アフガン撤退は狂気の沙汰。逃げ出したバイデン大統領と米国の迷走

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8月末のアフガニスタンからの米軍完全撤退を待たずして、首都カブール制圧に成功した反政府勢力タリバン。アメリカが後押ししてきた現政権は崩壊し、アフガン国民は再びタリバンの恐怖政治の元での生活を強いられることになるわけですが、バイデン大統領の米軍撤退という決断は適切だったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、バイデン大統領を「視野狭窄」と一刀両断。怒りに任せてアフガンを侵攻しその国体を破壊した上で、再建の目処も立てることなく出てゆくという米国の無責任さを強く批判しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年8月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

米バイデン政権の“命取り”になるか? アフガニスタン撤退/コロナ禍再燃/議会工作不調/プラス認知症疑惑も……

米政府は8月12日に、アフガニスタンの首都カブールに3,000人の海兵隊を派遣し、以前から駐留している650人の兵員と合わせて今月末までの米大使館職員らの撤収の安全確保に当たらせることにした。が、その2日後の14日にはさらに1,000人を追加投入すると発表。イスラム原理主義武装集団=タリバンが12日から13日にかけ、同国第3の都市ヘラートと第2の都市カンダハルを陥落させ、たちまち首都に迫る勢いであることに慌てふためいた措置である。

大使館員には、機密書類や星条旗を焼却せよとの指示も出ているというから、46年前の4月30日のベトナム戦争終結の日、サイゴン(現ホーチミン)市の米大使館から兵隊も職員も逃げ遅れた民間人や対米協力者だったベトナム人も、我先にと軍用ヘリにしがみついて脱出した時と同様のパニック状態が始まっていると見て差し支えない。

それで最後まで残留した米国人の命は損なわれずに済むかもしれないが、そうやって米国が何もかも放ったらかしにして出て行った後のアフガニスタンは、2001年10月7日の米軍による侵攻開始以前と同様のタリバンの天下に戻るだけのことで、それによってアフガン国民の安全、周辺地域の安定、国際的なテロとの戦いの前進の上で何が起こるか分からない。

いいことが起きる兆候は何もなく、それどころか、昔と同じく全土の9割を支配するパシュトゥン族のタリバン、米国の傀儡であるガニ大統領の貧弱な政府と軍隊、反タリバンの北部同盟など他の軍閥――の3者対立構図が何も変わらないままでは、たちまちタリバンがカブールを制圧して政府が崩壊し、北部同盟などが地方で抵抗を続けるという姿になることは目に見えている。とすると、「20年の年月、1兆ドルの戦費、2万3,170人の米兵死傷者を費やした戦争を終わらせた」ことを来年の米中間選挙に向けてレガシーとして宣伝したかったバイデンの打算は、とんでもなく甘いものだったということになる。

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