全てが想定外。米国情報筋が漏らしたアフガン撤退“大混乱”の舞台裏

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アフガニスタンからの米軍撤退期限を今月末までとしていたものの、予想を遥かに上回る大混乱を受けその延長に言及したバイデン大統領。世界一の軍事大国らしからぬこのような「惨状」を招いた原因は、一体どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、主たる要因をアメリカが抱く「軍事力で世界は思い通りになるという妄想」であると断言。その上で、米国の存在そのものが大迷惑になりつつあるとの厳しい意見を記しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年8月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

アフガン戦争を上手に終わらせることもできない米国のお粗末/その背景には米国社会のクレージー体質の根深さがある

バイデン米大統領は8月18日、米ABCニュースのインタビューで、8月末としていたアフガニスタン駐留米軍の撤収期限を延長する可能性を示唆した。アフガンに滞在する米国民全員を退避させるには「1日に5,000~7,000人を輸送しなければならない」と説明した。

1日に5,000人として8月19日から月末までの12日間に計6万人、1日に,7000人として8万4,000人の「米国民」が救出を待っているというのは本当なのか。そうだとすれば、その人たちの安全を確保した上での退避計画を立てていなかったというのはビックリ仰天だし、それ以上に、米国民以外のアフガン人の対米協力者――米軍軍属、通訳、大使館スタッフ、米系メディアのスタッフ、運転手等々の恐らく数万~数十万人がタリバンによって報復を受ける危険性についてほとんど何も考えていなかったというのは、信じられない程の間抜けさである。

どうしてこんなことになるのか米情報中枢に近い筋に当たると、「お恥ずかしいとしか言いようがない。米政府も現地機関も、米軍が撤退を開始しても、アフガン政府と軍が少なくとも数カ月は踏ん張って、同政府とタリバンの間で和解政権を作る協議が始まるものと信じていた。ところが、アフガン政府のガニ大統領はたちまち夜逃げしてしまい、米国が多額を注いだ同国軍もアッという間に消滅した。すべてが想定外」と自らの見通しの余りの甘さに呆然としている有様なのである。

ベトナム戦争の終末では、米軍兵士、大使館員等々を退避させた後、13万人と言われたベトナム人対米協力者の救出を行なった。が、それでも米国は責任を果たしたとは言えず、その後「ボートピープル」という形で100万人を超えるベトナム人が命がけで祖国を脱出してその8割は米国に亡命したのだった。軽度認知障害にあるバイデンがこのようなベトナム戦争終結の際の「撤退」の難しさを知らなかったのは仕方がないとして、国務・国防両省やCIAが全くの役立たずだったのは一体どうしたことなのか。

「戦争国家」アメリカが、戦争を始めることはできても止めることができず、すべてを放ったらかして逃げ出す無様な姿を晒しているのである。

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