高級ブランドショプやちょっと値の張るレストランを利用した際に遭遇しがちな、違和感を抱くほどの丁寧なお見送り。「感謝の気持の表明」と重々理解してはいるものの、周りに他人がいる時などは恥ずかしさすら感じてしまうものです。翻って見送る側、すなわちお店サイドは、お客様にそのような思いをさせないためどのように振る舞うべきなのでしょうか。今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』では接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、「ちょうど良い見送り方」について考察しています。
プレッシャーを与えてはいませんか?
我が家の近所にある飲食店(フレンチの店)は、お客様が帰られる際には、毎回スタッフが店の外に出て姿が見えなくなるまで見送るというスタイルを取っています。
これについては、賛否両論あると思っていて、例えば、本当に高級かつ、購入頻度の高くない商品を扱っているような店であれば、こうした見送りは適切かもしれませんし、逆にそうではない店の場合は、お客様が引いてしまうことがあるので、避けたほうが良いという場合もあります。
結局はどれが正解なのかなんて、その時々によって変わるものなので、何とも言えないものではあります。私もこうした見送りをしていたことは結構ありますし、店によっては、今でもこういう見送り方を推奨することもあります。ただ、その見送り方自体には、もっと考えを張り巡らせるべきではないかと思います。
お客様の姿が見えなくなるまで見送る。これが絶対に悪いとは言いません。しかし、その見送りは何のためにやることなのでしょうか?お客様に対する敬意を表すため?それとも、お客様に「ちゃんと見送ってもらえているな」と気持ちよく帰ってもらうため?
これを考えると、まず間違いなく出てこないものがあります。「プレッシャーを与える」という理由です。
最後まで見送りをする理由に「お客様にプレッシャーを与えるため」と答える人はまず存在しないでしょう。ですが、実際にはどうでしょうか?最後まで姿勢正しくお客様の姿を凝視することで、プレッシャーを与えてしまっているということは本当にないのでしょうか?
冒頭に書いた店の問題は、実はここだと思うのです。
その店は、いつも最後まで見送りをすることで、周囲を通っているお客様も、見送られているお客様も結構引いてしまっています。実際私は、帰っている途中のお客様の横を通る際に「まだ見送ってるよ」「怖い怖い」と言っているのを直に聞いているくらいなので、そう感じている人がいるというのもわかっています。
ではなぜそう感じるかと考えてみると、やはりプレッシャーを与えるような見送りになっているからなのです。その見送り方は、整列した上で、きちんとした姿勢で、手の位置も全員揃っていて、ずっとお客様の様子を凝視しながら見送っています。しばらく様子を見ていても、数分間はそのままの状態なのです。これだとお客様もプレッシャーを感じやすくなってしまいます。
一方で、こうした見送りをしてもプレッシャーを与えない人もいます。そういう人の見送り方は、案外ラフな感じであることが少なくありません。例えば、離れていくお客様を見ている時も、隣のスタッフと会話をしながら見送っていて、お客様が振り返ったらちゃんとお辞儀をするくらいのラフさだったりします。
中には、軽く手を振る程度のラフさを見せる人もいますし、店のファサード(店前)を見ながらだったり、軽く掃除をしながらだったりもします。要は、凝視して「ずっと見ていますよ」感を出さずに、程よく見送ってくれているわけです。
このくらいの感覚だと、特にカジュアルな店では、お客様にプレッシャーを感じさせるわけではなく、でも同時に敬意や感謝を表することができます。簡単に言えば、「ちょうど良い」のですね。
こういう部分は、街中で長年営業していて、常連客ばかりの店なんかがすごくうまくやっていることも多くて、そういう店が参考になることも少なくはありません。
自分たちの店にとって、そしてお客様にとって「ちょうど良い」見送り方というのはどういうものなのかは、改めて考えておきたいなと思うところです。もちろん、マナー通り完璧にやる場合がちょうど良いということも多々ありますから、自店はどうか?という視点で考えておきましょう。
今日の質問です。
- 自店のお客様を見送る時の「ちょうど良い」見送り方とはどんなものですか?
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