ツッコミどころばかり。立憲・枝野幸男代表『枝野ビジョン』に抱く違和感

 

「リベラル」を「左翼」「革新」と一緒にするな

その上で、当時の議論のもう1つは、「リベラル」を旧左翼、旧革新などと一緒にしないでくれということにあった。確かに旧民主党には社民党出身者が多かったが、彼らも旧左翼もしくは旧革新陣営の一員という意識では困るので、その違いを一覧表にして議論をしたりした【図2】。言葉で説明すると次のようになる。

第1に《人間としての基本姿勢》。前者は「自分に厳しく他人に優しい」自己相対主義で、常に自分が間違っているかもしれない、自分の意見が直ちにみんなの賛同を得られるか分からないと思う謙虚さを保とうとする。それに対して後者は「自分に甘く他人に厳しい」自己絶対主義で、正しいのは自分と決まっていて、そうである以上、みんなが自分に付いてくるのは当たり前だと考えやすい。

第2に《コミュニケーションの方法論》。前者は「意見の違いを原動力として味方を増やそう」とするオープン・マインドを基本とするが、後者は「意見の違う者は排除して身内で固めよう」とする狭い排他主義に走る。これは、毛沢東の『矛盾論』が説くところの「内部矛盾」と「敵対矛盾」の区別に関わることで、例えば現今の日韓の摩擦が、本来はアジアの隣国同士の内部矛盾として粘り強い対話を通じて解決可能なはずなのに、双方があたかも和解不能な敵対矛盾であるかのように扱って落とし所を見失っているのがそれである。

第3に《政治的な目標設定》。前者は「選挙に勝って政権交代を果たさないと話にならない」と考える現実主義に立つ。ところが、後者は「常に“正しい”ことを言い続けることに意義があるのであって、負けるのは仕方がない」という現実を大事にしない善戦満足主義となりやすい(最近の共産党はだいぶ変わって来たが!)。

第4に《政策的な発想》。前者は「近未来のあるべき国家・社会像」をまず描いて、それを手前に向かってブレークダウンして現在へとプラグインするというアプローチを重視する。つまり手の届く未来の視点で現在の課題に当たることで未来を手前に引き寄せる。しかし後者は「遠い未来の理想を観念的に語る」だけで、それが現在とどう繋がるのか説明不足に陥る。ちなみに保守は、過去から現在への繋がりを重視するので、現在から未来に向かっては無理のない程度に改善することしか考えない。

第5に《組織論の原理》。前者は「ソフトなネットワーキング型の水平協同主義」をとるが、後者は「ハードなピラミッド型の垂直統合的な上意下達システム」に止まる。ネットワーキング型組織のモデルはインターネットで、すべての結び目はフラットで恒常的な指導センターは存在せず、どこかで誰かがイニシアティブを発揮して問題を提起し課題を設定するとそれに関心ある者たちがその結び目に向かって集まってきて、問題が解決すればその結集は解消され結び目もフラットに戻る。それに対してピラミッド型組織のモデルは軍隊や大工場で、指導部が常にリーダーシップを発揮して上から下に向かって縦に指令を流さなければならないが、そのやり方で問題解決できる分野はますます少なくなりつつある。前者は21世紀的であるのに対し後者は20世紀的である。

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