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京大教授が呆れた、吉村府知事「飲食店いじめ」発言の支離滅裂

28日、9都道府県で発出されている緊急事態宣言を来月6月20日まで延長する方針を政府が決定しましたが、この宣言延長によって最も苦しめられているのが営業短縮や酒類の提供禁止などで大損害を出している居酒屋などの飲食店です。去る21日、吉村洋文大阪府知事が「高齢者への新型コロナワクチンの接種が完了するまで飲食店の営業短縮などの要請を続ける」と発言したことについて、怒りをおぼえているのが京都大学大学院教授の藤井聡さんです。藤井聡教授は自身のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』で今回、吉村府知事発言の矛盾を指摘するとともに、「宣言延長」を支持する“コロナ脳”な人々の異常さについて事例をあげながら分かりやすく解説しています。

(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2021年5月22日配信分の一部抜粋です。続きはご購読の上、お楽しみください)

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「緊急事態宣言の延長」反対論者は、高齢者を「殺」そうとする大罪人だという日本を滅ぼす恐るべきコロナ脳の論理

大阪府の吉村洋文知事が21日、高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種が完了するまで、飲食店への営業時間の短縮などの要請を続ける考えを示したそうです。

● 飲食店への要請「高齢者の接種が終わるまで」 大阪知事

当方はこの記事を見たとき、文字通り目が点になりました。まさかここまで滅茶苦茶な判断をすることも無いだろうと思っていましたが、吉村知事の暴走もここまで過激化してしまったのかと驚愕してしまったからです。

なぜこれが滅茶苦茶だと瞬時に感じたのかを、まず簡単に解説したいと思います。

第一に、この吉村判断は、仮に重症者数が病床数以下で長期的に推移し続けても、高齢者のワクチン接種が完了しない限り、「機械的」に緊急事態宣言を続けることを意味しているからです。

そうなればもう耐えきれず、閉店したり廃業したりする飲食店がどんどん増えていくことは必至です。仮に倒産、廃業を免れた飲食店にしても、凄まじい水準の損失が生ずることも必至です。にも関わらず、後先考えず「機械的」に宣言を延長し続けるなんて、無茶苦茶だと言わざるを得ません。

第二に、そもそも昨年の第一波が終わって春頃から、今年の1月のいわゆる第三波がやってくるまで、緊急事態宣言を出さずともそれなりに重症者数は抑えられ、医療崩壊からはほど遠い余裕のある状況が続けられていました。

もし今回の吉村判断が正当だとするなら、ワクチンの高齢者接種が終わっていなかった昨年の5月から今年の1月までの7~8ヶ月の間も、本来なら緊急事態を宣言し続けるべきだったという事になります。しかし、そんな宣言は「不要」、控えめに言っても「やり過ぎ」だと誰もが判断するでしょう。

それと同じように、今年もあとひと月くらいして6月や7月になれば、同じような状況になることは十二分に考えられるのです。にも関わらず、そんな可能性など一顧だにせず、ただただ機械的に飲食店を閉めろ、酒を出すなと言い続けるのは、余りにも不条理としか言いようがありません。それはただ単なる、飲食店に対する「いじめ」「虐待」のようなものとなるでしょう。ホントに滅茶苦茶です。

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っていうか、第三に、昨年の夏はワクチンなど何も無い状態で緊急事態宣言出すどころか、逆に大阪でだってGOTOイートだGOTOトラベルだなんてやってたわけです。あのGOTO施策に対して、大いに反省でもしてるんなら、今回の吉村発言も筋が通りますが、そんな反省なんて何もやってないのです。

そう考えると今回の吉村発言は単なる口から出任せの思いつきだと見なす他ないのです。

さらに言うと第四に、そもそも吉村氏はつい先日まで、「感染症対策と経済対策のバランスをとる」「コロナ対策をやりながら、できるだけ経済を回しつづける」なんて事を言っていて、マスク会食を奨励したりできるだけ早く緊急事態を解除したりなんて事をやっていたわけです。それなのに今回の発言はいきなりその基本的な大方針を根底から覆すものとなっています。

だから結局、吉村氏という方は、口から出任せの思いつきで出鱈目発言をしてこられた方なんだっていう風に捉えざるを得ないわけです。もう滅茶苦茶です。

そして第五に、そもそも感染拡大は飲食店でのみ広がっているわけではないし、むしろ医療を逼迫しているのは高齢者施設のクラスターなのです。だから、高齢者施設のクラスター対策さえ徹底していれば、別に飲食店が経営してようがしてなかろうが、医療逼迫のリスクは大幅に抑えられるのです。さらに言うと、飲食店でマスク会食を徹底推奨し、5人以上の会食自粛を推奨しておけば、その飲食店でのリスクですら抑止することもできるのです。

これでは「タクシーで人身事故が起こっているから、タクシーの営業を全てヤメロ」と言っているようなもの。そんな極端な話聞いた事がありません。そんな馬鹿なこと、常識的に考えて通る筈がないからです。それくらい今回の吉村発言は滅茶苦茶だ、って事になるわけです。

……等々、やはりどこをどう考えても、今回の吉村発言の滅茶苦茶だと言わざるを得ないわけですが、それでもなお、今回の吉村発言を支持する人々は決して少なくはないでしょう。事実吉村氏にしても、きっとこう言えば支持されるだろうと思ったから発言したのでしょう。

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恐らく彼等は、上記の様な吉村発言批判をする我々を徹底批判するに違いありません。

「どれだけ感染が終息したように見えても、これまで何度も感染拡大して、高齢者が一杯死んできたじゃないか!

だから、ず~っと自粛し続けるか、あるいは、高齢者のワクチン接種が終わるかしない限り、感染が広がって人が死ぬんだよ!

だから、高齢者の接種が終わるまで、自粛は解除できないんだよ!

さもなければまた、感染が広がって人が死ぬじゃないか!?

この意見に反対するってことは高齢者を見殺しにするっていう事だぞ!!

そんな奴は、人殺しと何らかわらねー、邪悪な輩なんだよ!!!」

……ってことで、僕は完全にこういう人達からすれば、「高齢者を見殺しにする人間のクズだ」ってことになるわけです。

で、こういう意見を聞けば一瞬、どんな方でも吉村発言にもやっぱり一理あるのかなぁと思えてくるでしょう。

しかし、こういう発言は一言で言うと、

「コロナで死ぬ人を見殺しにしちゃいけないから、安全になるまで飲食店は営業を制限し続けろ」

という話です。そしてこれを批判した途端に彼等は「お前は人を見殺しにするのか!?」と非難して、「人の命」を人質にして批判者を黙らせようとする、というのが彼等の手口なわけです。

それを当方は暴論だと言ってる訳ですが、そんな暴論が許されるなら、吉村知事は次の様な事を言わないといけなくなってしまいます。

「通勤電車で感染が広がり人が死ぬかもしれないから、通勤電車の利用を制限しよう」

「コンビニやスーパーで感染が広がり人が死ぬかもしれないから、コンビニやスーパーの営業や利用を制限しよう」

「公園のジョギングで感染が広がり人が死ぬかもしれないから、公園のジョギングを制限しよう」

もう滅茶苦茶ですが、TV見てると実際にこんなノリの番組は決して少なくはありません。こうなれば結局は「ステイホームが一番いい」ってことになるわけですが、いくらステイホームやってても、結局は完全に安心することなんて出来ません。なぜなら……

「ウーバーイーツで配達される食品が感染してて、それを配った時に感染が移って人が死ぬかもしれないから、ウーバーオイーツの活動を規制しよう」

「水道が汚染されてる可能性もあるから、水道水を飲むと感染して死ぬかも知れないから、水道水を飲むのを規制しよう」

「家の周辺の空気が汚染されて、その空気を吸うと感染して死ぬかも知れないから、換気行動を規制しよう」

っていう話になってくるからです。

ここまで来ればもう、誰がどう見ても滅茶苦茶だと思えて来ますが、人によっては、「そうだそうだ」と思う人もいるに違いありません。調理人の厨房や水道局は感染対策をほぼ完璧にやってるからリスクは殆ど無い、って思う人も居るでしょうが、それでも「リスクがゼロか」と言われれば絶対そんな事は言えないからです。空気感染なんてどう考えてもねぇだろ、と科学的に殆ど分かってますが、それだって、リスクが絶対の絶対の絶対にゼロなのかと言われればそうじゃないからです。(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』より一部抜粋・敬称略。続きはご登録の上、お楽しみください)

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image by: 大阪府ホームページ

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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