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Japanese food ingredient, Udon noodles on wooden plate

大阪のプレハブ小屋みたいな立ち食いそば屋、なぜ客足が途切れないのか?

厳しい経営状況でありながらも値上げをしない、1杯170円という破格の値段の立ち食い屋さんがあります。開店と同時に客足が途切れないという人気の秘密は、値段以外にもありました。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、「愛される店」を作り上げているその戦略について語っています。

毎年、年越そばを食べに来る客がいる、1杯170円の立ち食い屋さん

大阪・新世界。シンボルである通天閣の真下に、その立ち食いそば・うどん屋さんはあります。

かけそば・かけうどん、1杯170円。立ち食いとは言え、このご時世にこの価格でやっていけるのでしょうか。

お店は、プレハブのような簡素な造り。時代の流れとともに傷んできた外観は、手を加えていないであろうことはわかります。手描きらしき絵看板は、一部が剥がれたまま放置されています。

「三吉(さんきち)うどん」。

51年前に創業したこのお店を、いまは2代目が継いでいます。創業者である先代が夫婦で始め、先代が亡くなった後、息子が継ぐことになりました。

運送業からの転職ということもあり、何もわからず、手探りで始めたそうです。母親にも教えてもらい、なんとかやっていけるように。息子の代も夫婦で切り盛りしています。

朝5時半から、ご主人ひとりで仕込みを始め、奥さんの出勤後、朝9時には開店。開店と同時に、お客さまが入ります。お客さまの8、9割は常連さん。近くに住む人、働く人が、入れ替わり立ち替わりやって来るのです。

なぜ、それほどの人気があるのでしょうか。

まずは、安さ。かけそば・かけうどん、1杯170円。この価格は、先代から続いています。その安さの理由は、先代の思いを2代目が守ろうとしているからです。

先代曰く、「立って食べてもらうのに、そんなに高くはできん」。この言葉は、非常に重いのではないでしょうか。

お客さまを思う気持ち。まさに、「おもてなし」なのです。狭いお店で、立って食べてもらうのだから、せめて気軽に食べられる価格にしようという、心意気なのです。

いまは、立ち食いと言えど、お洒落なインテリアで、「新しい食のスタイル」を気取っているお店も多くあります。そんな時代に、古びたお店だけど、常連さんに守られている、懐かしき立ち食い屋さん。

常連さんが多いのは、もちろん、その美味しさに惹かれているからでもあります。このお店は、大阪らしく、だしがよく効いたつゆが自慢です。麺は、大阪人が好む、やわらかめ。そば・うどんのすべてに、とろろ昆布が入っていて、味を引き締めているようです。

かけそば・かけうどんは170円ですが、月見そば・うどんは210円。たぬき(きつね)そば・きつねうどんは220円。天ぷらそば・うどんは280円。天ぷらときつね、生玉子入りのデラックスでも370円という安さ。

油や小麦粉が値上がりしても、価格据え置きで頑張っています。先代である父親の意志を受け継いで、安くて旨いそば・うどんを提供し続けているのです。

そんな店主を慕い、毎年、年越しそばを食べに来る家族連れもいます。小さな女の子と両親。仲良く食べて、笑顔で帰っていくのです。

厳しい経営状況でありながらも、お店を愛してくれるお客さまのために、安くて美味しいそば・うどんを作り続けています。

これからもずっと残って欲しいお店です。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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