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ジェンダーの悩みを抱え続けているモデルを救った「母の一言」

昨今、世の中に浸透してきた「LGBT」や「ジェンダーレス」という言葉や意味ですが、もしも自分自身の子供がこれらのことで悩んでいたとしたら、親としてどう接すればよいのでしょうか? 無料メルマガ『幸せなお母さんになる為の子育て』著者のパピーいしがみさんは、性的マイノリティに対する親としてのあり方を、現役モデルの「井手上獏」さんの話を例にあげながら紹介しています。

ジェンダーレス

こんばんは。パピーいしがみです。

今日はこのごろちょっと増えてきた相談「ジェンダーレス」についてお話をさせて頂こうと思っています。

LGBT(エルビージーティー)という言葉は誰もがお聞きになっているとは思いますが、この『T』がトランスジェンダーの『T』で、「生まれた時の性別とは異なる性別で生きる人、または生きていこうとする人」と要約されています。

今はLGBTにQ(性別を決めない・分からない)を加えて「LGBTQ」と言われることや、もっと多くに分類し「LGBTQIA+」と言われることもあるようです。

ですが、要は今までの「男性・女性」の真っ二つの分け方でなく、いろんな人がいていいんだよ。「男なら男らしく・女なら女らしく」は、その人を傷付けるよ、差別してはいけないよ、というメッセージを含んでいます。

この「幸せになる為の子育て」でも、今までこれについてはお話はしてきませんでしたが、ジェンダーレスに関するご相談は少しずつ増えています。

大人のケースは良く聞きますが、子供にあるのかな?と疑問をお持ちの方も多いと思いますが、「娘がズボンばかりをはきたがる。髪の毛はいつもショートカットで、女も子の遊びを嫌う」というご相談や、「男の子なんだけど戦いごっこは嫌いで、お人形さんが大好き。遊び相手はいつも女の子。この先が心配」というご相談も頂きます。

世間的には、性的マイノリティに対しても一般的になってきて「何も悪いことでないんだ」とは言われていますが、実際ご自分のお子さんにそれを感じると「えっ?どうして?この先どうしたらいいんだろう?」とお悩みになることも多いんですね。

ただ、幼少期に男の子のようだった女の子が、とても良いお母さんになっていく…という事もありますし、女の子ぽい男の子だった子がとても頼りがいのある青年になっていく事も数多くあります。ですから現時点だけを見て「あ、これは体は女性(男性)でも、心は男性(女性)なんだ」と感じたとしても、結論を急がないで欲しいと思うのですね。

もちろん「もっと女の子らしくしなさい」とか「もっと男の子らしくしなさい」と叱る必要もありません。強制で直るものではないですからね♪ 親が悩むよりも、もしトランスジェンダーの気質があれば、本当に悩むのは子供本人です。なので親としては、生まれながらの性別にこだわらないで欲しいと思いますし、今だけを見て決定しないで欲しいと思うのです。

それで、私がこのジェンダーレスについての話をする時に「いつか一緒にお伝えしたいな~」と思っていたことがあるのですが、あなたは「井手上獏(いでがみ・ばく)」くん(現18歳)、をご存じでしょうか?私がその方を知ったのは、2018年ジュノンボーイコンテストに彼が参加した時の事でした(当時15歳)。

ジュノンボーイコンテストとは、武田真治さん、小池徹平さん、溝端淳平さんなどが歴代の優勝者で、「カッコ(かわ)いい男の子」「今後のイケメンタレント」の発掘オーディションのようなものだったのですが、井手上獏くんが現れた時、他の出場者はイケメンぞろいの中で、1人だけフェミニンな雰囲気を醸し出していました(私は石原さとみさんに似ていると感じました)。

大会の趣旨とはちょっと違うのか、優勝はしませんでしたが、DDセルフプロデュース賞を受賞しました。その時「この子はきっと注目される!」と感じたのですが、やはりこの受賞をきっかけにテレビに出るようになったようです。

獏くんは、昔は男の子らしい子供だったようですが、幼少期に見た、結婚式の花嫁姿に一目ぼれして以来、綺麗なもの、可愛いものに興味を持つようになり、徐々にメイクや服にも興味を持って行ったそうです。

そして知って驚いたのですが、この獏くんが生まれ、生活をしている場所が「島根県の離島」だった事。島の人口も2,300人ぐらい。小学校は2校、中学・高校は1校しかありません。

とても自然にあふれていて年齢の高い方も多く、のんびりした場所のようですが、「島」と言ったら、やはり外からの情報が入りにくく、保守的で、みんなと違った行動に対して良く思われない…そんな印象があります。そんな中で嫌な事や特異な目で見られたことはないのかな?と疑問に思ったのでした。

調べていくと、やはり獏くんのことを陰で「気持ち悪い」と言っている子はいて、本人はとても傷ついたと言っています。そしてその時の事を作文にしていました。こうありました。

「気持ち悪い」

いきなり、耳を疑うような言葉が僕の耳に飛び込んできました。

え、僕のこと?僕のどこが気持ち悪いの?

その日から僕は周りから変な目で見られているように感じました。少しずつ自分を変えようとしました。

肩まであった長い髪をバッサリ切って、なるべく周りの男子に合わせました。

鏡を見る度、理想の自分ではない自分が映っていて本当に辛かったです。

けれどそのときの僕はありのままの自分ではいられなかったのです。

楽しくはなくてもできるだけ男子と関わろうとしてみました。

無理をするのは思っていたよりも何倍も何倍も苦しかったです。色のない、白黒の毎日でした。

実は獏くん、この作文を書いた時に、当時、中学の担任の先生から「少年の主張に出てみないか?」と誘われ、島根県では島根県知事賞。そして全国大会では文部科学大臣賞を受賞しています。そしてその作文の中で、今の自分に自信を持たせてくれたのは…お母さんだった、と言っているんですね。

その時の事を獏くんはこう言っています。

「中学2年生のある日、家にいたら唐突に母に呼ばれて。『漠って男の子が好きなの?』と、聞かれたんです。

その時の母は真剣そのものだったから?本当の自分?について話すしかないなって。

理解してもらえるかわからないし、怖くて不安だったけど、やっと誰かに話せるという気持ちもありました。

『気持ち悪い』と言われて苦しんだこと、髪を短くして辛かったこと、男の子も女の子も恋愛対象になるということ、全部話しました。

そうしたら母が『漠は漠のままでいいんだよ』と、私のすべてを認めてくれたんです。

その瞬間に私の人生は変わりました。誰かが自分のことを認めてくれるというのはそれくらい大きなことだと思います」

お母さんにとっては、自分の息子に「あなたは男の子が好きなの?」と聞くことはとても勇気のいる事だったと思います。そしてすべてを聞いたお母さんも、何の批判も指摘もなく「あなたはあなたでいい」と言われたこと。すごいお母さんだと思いますし、獏くんは心から安心したと思うのですね。やはり一番の力になってくれるのは、お母さんなんだな~と改めてその影響力の大きさを感じたのでした。

その作文が文部科学大臣賞になった時、知名度はいっぺんに島中に広がり、獏くんの事を島中で応援してくれるようになったそうです。ちなみにジュノンボーイへの応募は、島にたった1つしかない診療所の先生のお勧めだったそうです。

その獏くん、当時の夢は自分の好きな美容やファッションへの興味を生かせる美容師になる事でしたが、今年、高校を卒業し、東京に住みながら、モデルの仕事を中心に活躍しています。

もちろん女性雑誌、女性向けファッションに関連する仕事で、東京ガールズコレクションにも参加されています。

ご興味がありましたら「井手上獏(いでがみばく)」くんで検索してみて下さい。少年の主張の動画も残されていますから(^^)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 石神明生 【発行周期】 毎週日曜

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