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小山田圭吾氏の「反省」は本物か?現役探偵が告発、いじめの現実と加害者の論理

先日掲載の「五輪を開く資格なし。小山田問題が決定づけた組織委の無能と無責任」等の記事でもお伝えしたとおり、過去に同級生に加えていた凄惨ないじめが問題視されたことを受け、五輪開会式の楽曲担当を退いた小山田圭吾氏。この事態を巡ってはさまざまな立場の人間から多くの声が上がりましたが、いじめ解決のプロはどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵であり「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、小山田氏のようなレベルの加害者は反省などしないと断言し、そう判断せざるを得ない理由を自身の経験を元にしつつ明示。さらに今現在、いじめを行っている加害者に対して強いメッセージを発しています。

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いじめ解決のプロが被害者に「容赦するな」と助言する訳

2021年7月23日、東京オリンピックが開幕した。

これが是となるか非となるか、終わってみないと言いたいところだが、これを書いている22日までの様相を見る限り、非であろうと言わざるを得ない。

すでに、別紙紙面で取材を受けていて私の意見は大まかに述べたところだが、小山田圭吾氏起用から過去のいじめ発覚後、バタバタ劇があって辞任までの流れはお粗末極まりないものであった。

小山田氏はオリンピックの楽曲提供をしていたわけだが、過去の壮絶ないじめ問題が開会式直前に浮上した形だ。

これは、90年代のサブカル誌でのインタビューで過去のいじめを小山田氏が告白していた問題で、実際にこのインタビューを読んでみると、とんでもない内容であった。

仮に、その頃のサブカルチャーが現代の意識とはかけ離れているとしても、このような事を自慢げに話すということは怒りというより諦めの念を覚えるほどだ。

結局、各団体からの抗議、海外の報道機関が取り上げたことで、政府からの強い懸念が出て、辞任という形になったわけだが、それまでは、オリンピック組織委員会は慰留コメントを出していたし、小山田氏本人も謝罪文の掲載段階では、やる気満々であったと思われる。

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私が知る限り加害者は反省などしない

いじめには確かに軽重の差がある。何よりも早めに対処があり、多くの介入がある場合は、被害側はその被害が甚大でない条件で、加害側も悪質性がまだ軽い状況であれば、加害側が深く反省し、二度とこのようなことはしないと約束することは確かにあるが、小山田氏の告白したいじめのような完全にアウトな行為をするような加害者が、反省した様子を私は見たことがない。

ただ、私が関係していない酷いケースも多くあるわけで、その件については私は知らないから、別紙の取材には「99%」という表現にした。

多くは、事実が発覚することを恐れて口止めを行うが、事実が表に出るとわかるや否や加害者同士が口裏合わせを行い、適当な理由を繕って正当性を主張する。また、証拠類を残していないと考えるようなものや一発退学相当な悪質なものは絶対に認めないという方策をとる場合が多い。

加害者が行う最も多くの理由は、「先に私もやられたから、やり返しただけだ」であり、加害者が主張するやられた行為には、加害者同士で口裏合わせをした作られた証言以外は何もないのだ。

こうした証言は、捜査や調査のプロが聞けば一瞬にして嘘だとわかるものばかりだ。

だが、残念ながら教職員は、捜査や調査のプロではない。

例えば、溺れる場合、人は叫ぶことができないが、ドラマなどでは溺れている様子を誇張するために「助けて」と叫ぶのだ。現実と虚構の差を知るプロであれば、そうした証言が出た瞬間、嘘をついていると判断し追及するわけだが、わが校の生徒は、みんな本当はいい子なんだと思い込んでいる能天気な教員は、不信を感じたとしても追及することができない。

仮にプロがそこを追求しないのであれば、何らかの別の理由が存在していたことを意味するだろう。日本という国がどういう構造かを知れば推して知るところだ。

さて、こうした口裏合わせや認めない主張を繰り返しても、彼らが出るはずもないと思っていた行為動画やその裏でやり取りしていた自白となる内容が出てきた場合は、もはや否定することもできなくなる。

こうなると、加害者は自らの身分の処分を考えるようになるのだ。ちなみに、小中学校は学校における懲戒という懲戒がないことを付け加えるが、私学や高校生以上であると、退学処分などの学校が行う処分が現実味を帯びてくるわけだ。

また、警察が動くことになれば、少年法の範疇であっても虞犯・触法・犯罪少年という区分の他、児童相談所への送致やその他の対応が現実味を帯びてくるわけだ。

そうなると、加害者はやっと謝罪という手段を実行しようとするわけだが、こうした場合の謝罪は、加害者自身が危機を脱するための手段に過ぎない。

まさに、命乞いをする悪者が後ろ手にナイフや鉄砲をもって、主人公が命乞いに応じて背を向けたら、その刹那に攻撃を仕掛けるといった映画でよくあるシーンに似ている。

だから毎回私は被害者にアドバイスをするのだ。

「容赦してはならない。言葉より行動で判断した方がいい。謝罪したら許すという根拠のない予定調和などは一切従う必要はない。君が思うがまま、その場の雰囲気など無視して判断すればいい」

現実はドラマのようにはいかない。神様がドラマの脚本家のようにハッピーエンドでみんな仲良しに筋書きを描いてくれるわけではないのだ。

法があり、私が当事者ではないから、私自身は加害者に特別な感情は持たない。単に「いじめ行為」というものを追求するのみなのだ。アドバイスは多くの結末を見てきたという経験から発するものであり、選択は全て当事者が行うものだ。

だから、私が原案でシナリオ協力をしている漫画『いじめ探偵』でも、漫画ならば勧善懲悪でもいいじゃないかという視点もあったが、より現実に近い状況を描いてもらいたいとリクエストした。

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加害者の学校や保護者も救いようがない

この場合、あまりに酷いいじめをやったケースに限るとしておくが、だいたいの加害保護者は、加害者自身をそのまま知恵をつけ、人脈を持ち、グレードアップさせて大人にしたような人が多いのだ。

被害保護者の多くは子育てをしている親同士、きっとどこかで分かり合えるところがあると期待して、加害者や学校で話にならないと思ったり、大事にならないように話をつけようとして、加害保護者との面談を求める。しかい、たいていは失敗に終わる。

そうして多くの被害保護者は、「まるで宇宙人と話しているかのようだった。なぜか私の方が悪いのだと思わせられるところだった」と感想を私に言ってくるのだ。

ある加害保護者は、なぜか私にいじめの相談をしてきたが、その内容は、被害者も原因を作っていて、それが問題にならない方がおかしいというものだった。

このいじめは、被害者は女子生徒で、目鼻立ちが整い、一見目立つ外見であったという理由のみで、「援助交際をしている」と悪意の噂を立てられ、加害の男子生徒が「金を払うから性行為をさせてくれ」と持ち掛け、被害者に断られ、怒られると、逆上して、「性行為をした」とうわさを流し、裸の女性の身体と被害女子生徒の顔を張りあせたアイコラ写真を作るほか、校舎内で卑猥な言葉を投げかけるなどをしたもので、いじめというよりはストーカー的であり、犯罪行為も多く含まれるものであった。

加害保護者が言うには、援助交際の噂が立つのは、「火のないところには煙は立たない」ということわざの通り、これを調べないのが異常なのだそうだ。

実際は、単なる嫉妬や被害生徒のSNSの投稿を酷く解釈した悪意の噂であり、加害者が自らの行為が何ら正当性を持つようなことではないのだ。

学校や教育委員会も酷いケースになればなるほど救いようがない。2021年7月22日報道では、川口市いじめ事件で文書の誤りの訂正を求め元生徒側が市を提訴したことがニュースになっている。

この文書とは、公文書のことで、訂正を求めた内容は、「日付や曜日の間違い」「母親の名前の間違い」「音声記録とは全く異なる内容」「存在していない生徒の名前の記載」などである。

もう一度書くが、これは公文書である。

川口市の市条例(川口市個人情報保護条例第10条適正な維持管理)では、「保有個人情報は正確かつ最新のものとすること」「保有個人情報の紛失、破損、改ざん、漏えい等の事故を防止すること」とある。

つまりは、市条例違反でもあるのだ。

さらに、埼玉県教育委員会は、川口市教育委員会に対して再三にわたり訂正するように求めていたという。つまり、県の教育委員会ですら、「もう直して、おかしいから!」と、再三求めていたのだ。

社会的システムや法理が適正に運用されていると信望する人ならば、発狂するほど異常な事態が明らかになっているわけだ。

しかも、被害側が裁判に訴えるということは、訂正されないばかりかこうした事態が起きても違法であっても処分されないという事態が起きているということなのだ。

もはや救いようがないと言わずしてなんと言おうか。

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被害者は一生苦しむ、加害者はどうか

一つ注意してもらいたいのは、私の元に来るいじめの相談は、どの機関に相談してもダメで、とんでもなく酷いケースばかりだということだ。

また、現在は私が代表理事を務めるNPO法人ユース・ガーディアンでの引き受けとなるが、あまりに多くの事案相談があるために、対応事案には一定の条件が設けられている。

そのため、私が直接動いているいじめ問題は、冒頭の小山田氏のいじめ行為のような酷いケースばかりなのだ。

ただ軽微だと言われるようないじめでも、被害を受けたらたいていの被害者はその時の辛さを覚えているし、誰にやられたかを忘れない。

その実、私も小学高学年の頃、親友と呼べた友人が中心となって3人がかりで毎日のように殴られたことがある。ロッカーに押し込められたり、無視されることもあった。

当時の時代背景で、体育館でタイマン(一対一で喧嘩)をして解消されたが、私は未だに彼らのやったことを覚えているし、許したことはない。それ以降、私は被害者や被害を受けそうな友人、不良全盛期の時代だったからこそ、後輩らを集めて、何かされたら一目散に駆け付けていた。母からは毎日怪我が増えるので、ぼろ雑巾のようだと笑われたが、自分の見える範囲で誰かがいじめられるのを子どもながらに止めていた。

さて話を戻そう。

私が対応する被害者全員が、いじめの被害を忘れてはいない。その中の数名は、一般に乗り越えたというところにいると思われるが、時折、LINEやメールで、思い出してしまったという話や夢で見てしまって辛いという相談をしてくる。

数年前に対応した当時小学生だった子は、現在中学生になっているが、一度も登校ができていない。いじめの学校対応があまりに酷かったために、大人への信頼感を喪失してしまっているのだ。だから、一進一退を繰り返しながらも、保護者が中心となって少しづつであるが前に進もうとしている。

私もほとんど参加はできないのだが、オンラインゲームを使って話をしたりしている。最近の進歩と言えば、お兄ちゃんと犬の散歩に出れたことで、スーパーの店員さんに「ありがとう」と言えたことだ。

こうしたいじめの被害者は、いじめの行為自体は犯罪行為と同じ行為を受けているわけだから、犯罪被害者と同等の心の傷を受けているわけだ。また、その一瞬に受けたのではなく、長期間徐々にエスカレートしていき、抵抗の心すら擦り切れて諦めてしまうほど心を強く深く抉られている。

被害者一生苦しむほどの傷を与えられ、少なくとも忘れることはないであろう。

こうした状況に対して「謝っても許されないならば、謝らないことが最適解」という最適解があるそうだが、いかにも浅はかな逆張り炎上目的な意見だと言えるだろう。

ただ、被害者目線で言えば、「謝罪という接点」すら持ちたくないから、自分の気持ちだけで近寄らないでください、関わらないでくださいという最適解もある。

かといって、私の立場で加害者に一生苦しめとはなかなか言えるものではないことは重々承知している。

ただ、今回のオリンピック小山田氏騒動を見る限り、今、加害行為をしている人物に言えることがある。

被害者は一生涯忘れない。あなたを見れば必ず思い出す。そして、誰もが発信できる社会である。小山田氏の場合、過去に何度も同一の件で炎上騒ぎが起きていた。謝罪や自省の機会は何度かあったかもしれない。あの誌面が事実であれば、許してもらえるなどあまりに甘い考えであることは明白だが。

ただ、今いじめをしている行為者は、今であれば引き返せるかもしれない。

今すぐいじめを止め、心の底から謝ることができるなら、謝罪をして二度といじめをしないでほしい。被害者が関りを持ちたくないというならば、そっとその場を立ち去るといい。

そして、今いじめで悩んでいる子へ、一連の問題から言えることは、あなたの味方は圧倒的に多いということだ。声を上げれば必ず味方はいる。いじめは加害者の行為であり、行為の選択をしたのは加害者自身である。つまり、原因は加害者自身であって、被害者ではない。被害者は何も悪くはないのだ。

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編集後記

オリンピックが始まりましたね。どうなってしまうんでしょうか。

選手村の問題、バブル方式の穴なども指摘されていて、東京都内は新型コロナの感染者数が急増しています。無観客のはずが、交通規制もあって、ただでさえ渋滞が多いのに、道路状況は大変な状態です。今回、小山田氏の件のあと、また辞任騒ぎがありました。思うに、こうした人選のスクリーニングはやっているのでしょうか。一部からは五輪特権人脈での選任とも言われていますね。仮にそうでないとしても、ある意味日本の顔とも言えるべき人選という意味で、これほど容易に問題が出てきてしまう人を選んでしまったということは、スクリーニングはしていないか全く機能していないのではないかと思えてしまいます。

そういえば、渡辺直美さんに豚の格好させるというかいう案を出した人が辞めたというのもありましたね。あのとき、内部の情報がこうも漏れては忌憚のない会議ができないとかいう意見も出ましたが、それってまるで内部告発者を追いやって黙らせて息の根を止めようとするブラック企業みたいだと思ったのは私だけでしょうか。

コカ・コーラ社以外の製品はラベルを外すとか、持ち込めないという問題もありましたし、一体何のために、我々はリスクを背負い、押し付けられた協力を続けなければならないのか複雑な思いが生じてしまいますね。

あるお役人さんとテレビの方と会話していて、こういわれました。「どうせ日本人はオリンピックが始まれば、そっちに夢中になるのさ」と。

確かに、ニュースはそういう話題ばかりになるでしょう。私だって、サッカーとか結果を見ますし、必死で今与えられた場で頑張るアスリートの姿は良いものです。

一応、立場の弱い私はこう言っておきました。

「きっと見るよ。金メダルとか盛り上がると思う。けどね。今やっていることは、かなり多くの人が忘れないと思うな。騒動からのモヤモヤはずっと残るし、命の問題になっていたら、そう思うようにならないと思うよ」

立場上、コノヤローとは言えないので、その場でできる最大の言葉を返したのですが、「だよね…」となってました。

だよね…そんな都合よくいかないよな。もうみんな我慢の限界だもんな。

スカッとさわやかとはいかないようですね。

小山田氏の辞任は当然の結果だと思います。ただ、多くの加害者思うように、辞任は責任の終結ではなく終わりではありません。仮にこれを禊ぎとするのであれば、それは始まりに過ぎないのです。そして、汚点は記録もされてますし記憶もされています。

例えば数年後、もうあの時辞任したんだから責任は果たしたじゃないかーとやったら、やっぱこいつ反省してないわ…と言われるのがオチですね。

多分加害者目線の限界がこの辺りなのではないかと思います。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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