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シェアはウーバーの倍以上。日本市場に参入した米国宅配大手の勝算

ウーバーイーツと出前館がしのぎを削る宅配サービス業界に襲来した「黒船」が、新たな激震をもたらしています。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』では著者でMBAホルダーの理央 周さんが、6月9日に仙台でサービス提供を開始した米国フードデリバリー最大手「ドアダッシュ」の実力を紹介するとともに、日本における優位性について検証。さらに同社の勝算と今後の目論見をMBAの視点で考察しています。

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なぜ米ドアダッシュがこの時期、日本で宅配サービス事業に乗り出したのか?~商機と目論見は?

米国料理宅配の最大手、ドアダッシュが、先日日本市場に参入しました。まずは、仙台市でビジネスを開始して、展開エリアを広げていくとのことです。

ドアダッシュはなぜ、この時期に日本市場に参入したのか?

アメリカ以外では3カ国目で、アジアでは初めてとのことです。仙台でのサービス内容は、営業時間は10時から24時。加盟店は、「牛角」「かっぱ寿司」「吉野家」、「ケンタッキーフライドチキン」など全国チェーン店に加えて、地元の有名店などがラインナップに入っているとのことです。

ドアダッシュは、アメリカでの料理宅配市場において、シェアが56%で、ウーバーイーツの21%を、大きく引き離しています

確かに、このコロナ禍の中で外食に行くことを控える人も多く、料理の宅配や、オフィスへのケータリングは、以前よりも増えています。

日本経済新聞 4月15日の記事によると、

ICT総研の推計では、ネット注文による、フードデリバリーサービス市場は2018年に3,631億円、2019年には4,172億円へと市場規模が拡大。

 

さらに新型コロナウィルスの感染拡大で、外食自粛が目立ち始めた2020年は、4,960億円へと市場規模を大きく伸ばしている。

 

2021年もコロナ禍での利用拡大が続くため、5,678億円に成長、2022年に6,303億円、2023年に6,821億円に拡大すると予測した。

(以上、日本経済新聞 4月15日「ICT総研、『2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査』結果を発表」より抜粋)

この推計にもある通り、フードデリバリーサービスは、今後まだ日本でも伸びる傾向にある市場です。

また、これまで食事の宅配というと、「出前」というイメージで、家にあるメニューやチラシで何にするかを決め、お店に電話して、てんやものを注文して持ってきてもらう、というやり方でした。もちろん、代金も事前に用意しておかなければなりません。

しかし今は、何を食べたいかを探して、値段を確認して、あと何分すれば届くのか、という探すところから宅配までを、スマホ1つでできるようになりました。しかも、クレジットカードを登録しておけば、代金を用意しておく必要もありません。

また、以前はスマホで探して届けてもらうには、何をどうすればいいのか、と迷う人たちも多かったと思いますが、ここ1年で多くのことがデジタル化されて、消費者の方も慣れてきているため、心のバリアも低くなっていると思われます。

その意味でも、市場の広がりフードサービスデリバリーへの、消費者の心のバリアが下がったことも、1つの要因になると言えます。

「日本でも地域経済の発展に尽力したい」と、日経新聞に社長のコメントが載っていましたが、今後の市場規模の拡大も併せて、ドアダッシュは日本市場への参入を決めたのでしょう。

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ドアダッシュの市場参入にネガティブな要素はあるか?

一方で、日本ではすでにウーバーイーツが参入しています。ウーバーは年内に全国に展開すると発表していますし、日本企業の出前館も、6月から全国に展開すると発表しています。さらに、メニューや楽天デリバリーもあるため、ドアダッシュは、料理宅配業会の中では、後発組としての参入になります。

伸びている市場にサービスを展開するのは鉄則ですが、その分、美味しい市場で売りたいという企業は多くなり、競争が激しくなって顧客の奪い合いになります。

宅配ビジネスにおいて、参入企業が増えると、配達員の数の確保が難しくなり、配達の質を維持する努力も必要になります。特に地方都市では、人の数と質の確保に、苦戦すると考えられます。

また、ユーザーとしては多くの選択肢の中から選びたい、と感じるでしょうから、どのお店の、どんな食事を頼むことができるか、という品揃えも重要な要素になります。

できる限り多くの店にも出店して欲しいし、自社だけに登録をしてくれている名店があると、ユーザーから選ばれる理由になります。

このように、市場への参入に関しては、チャンスと同時に、潜在的で不確実な要素があることも、考慮に入れなければなりません。

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ドアダッシュの勝算と今後の目論見は?

ではこのような競合状況の中で、ドアダッシュの優位性について考えてみます。

ドアダッシュの、日本でのサービスやサポート形態が、まだ不透明なので、あくまでもアメリカでの仕組みにおいてですが、ドアダッシュがウーバーイーツを大きく引き離した要因の1つに、ウォルマート(日本では西友ですね)や、ドラックストアと提携することで、飲食物の宅配だけではなく、日用品や日常雑貨の配達を行っているという点です。

また、ホテルとも提携しているので、対象ホテルに宿泊したら、ホテルの部屋まで、持ってきてくれる、しかも、デリバリーの配達料が無料になる、といった、仕組みと販売促進策があります。

出店する飲食店サイドからの視点で見ると、ドアダッシュで加盟店登録をすると、デリバリーの売上を上げるための戦略ややり方を一緒に考えてくれるというサポート体制があるそうです。

例えば、ドアダッシュ掲載リストに使用するメニューの写真撮影を、プロが無料で行ってくれるなどの施策が用意されているので、撮影機材や編集ソフトの用意がない、小規模飲食店でも、質の高い写真を掲載することができます。

決済システムの構築も、ドアダッシュの注文の買い物カゴを、出店する店舗が自分のお店や会社の、注文ページやサイトに組み込めます。

飲食店から見ると、自社のページを大きく変えなくても、注文ページだけ作れば、ドアダッシュの仕組みで注文を取ることができます。なので、大企業ではなくても簡単に自社サイトに組み込めますし、もちろんドアダッシュのアプリからも注文できます。

あわせて、配達員の用意などもドアダッシュに任せることができるので、最小限の追加コストで、新しいチャネルとしての、フードデリバリーサービスに参入できる点も大きなメリットです。

また、ウーバーや出前館に既に出店していても、ドアダッシュにも出店しようかな、という気持ちになるため、出店者数を増やすことに対して、優位性があると言えます。

さらに、アメリカで、スーパーやドラッグストアなど、料理以外の宅配の実績と経験があるため、フードデリバリーサービスに加えて、雑貨や食材の宅配も追加されるでしょう。

そうなると、店舗まで移動距離が長い地方で、「数時間で届く」ということになれば、利便性が増し、広がる可能性は増えるでしょう。

ドアダッシュは、都心よりも地方にチャンスがある、と強調していますが、まずは地方でテスト的に始めながらチャンスを伺う、という戦略でしょう。

これから、市場が伸びるにつれて、競争が激化することが予想されます。

その市場機会を、どのような事業コンセプトで、ものにすることができるのか、が勝負の分かれ目になります。

後発ですが、ユニークなサービスを持ち、関与する飲食店の利便性が高い、ドアダッシュの独自ポイントに、今後注目したいと思います。

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image by: Tada Images / Shutterstock.com

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