことは、学校や教師も、いじめの「傍観者」となってしまうことに、どうか気が付いてください。決して子どもの意思を配慮したとか、言い訳に使わないでいただきたいものです。

2.の「学校全体としての組織的な取り組み」について、付加説明します。昨年12月に、全校生徒に対してSNS等に嫌がらせの書き込みをしないよう指導した、と報道されているので、学校としては「取り組んだ」と言いたいところでしょう。

しかし、SNSというツールで人間関係上での困難をかかえている、子どもたちには、直接的な指導なくしては伝わりません。心に響くことはなかなかないのです。

ただ単に静観するという日和見的な教師では、いじめ解決が長引くことは言うまでもありません。さらに注意すべき点は、生徒との心の距離が近くて、教育に情熱の有るタイプの先生にも落とし穴があることです。それは、加害者生徒のほうの背景、つまり家庭での虐待や本人の資質を知っているがゆえに、「その子がなぜ怒りやストレスを他人に攻撃的にぶつけてしまうのか」ということをよく理解しているからです。そのため、情に厚い先生は、ひとりで問題を抱え込んでしまう傾向があり、時間を長引かせてしまうことがあります。

本来、こんなときのために組織があるのです。教務主任、生活指導の先生や学年主任もいます。担任の代わりに叱りつけ役、嫌われ役となって鬼のような役割を果たす人も必要なのです。制度や組織は、一度、創ったら終わりではないです。それを機能させるためには、不断の努力と改善に次ぐ改善、創意工夫が必要です。

有識者による「いじめ対策検討会議」で経緯や対応を調査すると報道されていますが、会議は、死亡した子どもが残したメモやメール、ご遺族である保護者からの聴き取りや、事故を発生させた学校への聴き取りや生徒へのアンケートを実施させます。しかし、一般的には、加害児童生徒に対して直接、聴き取ることはほとんどありません。子どもを追い詰めたり傷つけたりすることになるのでは、と恐れているのかも知れません。一方、被害者のご遺族は、様々な背景事情をお話しされます。お子さんを救えなかったという悲しみもあり、自分を責めるような言葉も口にされます。

半年後、あるいは、1年後、有識者会議からの結果が公表されますが、被害者側からの聴取に基づいて、被害者側の家庭の事情や被害者の性格や傾向性などが詳細に記載されてしまうのです。その結果、被害者側にも原因があったかのような取られ方をされてしまい、加害者の加害意識が薄まってしまう可能性に危惧を覚えます。

3.の「思春期の児童生徒に対する道徳教育」について。「自分がされて嫌なことは、決して他人にしてはいけません」この道徳律は、共感性の上になりたっているだけではないのです。「自分を愛するがごとく、他人を愛せよ」と言うのは、普遍の真理です。

いまあなたが、親から虐待を受けて苦しんでいたとしてもどうしようもなくイライラして、むかついたことがあったとしてもストレスを他人にぶつけないでください。決して、その環境を言い訳にしないでください。

いじめをした子どもたちへ。あなたには、花を観て美しいと感じる心があるでしょう。あなたには可愛い犬や猫を観て、かわいいと思うでしょう。だから、あなたが悪い子だとは思いません。しかし、感情のまま発した言葉によって、相手が大きく傷ついたこと、そして、悪い行為を繰り返して、相手に自死という最悪の結果を招いたことを、反省して欲しいと思います。そして、心からお詫びすることが、あなたが生きる未来に、人として立つべき足場となります。どうか勇気を持って、人として再出発するプラットフォームに立ってください。

教師も、学校組織も、教育委員会も、子ども応援委員会も、名古屋市長さんも、いまある立ち位置で「脚下照顧」していただければ幸いです。

社会福祉士・精神保健福祉士・行政書士
元保護観察官、前名古屋市教育員会子ども応援委員会 スクールソーシャルワーカー
現・福祉系大学 講師  堀田利恵

image by: Shutterstock.com

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「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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