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「衆院選めあて」は明らか。不安だらけの菅首相「こども庁」創設

菅首相が与党からの提言を受け、「こども庁」創設を指示したとメディアが一斉に伝えました。この報道に一番の感想として「選挙」を感じたと語るのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さん。こどもの問題を一元的に扱う組織は必要でも、警察官僚と警察組織を中心に出来上がった場合は不安もあると指摘。教育格差とこどもの貧困の問題にどれだけ焦点が当たるのか、不透明なことにも不安を覚えているようです。

菅首相が二階幹事長に指示を出した「こども庁」創設を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《毎日》から。菅首相が「こども庁」創設に向けて、二階幹事長に指示を出したとのニュース。《毎日》は2面に掲載しています。「こども庁」にはちょっと唐突感があるので、いつから登場した言葉なのか検索を掛けてみました。すると…。

《東京》は紙面掲載記事もサイト内も0件。《朝日》はサイト内が4件、紙面は0件。《読売》は紙面が0件でしたが、サイト内には488件という嘘のような数字。これは多分、サムネイルまで拾ってきた結果なのか、とにかくこれでは役に立ちません。唯一使えそうな《朝日》のサイト内4件(実質3件)を見ていきたいと思います。

まずは《毎日》2面の記事の見出しと【セブンNEWS】第4項目の再掲から。

首相「こども庁」検討
自民提案 準備組織設置を指示

菅首相は自民党の自見参院議員らから「こども庁」創設を求める提言を受け、二階幹事長に児童虐待や教育格差など、子どもに関する諸課題に一元的に取り組む司令塔発足に向けた準備組織を設置するよう指示。次期衆院選の公約に盛り込み、目玉政策化する狙いか。

自見英子参院議員は、自民党内の少子化対策に関する勉強会のメンバー。政府は提言を「骨太の方針」に盛り込み、2022年度予算案への反映を目指すという。専任の閣僚を置き、省庁横断でこどもに関する情報を一元的に把握し、政策立案や関連省庁との調整などを行う。

●uttiiの眼

選挙が近い…というのが第一の感想。こどもの抱える諸課題を一元的に担う組織は必要と思われるが、記事の中からは「こどもの貧困」という問題がハッキリとは見えていない。「格差」のなかに含まれているのかもしれないが、真っ先に「課題」として意識されることの1つであるべきだ。

また、「省庁横断で虐待や自殺、不登校などこどもに関する情報を一元的に把握」というあたりには、「管理」に伴う不安も過ぎる。組織が警察官僚と警察組織を中心にしてできあがった場合に、懸念が強まるかもしれない。

【サーチ&リサーチ】

*最初の2件は、今を遡ること5年近い、2016年6月と7月。

2016年6月21日付
7月の参院選での、新党改革(荒井広幸代表)の公約の中に、「チャンスある社会づくり」との項目があり、「最低賃金を1000円に近付ける」ことと並んで、「「こども庁」設置」が掲げられている。

*中身の説明は特にない。7月の記事もこの公約に関するもので、説明はない。
*新党改革は、この選挙で東京選挙区に候補者を擁立したが落選。比例区も荒井代表含む9人全員落選。その結果、政党要件を喪失し、その後消滅した。

2021年4月1日付
この記事には、今回の提言の基となった自民党内の動きについて比較的詳しく書かれている。「こども庁をめぐっては、自民の当選4回以下の議員30人が呼びかけ人となって子育て問題を議論する勉強会を今年2月に設置」していたという。また、「勉強会では2月、山田太郎参院議員が中心となって子ども・子育て行政に対する要望についてネット上でアンケートを実施。約1万8千人から回答があり、教育費の負担軽減や教育格差の解消、ひとり親に対する支援の拡充などを求める意見が寄せられた」と。

2021年4月2日付
これは今日付けの記事。《朝日》記事の特徴は、こうした政策の狙いについて次のように書いているところか。「次期衆院選の公約に盛り込み、政権の新たな目玉政策としたい考え」であり、菅首相としては「自身が掲げる「縦割り行政の打破」の一環として取り組みをアピールするねらい」と。

●uttiiの眼

「こども庁」を検索したら「新党改革」が出てきたのには驚いた。残念ながら、既に消滅した政党なので、どのような具体的な内容を考えていたものなのか分からない。ただ、今回の動きの中心にいるのは山田太郎議員のようで、山田氏はこの2016年の参院選挙で、新党改革から比例区公認候補として立候補し落選している(党籍はなく、無所属のまま)。同党から立候補するにあたり、もしかしたら「こども庁」を公約に書き加えさせた可能性がありそうだ。山田氏にとっては、5年越しの「大願成就」を期しているのかもしれない。

image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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