先日掲載の「最低10年続けられるか。話題のDX推進のために必要な経営者の覚悟」では「経営改革こそがDXの本質」と説いた、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さん。アメリカに本社を置く世界的なコンサルティング会社で14年間もの勤務経験を持つ赤羽さんは、自身のメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』で今回、「経営改革」を進める上で重要な「7つの鍵」について詳しく解説するとともに、その各々についての解錠のヒントをレクチャーしています。
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※本記事は有料メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』2021年7月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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赤羽雄二の視点:今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か、何を知っておくべきか その2
先週は、時価総額で世界的な企業と圧倒的な差をつけられた日本企業の危機的状況と、DXへの誤解、間違った期待についてお話ししました。その上で、DXの本質とは、「経営者主導の事業構造改革」であることをご説明しました。
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今週はこの「経営者主導の事業構造改革」、すなわち「経営改革」について重要なポイントを解説するとともに、GAFAをひとくくりにせずどう分けてみるべきかお話しします。その上で、DXの重要な可能性の1つ、ハイパーアウェアネスの活用方法についてご理解いただき、読者の皆さんにヒントをご提供できればと考えています。
経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること
経営改革を進めるには、1つのドアに7つの鍵がかかっている状況を思い浮かべると、イメージをつかみやすいと思います。7つの鍵を全部同時に開けて、初めてドアは開きます。
こんな感じです。真っ暗の部屋に閉じ込められ、ドアを開けようとしても動かない。鍵がかかっていたので、鍵束から合う鍵を探し、苦労の末やっと鍵穴に合うのが見つかったので、ガチャっと回します。それでドアが開くかと思ったら、うんともすんとも言わない。おかしいなと思って、真っ暗の中で上のほうとか下のほうを触ってみると、どうももう1つ鍵穴がある様子。また鍵束から合う鍵を探し、苦労の末やっと鍵穴に合うのを見つけて、ガチャッと回します。今度こそドアが開くと思ったら、まだ、うんともすんとも言わない。
もしあきらめずにこれを繰り返し、7つの鍵を同時に開けることができたとき初めて、ドアを開くことができる、こう理解しておくと、経営改革の大変さがよくわかります。
当然ながら、こういった経営改革は経営者の本気のコミットメントが不可欠で、しかも5~7年はゆうにかかると思ってください。これまでの10年から数十年の習慣、慣性を大きく変えていく必要がありますので、簡単にいくものではないのです。
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経営改革を進める「7つの鍵」
経営改革を進める「7つの鍵」について、かいつまんでご説明します。詳しくはこちら(「経営改革を進める『7つの鍵』とは?」)をご覧ください。
第1の鍵:ビジョンと戦略の変更、全社員への浸透
経営改革を進めるには、現実を直視し、顧客、自社、競合の最新状況を踏まえて、会社のビジョンと戦略を考え直すことが出発点になります。
第2の鍵:既存事業の抜本的改善-詳細なアクションプランと厳しい進捗管理
ビジョンと戦略を変更したら、それに合わせて既存事業をゼロベースで見直しましょう。過去の成功にとらわれず、最速で立て直すためには、新しい方針をブレークダウンした詳細なアクションプランを立案する必要があります。
第3の鍵:複数の新規事業立ち上げ-リーンスタートアップ
既存事業の立て直しを全力で進めるものの、それだけでは延命が進むだけで、新たな収益源は見えて来ないでしょう。したがって、新しい時代に向かって新規事業を立ち上げていくことがどうしても必要になります。その場合、有効なのがリーンスタートアップのアプローチです。
第4の鍵:高度な経営支援能力の構築-経営改革推進チームの設置と実践トレーニング
既存事業の立て直しや複数のリーンスタートアッププロジェクトを推進するためには、高度な支援能力を持つ経営改革推進チームを設置し、あらゆる問題点を解決していく必要があります。
第5の鍵:幹部人材の把握と業績・成長目標の設定、成長への取り組み-人材開発委員会
経営改革に際しては、最初に社内の人材把握を行い、成長加速プログラムに合意することが必要です。
第6の鍵:部下育成への意識づけとノウハウ共有-上司・部下の意識・行動改革
直属上司が部下に与える影響は大変大きく、上司によって部下は育ちもするし、苦しみもします。経営改革に際しては、会社の新方針・新しい経営のあり方を社長から下におろしていくため、上司が部下にどのように伝え、どういうメッセージを言葉や態度で発するかが非常に重要です。
第7の鍵:コミュニケーション改善-ポジティブフィードバック、アクティブリスニング徹底
最後の鍵は、コミュニケーション改善です。日本の会社の文化なのか、人をほめると損だと思ってでもいるかのように、部下をほめません。部下を叱ってなんぼ、と思っている人もいるほどです。この点は根本から見直す必要があります。
これらの1つか2つだけ取り組む経営者は多いと思いますが、それでは全く足りない、動かしようがない、というのが私のポイントです。しかも取り組んでいる1つか2つに関しても、十分でないことがよく見られます。
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GAFAはGFとAとAに分けてみるべき
GAFAとひとくちにいいますが、実際はひとまとめ、一緒くたに話すのではなく、3つに分けてみたほうが自社への影響度もヒントも理解しやすくなります。
まずは「インターネット上のプラットフォーム」で、インターネット上でサービスが完結しているものです。Google、Facebookがこれに当たります。
次に、「インターネット上のプラットフォーム+ロジスティクス(物、物の流れ)」で、インターネット上でサービスは完結せず、物をどう動かすかも鍵になっていきます。Amazonがまさにこれですが、GAFA以外でいえば、Uber、AirBnBなどもこれに当たります。
3番目には、「インターネット上のプラットフォーム+ハードウェア」で、Appleがこれに当たります。
こうやって3つに分けて、問題の切り分けをする必要があります。それぞれで何は脅威か、どういった点は活用できるか、何を学べるかですね。DX成功企業の脅威から目をそらさず、学べるものはすべて学びとろうという姿勢が必要な時代になりました。
ハイパーアウェアネス
営業マンが1,000人いる、コンビニのように全国で数万人が勤務している、という場合、従業員の声をリアルタイムで吸い上げる仕組みがほとんどありません。これについては、『対デジタル・ディスラプター戦略』(日本経済新聞出版刊)で紹介されている考え方が大変参考になります。DXについての本質的な考え方をする上で刺激になりますので、ぜひご覧いただければと思います。
具体的には、営業マンが顧客訪問をした直後に感想・発見を1、2分でスマートフォンに吹き込みます。それを自動的に文字起こしし、重要なサマリーのみ、適切な形で、リアルタイムで経営陣に共有するというやり方です。
そうすれば、上司への忖度なしに現場の第一線の声を吸い上げることができますし、何より、全員の目・耳を活かした膨大な情報からのエッセンスが拾えます。日報・週報を書く手間も全くなく、いいことずくめです。
顧客に最も近い場所にいる従業員全員を「人間センサー」として情報を得る、という考え方です。経営陣がくだした決定を実行しているのは従業員であり、彼らは顧客が何を好み、何に不満を抱いているかも知っています。戦略がうまく機能していなければ、そのことについても気づいています。
言い換えれば、従業員とは会社が給料を払っている数千、数万の「人間センサー」であり、それに気づいていなかったり、あえてそれを無視したりしている企業は、情報に基づく意思決定も、迅速で効果的な実行もできないと考えるべきだという主張で、私は大いに刺激を受けました。(続く)
(メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』2021年7月19日号より一部抜粋。全文はメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』を購読するとお読みいただけます)
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