大事な会議で意見を求められたとき、どうやって答えたら印象に残ることができるのか、ビジネスマンであれば常日頃から気になっていることではないでしょうか。そんな回答法の「大原則」を教えてくれるのが、メルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』の著者で、iU情報経営イノベーション専門職大学教授の久米信行さん。久米さんは同大学で「ビジネスフィールドリサーチ」の授業レポートを生徒たちに提出させた際に、「頭がよく見える」回答法の3大原則について考察し、その内容をメルマガ内で特別に公開しています。
頭のよくなる(よく見える)3+3の回答原則
みなさんは報告者やレポートを書くのは得意ですか? 会議で発言を求められた時に工夫をしていますか?
先週は、iU情報経営イノベーション専門職大学の教え子たちの採点にいそしみました。
特に採点が大変なのは、ビジネスフィールドリサーチ= 企業経営の様々な問題解決を考えるケーススタディの授業レポートです。
この授業では、実際にあった企業の事例、時には架空のケースを元にして、 「あなたが経営者なら、この経営不振で資金繰りに行き詰ったテニスクラブをどうしますか?」 「あなたが画期的な新商品のブランドマネージャーで、自社の売れ筋商品が売れなくなるので社内の反発があるところ、どうやって売りますか?」 といった個々のケースについて考えてもらいます。そして、 事前にレポートを書いて提出 、 グループワークとクラス発表で考えを深め、 事後の学びもレポート提出してもらうのです。
なぜ、採点が大変かというと、 正解が一つではないからです。マーケティングの4Pとは?4Cとは?といった問題なら、採点は頭を使わずにできるのですが、この授業はそう簡単には行きません。 囲碁や将棋の次の一手と同じく、 様々な角度から検討し、複数の回答ができるからです。
今年から始まった授業なので、試験的にハーバードビジネススクールのケーススタディなどを活用しました。しかし、 ビジネス経験の無い20歳前後の学生には、まだ難しかったかもしれません。
結果として、 名答もあるにせよ、 数々の迷答、珍回答に出くわし、 吟味することになりました。そして、 どんな回答が、グッと私の心をつかむのか、考える良い機会にもなりました。
そこで、今回は、レポートを書く際に、あるいは会議などで発言する際に、どうやって回答したら効果的で印象に残るか 、一緒に考えてみましょう。
大原則1 結論から話す。その後で、理由とデータを挙げる。
私たち日本人は、小学校の頃から、 起承転結や三段論法を習っているせいか、 結論を最後に持ってきがちです。また、 最初に結論を言わないのは、 自分の意見を言わずに、みんなの意見を聞いた上で、同調圧力に屈した方がラクと思っているせいかもしれません。
だからこそ、「賛成」か「反対」か、あるいは「A案」か「B案」か 、 結論からはっきり書かれたり言われたりすると、インパクトが大きいのです。
読者のみなさんの中には、 経営者や部門リーダーもいらっしゃるでしょう。日々 リーダーが求められている決断は、いつもシンプルかつ重いものです。
このまま進むか、それとも撤退するか。
右に舵を切るか、それとも左に舵を切るか。
アクセル・ブレーキ・ハンドルを、 自分自身の決断で操作 しなければならず、それはそれは 孤独な意思決定 なのです。
もしも、 決断に迷い部下に意見を求めた時 に、データや理由を並べては 結論をなかなか言わない部下 と、 最初にはっきり結論を言ってから理由を話す部下 がいたら、 どちらを信頼する でしょうか?
経営者向け勉強会では、 コンサルタントやシンクタンク研究員 に限って、 事前に山ほどデータやグラフを見せて説明をする シーンによく出くわします。そんな時、 せっかちで日々即断を求められている経営者 は、こう叫びたくなるでしょう。
「まずは結論から言ってくれ」
ですから、 レポートにせよ、会議での発言にせよ、次の順番で簡潔明瞭 に回答しましょう。
順番1 結論から 「私は〇〇すべきだと考えます」
→なるべく短く簡潔に
順番2 次に理由を 「その理由は3つあります」
→3つぐらいがちょうどいい。7つを超えると人間は判断できない)
順番3 最後にデータ「その裏付けとなるグラフと図解で説明しましょう」
→データよりグラフ。グラフより図解
どうです。 頭がよく見える? でしょう???
大原則2 本命の結論に絞り、代案で保険をかけない。ただし選択させる戦術はある
学生の発言やレポートを見ると、 1つの結論に絞れない人が多い ことに気づきます。おそらくそれは、 自信の無さのあらわれか 、あるいは 「数打ちゃ当たる」と真剣に考えていないか のどちらかでしょう。
もちろん、 考えを深めるために、3つぐらいのプランを検討する ことは大切です。しかし、 最後は必ず1つの案に絞るべき です。 結論を1つにしぼるため には、列挙した 各プランを、コスト、実現性、納期、競合など、重視すべき項目で比較する検討表 を作れば良いでしょう。
そこで吟味して出した 最終的な結論 を、上記の 1結論→2理由→3データという鉄板フロー に合わせて、 レポートや発言メモを作ります。
もしも、相手が、 代案について質問したいタイプ 、あるいは 自分で選択したいタイプ であれば、 最後の最後に、比較検討表を付記して見せれば良い でしょう。
「最後に、この結論に至るまでに検討した3つの案のメリット・デメリットを比較検討した表をお見せします」
ここまでやれば、 もっと頭がよく見える? でしょう???
大原則3 データや事例で水増ししない。贅肉を落とした骨子だけで、あとは引用リンク。
学生たちには、 最終レポートは〇〇〇文字以上で書くように制限 を設けました。 数行だけで済ませるような、横着者 が出てくるのではないかと 危惧 したからです。すると、今度は予想通り、 得意のコピペを駆使して、結論とは直接関係の無い、ケースの事例やデータで水増し する学生が増えました。
実は、 コンサルタントやシンクタンクのレポートにもこうした傾向 が見られます。もちろん、コロナ禍で知られるようになった 「エビデンス(証拠や科学的根拠)」 が重要であることは間違いありません。しかし、ビジネスの世界では、 エビデンスの詳細を知るよりも、その結果、何をすべきかの方が大切 です。
ですから、この結論に至る 根拠となるデータや文献は、エッセンスだけ引用 し、 詳細はリンクを紹介するだけでも良い のです(その資料をしっかり読んだというアリバイ?にもなります)。
即ち、 こんなにたくさん調べたんだぞ自慢=実はコピペ は、学生のレポートや卒論ならともかく、 ビジネスの実戦では不要 なのです。むしろ、 経営者やリーダーには、要点だけを短く伝える方が喜ばれる のです。
「今回の結論に至った最たる理由は〇〇ですが、根拠となるデータは、私たちの業界で信頼されている〇〇学会●●先生の最新論文から引用しました。」
「それ以外にも、異業種での取り組みですが、□□研究所が紹介する△△社の事例が参考になると考え、要約を添えました。詳しくはリンクを張りましたので後ほどご高覧ください。」
こうして、 簡潔明瞭なレポートに、異業種の要約や資料リンクまでさりげなく張られていたら 、大量のデータを見せられて長い説明を受けるより、 上司も喜ぶ はずです。
いかに要約しリンクするかで、 さらに頭がよく見える でしょう???
最後に応用技を3つ……(この続きはご登録の上お楽しみください。メルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』は初月無料です)
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