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オカルトと笑うなかれ。心理学者が説く虫の知らせやテレパシーのこと

ともすれば「オカルト」の一言で片付けかねられない、テレパシーや虫の知らせを含む「超感覚知覚(ESP)」ですが、物理学で説明がつく可能性があることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では著者で心理学者の富田隆さんが、量子物理学における「量子もつれ」と「ESP現象」の関連について分かりやすく解説。そのカギは、量子力学が扱うミクロな世界における「日常世界での常識が通じぬ物質の振る舞い方」にあるようです。

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「量子力学とESP」

【虫の知らせ】

以前にご紹介した「ESP」現象を覚えていらっしゃいますか?

「テレパシー(telepathy)」などと言うと、オカルトの世界とも関わる現象なので、『ムー』の読者でもない限り、真面目に話を聴いてくれませんが、心理学にはこうした特殊な心理現象を「実証的に」研究している人たちが昔からいて、この領域は「超心理学(Parapsychology)」と呼ばれています。

テレパシーとは、ある人の心の内容が離れた場所にいる別の人の心に「直接」伝わることです。

スマホなどの機器を使わず、相手の姿や表情も見えず、声も届かない状態で、相手の思念が伝わるわけですから、そこに眼や耳などの「感覚器」は関与していません。

そこで、こうした現象を「超感覚知覚(extrasensory perception)」略して「ESP」と呼んでいます。つまり、通常の感覚を超えた知覚能力ということです。

現在では、人と人との間に起こる現象だけではなく、人が五感などの感覚器や推理などの思考力を使わずに外界の情報を得る能力一般を「ESP」と呼ぶようになりました。

二人の恋人が、お互いの身に起きた出来事を夢で知ったり、胸騒ぎがするので心の命ずるままにある場所に行ってみると恋人もまた同じようにそこに来ていた(ラフカディオ・ハーンの体験)、といった現象はかなりドラマチックですが、誰かのことを思っていたらその人から電話が来たといった現象なら、日常的に多くの人が体験していることです。

ユング(Carl Gustav Jung 1875~1961)がこうした「意味のある偶然の一致」を「シンクロニシティ─(synchronicity)」と呼んで、ESP現象の一種と考えていたことも、以前にご紹介した通りです。

日本で古くから知られている「虫の知らせ」といった現象もまた「ESP」の一種と考えられます。

戦時中に、南方や大陸で息子が戦死したことを軍の通知より早く、ほぼ同時刻に夢で知ったという親たちの体験談などは、戦後生まれの私たちも、数多く聞かされました。

このように、「虫の知らせ」というと、家族や親しい者の死を知るといった不幸に関連した出来事が少なくないようです。

しかし、それだけではなく、事故などの危険を事前に「予知」して避けることができたといった体験も「虫の知らせ」と呼ばれています。

現在、「ESP」によって得られる「外界の情報」とされているものの中には、「テレパシー」的な特定の人が発信源になるものだけではなく、こうした事象一般の「予知」も含まれています。

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【同時性の謎】

20年以上も前のことになりますが、日本における超心理学の権威である大谷宗司先生にお会いしてお話を伺う機会に恵まれたことがありました。

先生は当時、防衛大学校で教鞭を取っておられました。

その際に先生は、「ESP現象が実在すること自体は多くの研究により実証されているけれど、情報を伝達するメディアが何であるのかが分からない。電磁波でも重力波でもない。何しろ、ESP現象はまったく同時に起きる。時間差が無い」と語っておられました。

かつてのソヴィエト連邦では、超心理学の研究が重要視されており、原子力潜水艦などを使って、地球の裏側の、しかも海の底で起きた現象が、レニングラードで同時に検地されるといった実験が行われていました。

何とも不可思議なことですが、こうした、かなりの距離を置いて行われた実験においても、ESP現象は「同時」に起るのです。

ESP情報を伝える未知のメディアは光の速度をも超える何物かなのです。

不勉強な私は、その後の研究に関わることも無かったので、先生のおっしゃった「同時性」についての疑問をそのまま放置していました。

しかし、最近になり「量子コンピュータ」が話題となるにつれて、いわゆる「量子もつれ(quantum entanglement)」という現象が論じられるようになりました。

これに触発されて調べてみると、既に、何人かの天才的な研究者が、これを用いて「ESP現象」についての仮説を立てていたことを知ったのです。

二つのペアを組んだ量子は、どんなに離れていてもある意味でつながっていて、その相互関係は「同時」に変化するというのです。

たとえ、宇宙の反対の果てにそれぞれの量子が置かれていても、それらはつながっていて、両者は同時に状態を変えるというのですから驚きです。

アインシュタイン(Albert Einstein 1879~1955)も、こうした「量子もつれ」を「不気味な遠隔作用」と呼んだほどです。

しかし、この「量子もつれ」こそが、ESPに関する時空を超えた「同時性」の問題をも解決するかもしれません。

【量子脳理論】

実際、ドイツの神経科学者であるワッカーマン(J. Wackermann)らが2003年に発表した論文において、彼らが脳波とfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を指標に行ったテレパシー実験の結果(ペアを組んだ被験者の間で、脳波の同期が生じた)を説明するのに「量子もつれ」を仮説として提唱しています。

その後、米国のラディン(Dean Radin)も、隔離された二人の人間の脳波に「相関関係」が生じるという実験結果(2004)を説明するのに、「量子もつれ」のような現象が脳という巨視的な物体においても生じるという可能性について述べています。

21世紀になり、ESP現象と量子力学(quantum mechanics)の関係が指摘されるようになった背景には、2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ぺローズ(Sir Roger Penrose 1931~)が1989年に著わした一冊の本『皇帝の新しい心(The Emperor’s New Mind)』の影響が大きいと考えて良いでしょう。

この本の中でペンローズは、「量子脳理論」を提唱しました。

脳内の情報処理には「量子力学」が深く関わっており、人間の高度な「意識」も神経細胞内で生じる量子レベルの現象から発生する、と述べています。

ペンローズによるこの革命的な学説は、意識やESP現象だけでなく、死後の魂の連続や「生まれ変わり」といった現象についても説得力のある説明を与えてくれますが、あまりに魅力的であると同時に情報量も多いので、紹介するのは次の機会に譲りましょう。

今回は、ESPと「量子もつれ」の問題に限りたいと思います。

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【神秘と論理のダンス】

量子力学は、分子や原子、電子などのミクロな世界で生じる現象を説明する物理学です。

分子や原子でも充分に小さいのですが、原子をさらに分解すると、電子や陽子、中性子に分けることができ、陽子と中性子はさらにクォークという最小単位の粒子からできています。クォークや電子、光子などの最小単位の粒子のことを「素粒子」と呼んでいます。

こうした極微の世界では、物質の振る舞い方が、私たちの日常世界とはかなり違っています。日常世界での常識が、ミクロの世界では通用しません。

たとえば、個々の電子は「スピン」と呼ばれる状態を持っているのですが、スピンには「上向き」と「下向き」の二つの状態があり、しかも、1つの電子がこれら2つの状態を「同時に」持つことができるのです。

こうした現象を量子力学における「重ね合わせ」と呼ぶのですが、どう呼ぼうと非常識この上ありませんね。

2つの異なる状態が、同時に重ね合わされているというわけです。

そして、電子のスピンが「上向き」か「下向き」かは実際に「観測」するまでどちらか分からないままなのですが、これを私たちが観測することによって、どちらか1つの状態に「確定」するのです。

スピンの2つの状態が「観測」によりどちらか1つに確定されるので、この変化を「状態の収縮」とよびます。

こうした現象は、ペアを組んだ2つの粒子の間でも起こるのです。

粒子Aと粒子Bのスピンの状態が「Aが上向き・Bが下向き」と「Aが下向き・Bが上向き」の重ね合わせ状態にある場合、粒子Aを観測して、Aが下向きであることが確定されたら、Bは観測するまでもなく上向きに確定されるのです。

この変化は、「同時」に、そして、粒子のAとBがどんなに離れれていても生じます。

量子力学では、このような2つの粒子の関係を「量子もつれ」の状態にあると言うのです。しかも、こうした一連の変化は「非局所性」であり、限られた空間(局所)でのみ起ることではないのです。

何とも、日常空間の常識には合わない話ですが、このような量子の振る舞いが存在することは、空間を超越して「同時に」ESP現象が生じることに物理学的な説明の可能性を与えてくれます。

私たちの脳神経系で行われている情報処理が、具体的にどのようにして量子における「状態の収縮」に関わっているかは、次の課題です。

このように、神秘と論理のダンスは、エンドレスに続きます。

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image by: Shutterstock.com

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