今なら野党も勝てる。菅内閣「自民全敗」で見えた政権交代の目

 

かつて自民党の森喜朗氏は「無党派層は投票など行かずに家で昼寝でもしていほしい」と述べて物議を醸しました。しかし、これは「投票率が低いほど自民党候補が有利になる」という選挙の構造を如実に表わした正論なのです。何故なら、自民党の政党支持率はダントツの1位だからです。

政党支持率の数字は世論調査を実施した媒体によって様々ですが、最新の調査データの中から平均的なものを引用すると、自民党40%、立憲民主党5%、公明党3%、日本共産党2%、日本維新の会2%、国民民主党1%、社民党1%、れいわ新選組1%、その他の政党1%、支持する政党はない44%、となっています。

この数字を見れば分かるように、自民党の政党支持率はダントツですが、日本の最大勢力は44%を占める無党派層なのです。つまり、無党派層が投票に行かなければ、自民党候補の勝利は確約されているようなものなのです。そのため、自民党の独裁政権に反対しているあたしは、選挙のたびに「投票に行こう!」とブログやツイッターで無党派層に呼びかけ続けて来ました。最大勢力の無党派層が野党候補に投票してくれない限り、政権交代は実現しないと思っていたからです。

しかし、今回の広島の参院再選は、33.61%という極めて低い投票率だったにも関わらず、野党候補の宮口治子氏が自民党候補の西田英範氏に3万4,000票近い大差をつけて勝利したのです。もともと野党が強い選挙区ならともかく、広島は池田勇人、宮沢喜一という2名もの首相を輩出した保守王国、石を投げれば自民党支持者に当たるような選挙区です。

その上、西田英範陣営の陣頭指揮を執った自民党広島県連会長は、次期総裁候補でもある岸田文雄氏です。資金も野党候補の数倍、これほどの必勝パターンなのに、どうして自民党は惨敗したのでしょうか?その答えは出口調査の中にありました。

今回、宮口治子氏を推薦した立憲民主や国民民主や社民などの支持者は、それぞれ95~98%の人たちが宮口治子氏に投票したと回答しています。一方、自民党支持者は、自民党候補の西田英範氏に投票したのは全体の約7割ほどで、残りの約3割は宮口治子氏に投票したと回答しています。自民党支持者の約3割が、自民党候補ではなく、敵対する野党候補に投票したのです。

宮口治子氏の得票数は37万860票、西田英範氏の得票数は33万6,924票ですから、もしも自民党支持者が全員、西田氏に投票していたら、結果は逆転していたのです。宮口氏が当選できたのは、初めから宮口氏を支持していた野党支持者たちの票の上に、自民党にうんざりし始めた自民党支持者たちの票が積み上がった結果なのです。

あたしは今まで、無党派層を動かさないと政権交代は実現しないと思っていました。しかし、これまで7年8カ月にも及ぶ安倍政権の悪政と、その安倍政権の悪い部分ばかりを踏襲した現在の菅政権によって、自民党支持者の中にも「このままでは日本は大変なことになってしまう」という危機感が芽生え始めたのだと思います。

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