サムスン電子の御曹司を抜いて「韓国一の富豪」となった男の素顔

 

今年2月には、全財産の半分を寄付したことを明らかにしたが、これも金範洙氏の哲学が色濃く表れたものと見れよう。自分が貧しさの中で苦しんできただけに、寄付によって社会問題の解決に少しでも貢献したいという意志の表れだったわけだ。金範洙氏は当時、「貧富の格差で苦労の多いこの世を建て直すべく努力し、病気で苦しむ人々を助ける人々に対する支援を惜しまない計画を持っている」と明らかにしている。

金範洙氏は、親からの財産を譲り受けることなく自らの力で最高の企業を築き上げた。彼は1992年、三星SDSの三星データシステムに入社したが、1998年、スタークラフトのブームを目にし、起業を決心した。漢陽(ハンヤン)大学前に「ミッションナンバーワン」という名のインターネットカフェをオープンした後、1998年11月にハンゲームを創業することになる。2000年には、三星入社同期だった現在ネイバーのCEOである李海珍(イ・へジン)氏とハンゲームを共同運営する。ハンゲームは囲碁やテトリスなどのウェブボードゲームの人気を基に急成長を遂げるものの、金範洙氏は2007年8月、代表職を辞め、忽然と米国に向け出発する。家族と多くの時間を一緒に過ごすことができなかった申し訳ない気持ちのためだった。

スマートフォン時代の幕開けを受け、金範洙氏はカカオトークと共に戻ってきた。無料メッセージ送信で大人気を博したカカオトークは、発表から4年後、2013年には加入者が1億人を突破するほどの大人気を博している。以後、国内2位のポータルサイトのダウム(Daum)と合併、カカオバンク、カカオタクシーなどを発売するなど、成長に成長を重ねる成長神話を作り上げている。

金範洙氏は代表を辞めるおり、社員らに電子メールを送ったのだが、そこには、「船は港に停泊している時が最も安全だ。しかし、それが船の存在理由ではない」という言葉を残し話題になった。常に挑戦をやめない精神が、金範洙氏を大韓民国最高の富豪の座に押し上げたことは間違いない事実だろう。

(無料メルマガ『キムチパワー』2021年8月2日号)

image by: Sharaf Maksumov / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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