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【書評】なぜ東日本と西日本で「灯油ポリタンク」の色が違うのか

県民性やご当地グルメ等を取り上げた番組が高い人気を誇っていますが、まだまだこの国には面白ネタが溢れているようです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな全国の86のトピックをずらりと並べた書籍。東西で違うポリタンクの色や広島の小中学校で行われている意外な授業などなど、会話のきっかけにもなるような話題満載の一冊です。

偏屈BOOK案内:宇田川勝司『謎解き日本列島』

謎解き日本列島
宇田川勝司 著/ベレ出版

タイトル下に「全国各地の地理・歴史文化のナゾに迫る!」とある。ヘタなイラストと書き文字でごちゃごちゃな表紙カバー、手に取るのさえためらうヘタヘタデザイン。

ところがページを開くと、内容はすごくまともで、写真や図版をきちんと整えて、86件もの謎が要領よく解明されていて、なかなか面白かった。

「言われてみると気になって仕方がない。そんな日本各地の些細な謎を解き明かす!聞いて納得、知って人に話したくなる知識が満載です」とカバー袖にある。

全国各地の地図にまつわる謎、全国各地の風景・光景にまつわる謎、全国各地のモノにまつわる謎、国各地の人々にまつわる謎、という構成。

全国にひらがなの市名が増えたのはなぜ?古い順に並べると、青森県むつ市、福島県いわき市、宮崎県えびの市、茨城県つくば市、これが昭和以前。「平成の大合併」が進行すると、ひらがな表記の新市が全国に一気に誕生する。

たつの市、かすみがうら市、さいたま市、つくばみらい市などはどこにあるのか見当がつくが、みどり市、さくら市ときたら、何県にあるのかさえわからない。これらの市の住民は、この市名にアイデンティティが持てるのだろうか。誇りや愛着を感じられるだろうか。

広島の小中学生は学校の授業で「広島カープ」について学ぶというのはホントだろうか。ホントなのだ。

「ひろしま型義務教育創造特区」として国から認定を受けた広島市では「わたしたちの広島東洋カープ」というテキストを作成し、市内204の小中学校で、年間35時間のカープについて学ぶ授業が行われている。

この授業は生徒の言語運用能力を定着させ、思考力・判断力・表現力の向上を図ることを狙いとしている。

長野県民が長寿日本一の要因は?野菜をよく食べることだ。成人はひとり一日当たりの野菜摂取量は344gで全国平均277gの1.4倍第一位である。また長野県は味噌の消費も日本一で、納豆や麹など発酵食品を食べる習慣が根付いている。

運動や生き甲斐も健康長寿には欠かせない。長野県の高齢者は男性が41.6%女性が21.6%でともに全国一。ボランティア参加率や旅行・行楽に行く人の割合も全国上位、「日々何かすることがある」という高齢者が多い。

標高が高い長野県は酸素が薄いため、住民の心肺機能が発達し、これが健康長寿の要因の一つになっているという説も興味深い。豊かな自然が広がり、新鮮な果物や野菜が豊富な長野県は12年連続で「移住したい県」の1位だって。いいな、塩尻の古籏さん。

東日本は赤、西日本は青、ポリタンクの色が東西で違うのはなぜ。知らなかった。JIS規格では灯油の劣化を防ぐため、高密度ポリエチレンなど紫外線に強い素材を使用することは決められているが、不透明であれば色に関する規定はない。

関東を中心とする東日本では、灯油を危険物であることを認識させる赤のポリタンク、関西では赤より青の顔料が安いということから、青のポリタンクが広まったそうである。

自転車の一世帯当たりの普及率、全国1位は埼玉県(1.3人に1台)、最下位は長崎県。埼玉県は平地率日本一だから自転車を使う機会が多い。わたしが乗り回すドッペルゲンガーは、わたしの足だ。健康の素だ。長崎は坂だらけで、自転車が交通手段とならない。代わりに軽自動車やバイクの普及率が高い。

大阪人が「いらち(せっかち)と呼ばれるのはなぜか。濱村さんも「いらち」なのか。長いこと一緒にデジクリを編集発行してきたが、そんなそぶりをみせたことはない(ような気がする)。むしろ、わたしの方がいらちであろう。

大阪府には信号が青に変わるまでの待ち時間が、秒単位で示される信号機がある(他の都道県にはないのか?)。赤信号でも一瞬の隙を窺って道路を渡る歩行者が後を絶たなかったから、待ち時間をカウントダウンで表示するようにした。

しかし、それでも5秒前くらいにほとんどの人は渡り始めるという。

国際交通安全学会が行った、見切り発車に関する調査によると、大阪の運転手は信号待ちで、青に変わる前(平均4.92秒)に車を発車させる。

2位の東京でも1.84秒であり、大阪の運転手は正面の信号が青になるのを待つのではなく、横の信号機が赤になるのを見て発車するのだ。

ドコモ・ヘルスケアが都道府県の歩行者の早歩き率(歩行総数に対する早歩きの割合)を調べたら、第1位は神奈川の29.2%、次いで東京、埼玉、千葉と上位は首都圏の都県が占め、大阪は第5位の26.3%だった。

これが意味するのは、大阪人のせっかちとは「急ぐこと」ではなく「待つことが嫌い」ということだった。

外食店でどれくらいの時間まで並んで待てるかという調査でも、東京人の26.3分、名古屋人の26.8分に対して、大阪人21.7分、男性に限れば19.1分しか待てないというデータがある。

商人の町・大阪ではモタモタしてたら負け、「時は金なり」であり、何もせずぼーっと待つだけの時間は無駄な時間なのだ。

そんな大阪人だからこそ、インスタントラーメンやレトルト食品など調理時間を短縮する商品を次々と開発してきたのだ。回転寿司、歩く歩道、電子レンジなども、いらちな大阪人だからこその発想で生まれたのだ。

この本は36件の図書・資料、100件に近いWebサイトを渉猟して作っている。現地に赴かなくても、この程度の雑学本はできてしまう。それにして、出来の良い本である。知ったかぶりをしたい人、読むべし。表紙カバーのヘタヘタイラストとヘタヘタ書き文字を舐めていて、すみませんでした。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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