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ニッポン“惨敗”のコロナ戦争で判った、大転換すべき3つの問題点

新型コロナの猛威の前に一時は深刻な状況に陥るも、今や早くも「マスクなし」の日常を手に入れつつあるアメリカ。一方日本はワクチン接種の面で大きく遅れを取り、変異株の恐怖にさらされているのが現状です。なぜこのような差がついてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、日米の明暗を分けた要因を検証するとともに、今後同じ轍を踏まないためには日本の構造を大きく変える必要性があると強く主張。その上で早急に手を打つべき3つの課題を提示し、具体的な転換法を記しています。

コロナ後の世界と日本の秩序構築

緊急事態宣言の東京、愛知、大阪、兵庫、京都、福岡に追加して、北海道、岡山、広島にも宣言が発令された。まん延防止等重点処置も、神奈川、千葉、埼玉、愛媛、岐阜、三重、沖縄に群馬、石川、熊本が追加された。

しかし、ワクチン接種が本格化して、今年度内には日本も接種が完了するようである。65歳以上に7月末接種完了という公約は、現状でも1日30万接種しかできていないので、無理かもしれない。

しかし、あと数か月で、日本も集団免疫ができて、正常な生活に戻れる事が見えている。五輪には間に合わず、五輪開催は微妙であるし、開催した場合でも、感染拡大時期に開催することになる。しかし、全体的には、あと少しの辛抱である。

ということは、コロナ後の日本と世界がどうなるのかを検討した方が良い。コロナ前に、このコラムでは日本は統制経済になると見通したが、米国も財政出動と金融緩和で、新自由主義経済からバイデン流統制経済で、トランプ政権と同じような米一国主義に変わりがなく、製造業と財政の立て直しが必要になっている。

コロナ前には、日本だけが統制経済になり、日本だけが衰退するのかと思っていたが、語弊があるかもしれないが、丁度良くコロナ・パンデミックになり、世界が新自由主義経済から当分、統制経済になる方向が確定した。その面ではほっとしている。

新自由主義経済の中心である金融資本主義を止めて、米国でも国家主導で製造業中心の中産階級に恩恵がある国作りが必要になっている。新興国で生産することで安くできる経済を志向していたが、コロナで必需品が供給されなくなり、必需品は自国で作ることが必要となった。

しかし、平常時は自国製品より、新興国製品の方が安くなり、市場から自国製品は駆逐されてしまう。そのため、高関税などの輸入制限が必要になる。ということで、グローバル経済からナショナル経済にシフトし、保護貿易にならざるを得ないようだ。今後、この方向で世界は動き始める。

もう1つが、低所得者層の困窮と富裕層の資産拡大が起きて、貧富の差が拡大している。この差を解消しないと、選挙で勝てないことになり、貧富の差を無くす政策が必要になっている。

ということで、富裕層には増税、低所得者層には賃金を上げるか給付でバランスを取る。社会主義者バーニー・サンバースの提唱した経済政策が米国で採用になり、この政策が世界的に定着することになる。

このため、東南アジアに進出した日本企業にも利益に多大な増税が待っている。早く、日本に戻ってきた方が良い。賃金上昇にもなる。

その一環として、イエレン財務長官は、法人税の世界的な基準を決めて、それに従わない国は制裁すると脅す。というように社会主義的な政策を米国が採用することで、新自由主義的な経済国は、世界からなくなる。国家間の自由競争もなくなる。

中国は、社会主義に資本主義の良いところを入れた経済で、経済成長を遂げてきたが、米国が社会主義的な方向にシフトしたことで、中国もIT企業の統制を強化して、より厳しい統制経済にするようである。民主国の国民がみると、中国の「悪の帝国」化が進むように見える。

しかし、このような経済政策は、株価には良い影響はない。法人税が増税になり、利益は確実に減ることになるし、富裕層は所得税の安い国に移住することが考えられる。移住時に罰則金を取ることになると思う。

政府が企業経営に口出すことにもなり、利益を求めた自由な経営ができなくなる。しかし、世界はその方向に向かっている。

そして、労働生産性が上がらずに給付や給与を増やす経済は、持続可能ではない。労働生産性を上げるには、最大の供給国を潰して、生産量を増やすことであり、米国は、「悪の帝国」と見える中国潰しになる。戦争か世界的な対中保護貿易で潰すことになる。

ということで、いやでも地政学リスクが増大するし、している。自国国民の不満を解消するには、外に敵を作り、愛国心を煽り、不満を政府ではなく敵国に向かわせることで、国のトップは安泰になる。

この最初に出てきたのが、中国の南シナ海や台湾海峡での軍事行動であるが、これに米国、日本、豪州などが対抗して、米国は中東派遣軍をアジアに振り向ける必要から、中東から撤退している。「悪の帝国」中国潰しを行うためである。

しかし、この撤退はもう1つの目的があり、米軍撤退で、タリバンがアフガニスタンを支配すると、そこにアルカイダや原理主義戦闘集団が入り込み、そこを根城に東トルキスタン(ウイグル)独立運動が起きることを期待しているようにも見える。

しかし、米軍が中東からいなくなることで、イランが断然有利になっている。この動きを受けてパレスチナとイスラエルが再度の紛争状態になっている。

イスラエル・ネタニエフ首相の東エルサレムやヨルダン川西岸への入植地拡大政策は、非常に危ないと思っていたが、とうとう米軍が中東に居なくなることで、火が付いた格好になっている。米国以外の国は、イスラエルの入植地拡大政策が問題の根本にあることを知っているので、イスラエルに味方しない。

そして、米軍が中東から居なくなることを見越して、サウジがイランと対話し始めている。トルコもイランとサウジを結びつけるようだ。現時点で、この地域の盟主になりたいトルコは、反イスラエルになっている。イスラエル周辺国で戦争参加をしないのはエジプトしかない。

一方、ハマスのロケット弾が複数テルアビブに着弾しているので、イスラエル政府も住民に対して、防空壕に入っているよう促している。対ロケット弾防御のアイアンドームでも90%の確率でしか防御できずに、10%は着弾している。ロケット弾を同時に大量に発射することで、アイアンドームをすり抜ける作戦のようである。

このロケット弾の発射地点を占拠しないと、止まらないので空爆、砲撃などをイスラエルも行うしかないようだ。地上戦を今は回避しているが、ロケット弾が止まらないと、地上戦になる可能性もある。

アジアでの戦争より前に、中東での戦争が起きる可能性が高いような感じがする。そして、イスラエルも今までとは違い、戦争で負ける可能性もある。イランの核ミサイルを防御できないし、中国やロシアも出てくる可能性がある。シリアに展開するロシアは直ぐに戦争に参戦することになる。ロシアと言う強敵がいるので、今までとは大きく違う。

このため、バイデン米大統領も、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と電話会談し、事態の沈静化を図りだした。アジアの他に中東でも戦争になると、米国は2正面作戦になり、中国との軍事的な脅し競争に負けることになる。

世界は、戦争の時代になったと感じるのは私だけでしょうかね。そして、その準備を日本もしないといけないことになる。新しい駐日米国大使が着任するが、日本に平等な日米同盟の真の価値を問うことになる。というように、コロナ後の新世界秩序構築で、世界は動き始めている。

コロナ後の日本

米国に比べても、コロナ敗戦国・日本は戦後処理が山積である。

当初、コロナ感染者数が欧米に比べて少なく、感染症対策よりGoToトラベルなど経済政策を優先したことで、感染者数が大幅に増加してしまった。そして、地方へコロナを広めた。

開戦直後は優勢で推移したことで、日本は漫然としていた間に、米国は軍備を揃えて、戦争中期には軍事で圧倒した太平洋戦争と、同様だ。

今回も、米国は当初、コロナ死者数が増加したが、トランプ大統領がワープスピード作戦で、1兆円の資金を提供してワクチンを作り、工場建設にも資金を供与し、最後には特別認可で逆転した。

日本はアンジェスなど初期にワクチンが開発できていたが、治験などで日本は資金面での援助や特別認可をしないで、ワクチンを手に入れることができずに、コロナ禍を早期に抜け出せないことになった。その上、変異種が出て、感染スピードも早くなり、40歳代でも重症化する事態になった。このため、太平洋戦争後、始めての敗戦、コロナ敗戦とも言われる惨敗になったのだ。

という事で、このコロナ敗戦で、日本の構造を大きく変えないといけないことが分かった。

1つに、1年間で100兆円以上も使った財政をどうするのかを考えないといけない。特別コロナ国債を日銀が買取り、永久国債にして放置すればよいのだ。今までの国債の積み上げも30年もかけて積み上げたことで、インフレ圧力が大きくない。ここが米国とは違う。

そして、当分、増税を言い出さないことである。特に米国からの投資を呼び込むことである。本当は米国脱出の富裕層の取り込みもしたいが、対中戦争前線の日本に来るとは思わない。

富裕層の所得税は少し上げてもよいが、あまり効果がない。それより、財政の正常化を行うことで、赤字幅を1割程度にすることでしょうね。徐々にインフレが起きることになるが、年間2%程度であり、円安になることで、輸入品価格が上昇して、流出した製造業、食料や木材など国内産業が復活することになる。この意味は日本が貧乏国になることでもある。また、1次2次産業国家になる。

2つにはIT化の遅れが明確化したことだ。ITを進めるためには、入力を1つにしないといけない。このためには、政府の縦割り構造に横ぐしを入れる組織が必要であり、デジタル庁ができ、今後、縦割り組織に横ぐしを入れる施策が必要になるが、その横ぐしはマイナンバーである。

それを基に、デジタル統合政府と言う仕組みを作ることにある。このためには、相当な権限をデジタル庁トップに与える必要がある。このため、コロナ敗戦の今しかできない。

3つ目は、危機時の国家体制が出来ていないことである。私権の制限を含む権限を危機時には国家が持つ必要がある。それと、平時の法体系を危機時は停止できる権限を国家が持つことだ。

危機時に首相に独裁権を与える必要がある。そして、いかに迅速に対応処置を取れるかが勝負である。危機時に根回しや説得が必要なことになっている現状はおかしい。

この危機時でも利権擁護する業界団体も非常に問題である。このため、ワクチン接種も時間だけかかることになって、五輪開催も際どいことになっている。

しかし、最大の問題は経済的な回復をどう図るかであろう。終息後、早くGoToトラベル・イートを行い、観光業、飲食・ホテル業界、陸運業などを支援することだ。消費マグマが消費者にもあり、大爆発することになる。それまでは、この業界に金融支援を継続するしかない。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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