日本酒「獺祭」社長の大正論さえ理解できぬ、菅総理“飲食店いじめ”の不見識

 

飲食店を日本の「いのち」として守るべき

こういう中で、5月24日付「日本経済新聞」の第6面1ページを用いて「飲食店を守ることも日本の『いのち』を守ることにつながります」と題した意見広告が載った。発信者は日本酒のブランド「獺祭」を製造する旭酒造の桜井一宏社長。これは、上記2.に対する真正面からの批判で、私は深く共感する。要点はこうだ〔写真〕。

▼日本では8割の人が小売りや建設や飲食などのローカル経済圏で働いていて、特に飲食業界で働く多くの人たちがなすすべもなく仕事を追われ、苦しみを募らせている。

▼例えば兵庫県の感染経路別患者数のパーセンテージを見ても、家庭52.1%、職場16.2%、福祉施設7.5%などに対して、飲食店は最下位のわずか2.9%です。にもかかわらず、飲食店にはコロナ感染防止策として極めて厳しい営業時間制限などが掛けられています。

▼しかし、制限を課している〔省庁の〕職員が、深夜遅くまで会食を続けていたことが、誰もこの制限の実効性を信じていない証左です。結局〔彼らが〕信じていないのに、いじめの様に、飲食店は事件制限などを押し付けられています。

▼度重なる営業時間制限や酒類提供の中止などにより、全国の飲食店は疲弊し破滅の淵に立たされています。このままでは多くの飲食店の閉店や倒産は避けられず、それはそのまま各店に酒類や食材を卸している納入業者の疲弊や連鎖倒産、そしてそこに関わる人たちの失業や困窮に結びつきます。

▼世界でもっとも安全で豊かな外食文化と評されるまでになった我が国の飲食業界のバリュー・チェーン、長年にわたる関係者のたゆまざる努力のたまものが、この数カ月で急速に破綻し、崩れはじめています。

▼このたびの制限策が、さまざまな飲食店を一括りにして同じ制限時間で押し切ってしまっていることにも疑問を感じます。「一律20時閉店・酒提供19時ストップ(または酒の提供自体を禁止)」では、飲食店の存続が困難となるばかりか、制限時間を一律にすることが店内や交通機関に蜜状態を作る原因にもなっています。

▼他の先進国では、レストランの稼働席数を50%までに抑えるなどの条件をつけながら、客席入れ替え・回転可能な営業を認めるなど、飲食店の負担を少しでも和らげるための政策が行われています。飲食店の営業時間の制限を、感染対策の状況に応じて、そしてその業態や内容に応じて、より合理的なものに見直すことを、切に提言したいと思います。

繰り返すが、この趣旨に賛成である。

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