ツッコミどころばかり。立憲・枝野幸男代表『枝野ビジョン』に抱く違和感

 

「保守」と「リベラル」は重なるけれどもイコールではない

まず「リベラル」という言葉を誤解から救わなければならない。枝野は「日本では、55年体制当時から、与野党の対立を『右』『左』で表現してきた。……現在ではこれがそのまま『保守』と『リベラル』という言葉に置き換えられている」と述べている(P.5)。だが「リベラル」を単純に「左」と同義として用いているのは、主としては浅薄なマスコミで、これに惑わされてはいけない。

95年の冬に始まった旧々民主党の結成のための新党協議は「リベラル・フォーラム」を名乗ったが、それは94年暮れに小沢一郎の「新進党」が華々しく誕生し、マスコミが「保守2大政党制の時代」と騒ぎ立てていたことに対する反発からのことだった。旧保守=自民党と新保守=新進党との2大政党制などというものがあるわけがないだろう、右=自民党vs.左=社会党の「1.5大政党制」と呼ばれた55年体制が崩れた後に来るものがあるとすれば、保守=自民党vs.リベラル=新党という構図しかあり得ないという意味が、その名称には込められていた。

その当時、明確なリベラルの定義があったわけではなかったが、大雑把には、労組依存体質を脱して環境やフェミニズムなどの市民的価値観を大きく取り入れたドイツ社民党や、共産主義のイデオロギーを投げ捨てたイタリアの左翼民主党はじめ、当時欧州で一世風靡していた「第3の道」路線を参考にしつつも、日本の場合はもっと幅広になるだろうとイメージしていた。【図1】は、94年11月の新民連中心の新党準備シンポに関連して私が討論材料として提供し後にリメイクしたもので、要するに新しく結成されるべき「民主リベラル」政党は、

  1. 保守リベラル(自民党~さきがけ~)
  2. 社民リベラル(社民党・連合参議院・民社党~)
  3. 市民リベラル(市民運動~日本新党~)

という3大要素の合流であることを示している。

1.は典型的には鳩山由紀夫・邦夫兄弟や途中まで新党に参画しながら結局自民党に戻って行った船田元や園田博之などである。だから「保守リベラル」という概念が成り立つことは認めるが、それが社民リベラルや市民リベラルと混ざり合って新しい市民社会的な政治スタイルを創造していくことこそがテーマであって、新党が「保守リベラル」そのものであると定義してしまっては訳が分からなる道理である。

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