五輪を開く資格なし。小山田問題が決定づけた組織委の無能と無責任

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7月19日、最悪の形で五輪開会式の楽曲担当を退いた小山田圭吾氏ですが、その人選を巡っては組織委の武藤事務総長が「我々が1人1人選んだわけではない」と発言するなど、首を傾げざるを得ない対応を見せています。このような無責任さが五輪を巡るさまざまな問題の根にあるとするのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、「開催サイドの人達が五輪の意義を理解していない」と強く批判。さらにオリンピック憲章の「オリンピズムの根本原則」に反する問題ばかりが噴出する事態を重く見るとともに、この国に五輪を開催する資格などないのではとの疑問を記しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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「オリンピック憲章」はどこに?

情けない。本当に情けない。ひたすら情けない。なんでこんなにも日本のリーダーたちは情けないのか…。

東京五輪の開会式で楽曲を担当した小山田圭吾氏が、一昨日、辞任を申し出たと自身のTwitterで明かしました。この問題は、組織委員会が14日に、開会式の楽曲メンバー4人を発表した際、小山田氏が含まれていたことで、SNS上で過去の発言が相次いで投稿され、批判が殺到したことが発端だったのはご承知の通りです。その“発言”を私も読みましたが、「不適切」というレベルをはるかに超えていて、「昔のことだから」という類のものではなかった。

なのに、組織委は16日に「不適切な発言」とした上で、謝罪文を出した小山田氏を続投させる意向を示した。おまけに、武藤敏郎事務総長に至っては、「現時点で反省をして倫理観を持って行動したいと言っている。(開会式直前の)このタイミングなので、彼には支えていただきたい」と発言したのです。

なのに、なのに、です。なんと昨日(20日)、武藤事務総長は、IOCの総会出席後にメーンプレスセンターで会見し、「自分たちが選んだんじゃない」と“言い訳”する有様です。

「(女性タレントの容姿侮辱問題で辞任した前総合統括の佐々木宏氏の後任チームが)間に合わない中で、そのグループが全体の計画に必要な人々、仲間を誘って、形成されていった」「我々が1人1人任命したのではない。仲間、気心知れた人たちでやれないと進まない。作られた全体のグループをそのまま任命した。我々に任命責任があるのは間違いないが、我々が1人1人選んだわけではない」と、強調したのです。

…一体何なのでしょう、このたわごとは。問題となった小山田氏の“発言”は、1990年代のものです。学校の“いじめ”で命を絶つ子供が相次ぎ、“いじめ”が社会問題化した1990年代に、「自分の名前」で仕事をしていた「いい大人」が公共のメディアで語った言葉です。

当時、問題にならなかったのが不思議なくらい非道な発言で、ましてや「今」の社会の動きを鑑みれば、「昔のことだから~」だの「過去のことだから~」などという意味不明の論理で庇うとは無神経としか言いようがありません。むしろ、組織委員会の方から「やめてください」と小山田氏に頭を下げるべき問題だったのではないでしょうか。

任命責任があるということは、やめてもらう責任も果たさなきゃいけないのに、この「無責任さ」が五輪開催に至るまでに起きた様々な問題の根っこにある。

時間がなかった、気心が知れた人たちだった、という言い訳をして、責任逃れしてるだけ。奇しくも橋本聖子会長は、「責任は私にある。お詫びしなければいけない」と謝罪しましたが、「なんで今?」なのか?

「女性の会議は長い発言」と「女性の容姿侮辱演出」で、世界中からバッシング浴びたのに、また、繰り返すとは、本当に情けない。一体誰が、何の判断をしてるかが曖昧だし、五輪五輪と言うけれど、実行部隊の人達が「五輪の意義」を理解していないのです。

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