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森友問題で崖っぷちの政府。懸念される「赤木ファイル」の黒塗り度

森友学園への国有地売却に関する決裁文書改ざんの経緯が記された「赤木ファイル」の存在をついに国が認め、改ざんを苦に自殺した元職員赤木俊夫さんの妻が起こした損害賠償請求の裁判に提出する見込みと各紙が報じています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、「赤木ファイル」について朝日新聞が初めて報じた昨年11月の記事から検証。矛盾に満ち、不誠実な対応しかしてこなかった政府が、追い詰められてもなお、黒塗りだらけの資料を提出するのではないかとの懸念を表明しています。

「赤木ファイル」について新聞各紙はどう報じてきたか?

きょうは《読売》から。森友学園事件に絡んで、「赤木ファイル」についての報道がありました。事件の意味合いも大きく変える可能性がある極めて重要な文書ですが、このファイルについての存否を政府は明らかにしてきませんでした。ようやく、裁判の中で開示することになりましたが、肝心なところはすべて黒塗りにするのではないかとの懸念も残る中、メディアはこの問題をどのように伝えてきたかについて、見ていきたいと思います。

《読売》は、サイト内と紙面掲載記事双方とも1件ずつヒット。ただし、サイト内のものはきょうの記事。2月の紙面掲載記事がありますが、これはサイト内には残されていません。

これを《東京》で見ると、意外でしたが0件(きょう付の紙面掲載記事はもちろんあるが…)。《朝日》は過去1年間に26件、サイト内からは36件が見つかりました。《読売》と《朝日》の双方を対象に。まずは《読売》の25面記事の見出しと【セブンNEWS】第2項目の再掲から。

自殺職員文書 存在認める
森友改ざん
「赤木ファイル」
国、地裁に提出へ

森友学園への国有地売却を巡る財務省公文書改ざん事件で、政府は自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」の存在を初めて認め、赤木さんの妻が損害賠償を求める裁判手続きの中で、一部を黒塗りした上で任意提出する見通し。

以下、記事概要の補足。「赤木ファイル」は、財務省の決裁文書改ざんを強いられて自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが、改ざんの経緯をまとめたもので、妻の雅子さん側が職場に保管されていたとして国に開示を要求していたもの。ファイルには「改ざんの過程などを時系列でまとめた文書のほか、改ざんについて財務省理財局と近畿財務局との間でやりとりされたメールや、その添付文書などがとじられていた」と。

●uttiiの眼

「赤木ファイル」に記された内容を一つ一つ吟味していけば、事件は今までとは違うレベルでその姿を明らかにしていくものと思われる。一言で「忖度」と言われてきたことの実相も、具体的に明らかになるかもしれない。この事件を巡って、これ以上重要な文書などほかにないと思われるが、国は裁判の中でも「訴訟に必要ない」と言い切っていたようだ。開示を命じるよう妻側が裁判所に申し立て、裁判所は国に対し、昨日までに「赤木ファイル」の存否を明らかにするよう求めていたものだという。

国は、どうしても黒塗りにしたいようだが、それは赤木さんの意思に反して、さらに「改ざん」を重ね、故人を冒涜することにならないか。

【サーチ&リサーチ】

*まずは《読売》から。《読売》は、この件が裁判のなかで登場した2月の初めに、短く報じている。

2021年2月9日付
記事タイトル「「赤木ファイル」提出を申し立て 森友文書改ざん訴訟」のなかで、以下の記述。「妻の雅子さんは20年(3月…内田註)に提訴し、自殺と改ざんの因果関係の解明には、赤木さんが職場に残したとされる「赤木ファイル」の開示が不可欠だと主張。一方、国側はファイルの存在について明らかにしていない」と。

*続いて、《朝日》。最初に登場するのは、昨年11月。TBS「報道特集」の金平茂紀キャスターが《朝日》の論壇誌「論座」に書いている「漂流キャスター日誌」のなかで、触れている。金平氏は赤木さんの妻、雅子さんに最も早く取材し、信頼を得たジャーナリスト。その週の番組内容に触れて次のように書いている。

2020年11月6日付「論座」
「赤木さんは、夫の俊夫さんの自殺後に弔問に訪れた近畿財務局の上司らの音声テープを証拠として提出した。テープは実にさまざまな重要な内容を含んでいる。とりわけ「赤木ファイル」の存在について語っている直接の上司の発言は重要である」

*国会で「赤木ファイル」が取り上げられる。

2020年11月19日付から
記事タイトル「森友改ざん経緯「存否も控える」 財務省、国会の求め応ぜず」と。

2020年11月25日付から
「「赤木ファイル」をめぐっては、立憲民主党など計128議員が4月、「予備的調査」を要請。衆院財金委が衆院調査局長に調査を命じ、財務省に文書を提出するよう求めた。これに対し、財務省は、赤木さんの遺族が国などに損害賠償を求めて訴訟中であることを理由に、ファイルが存在するかどうかさえも明らかにしていない。衆院調査局はこの日、過去に46件の予備的調査の報告書が出ているが、「民事訴訟を理由として、資料の提出や回答がなされなかった事例はない」と述べた」という。

*2020年12月7日付で国側から公務災害の報告書が開示された。それに対し、赤木さんの妻の雅子さんが記者会見。

2020年12月9日付
記事タイトル「森友改ざん、国の報告書は「うそ」 赤木さんの妻が会見」の中で、以下の記述。「7日付で国から開示された文書は、公務災害認定の理由を記した「災害認定報告書」など。赤木さんについて、「上級官庁との連絡調整」「マスコミ報道などで精神面や肉体面に過剰な負荷が継続した」などの記載はあるが、同省による改ざんの指示や赤木さんの関与について具体的な記述はなかったことが判明している」と。

*そして、《読売》のところで紹介したように、2月、雅子さんは「地裁にファイルの提出を国に命じる「文書提出命令」を出すよう申し立て」た。
*今年3月10日、雅子さんは、「赤木ファイル」について語る近畿財務局の元上司と雅子さんの会話とされる音声データを、野党のヒアリングで公開。
*3月22日、大阪地裁で非公開の進行協議があり、「原告側代理人によると、国側はファイルについて「探索中」と回答した」と。そして…。

2021年5月5日付
記事タイトル「赤木ファイル、国が存在認める方針 森友改ざん問題」との《朝日》独自記事。「「赤木ファイル」の存在を、国が認める方針を固めたことが関係への取材でわかった」と。

●uttiiの眼

一度、立憲民主党の階猛氏が「政府の二枚舌」として追求したことがあるのだが、「赤木ファイル」について政府は、裁判の場では「裁判に関係ないので不要」としてその存否さえ明らかにしてこなかった。ところが、国会では「訴訟に影響する」として公表を拒んだ。これは矛盾ではないかと追及した階氏に、「訴訟に影響があるので…」と重ねて拒否のゼロ回答。こんなやり取りを見ても、政府がこの問題に対していかに不誠実な対応しかしてこなかったか、よく分かる。

公文書を改ざんするという、天をも恐れぬ破廉恥な行為を人に押しつけ、自責の念から自ら死を選ぶところまで追い詰めたという非道について、どう考えているのだろうか。しかし、妻雅子さんやジャーナリストに追い詰められた政府は、もう崖っぷちに追い詰められたも同然だろう。ジタバタするだけ、さらに立場を悪くすることに早く気付くべきだった。

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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