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コロナ婚活の闇。彼との「デキ婚」直前に女性が失った貯金、仕事、小さな命

コロナ禍で将来の不安がつのる昨今ですが、こうした状況下で「結婚したい」と考えている男女は増えているそうです。「婚活」で運良く相手が見つかったものの、「デキちゃった婚」には注意しなければならないと警告するのは、無料メルマガ『10年後に後悔しない最強の離婚交渉術』の発行者で、開業から16年で相談2万件の実績を誇る行政書士の露木幸彦さん。今回、露木さんは同棲中の彼と「デキ婚」する直前に、彼のギャンブル癖やお金の使い込みが発覚し、貯金も仕事も「新しい命」も失ったという、ある女性の実話を紹介しています。

喧嘩別れで「中絶」を決意。正社員の仕事も貯金も失った38歳女性の悲劇

「婚活」が十分に浸透し、世間に認知され、隅々まで広がったのは2009年(ユーキャン新語・流行語大賞にノミネート)。あれから12年……現在は何も行動しなければ未婚のまま、「活動」していなければ結婚できない社会に移行しつつあります。生涯未婚率は男性が23%、女性が14%(2015年の国勢調査)。そして平均初婚年齢は男性が31歳、女性が29歳にまで達しています(2014年、厚生労働省の人口動態統計)。残念ながら、待っているだけでは「白馬の王子様」は現れないのが現実なのです。

そのため、彼氏に告白され、求婚され、そして妊娠することに成功した女性は、一見すると「勝ち組」のように見えるのですが、本当にそうなのでしょうか?

人生には常に「地雷」が埋まっています。その中でも特に悲惨なものは「デキちゃった婚」です。何事もなく出産に漕ぎつけることができれば良いのですが、途中で仲たがいし、関係がこじれて、もし別れることになったら……。その後の人生は「二択」ですが、どちらにしても大変です。子どもを産むにしろ、堕ろすにしろ、その女性の人生は大きく狂ってしまいます。厚生労働省によると、2020年に中絶手術を受けた女性のうち、全体の8%は「コロナが理由」だということが分かりました。

今回の相談者・高田美玲さん(仮名、39歳)も、婚活の失敗で人生を棒に振った1人です。お腹の子ども、正社員の仕事、そして50万円の貯金を失ってしまったのですが、いったい彼女に何があったのでしょうか? 

彼女が筆者の事務所を訪れたのは昨年10月。駅から事務所までは徒歩15分程ですが、彼女はタクシーを使ってきました。なぜなら、美玲さんは「できちゃった婚」で身重な自分の体を気づかったからです。

すでに会社を寿退社しており、3カ月後に結婚式、新婚旅行を控えていました。しかし、「結婚相手と別れる決心をした」と言います。

「同棲を始めてから状況は一変。彼は無断で家を出て、夜遅くまで帰ってこない日が続きました。毎日パチンコに行っているようです」

美玲さんはそう振り返りますが、彼にそのことを注意すると「ふざけるな」「怒るぞ」「俺の勝手だ」と逆ギレ。しかし、この程度の痴話ゲンカだけで離婚を決断するでしょうか? 美玲さんには「彼と仲直りできない事情」がありました。

「私が一番ショックだったのは、彼にお金を勝手に使われたことです。50万円ですが、出産のために私が少しずつ貯めていたお金でした」

美玲さんは悔し涙を浮かべますが、彼は「お腹の子は本当に俺の子供なのか!?」と一蹴。これで気持ちがプツンと切れてしまった様です。 

「もう、こんな人とは将来を考えられないと思い、私の方から別れを切り出しました。彼も『実はお前のことそんなに好きじゃなかった』とあっさり受け入れました」

結婚式のキャンセル料も負担。そして選択した「中絶」の手術

美玲さんは彼と縁を切ることを決断したのですが、解決しなければならないのは気持ちの問題だけではありません。まだお金の問題が残っていました。 

例えば、彼女の場合、直前になって結婚式、二次会、新婚旅行を取りやめたので、30万円近いキャンセル料が発生。彼が結婚業者、旅行業者への連絡をせず、また彼が業者からの請求を無視したため、この費用も美玲さんが負担することに。

さらに美玲さんに突きつけられたのは「命の問題」。当時の彼女は妊娠3ヵ月。筆者は「1人で育てていく選択肢もある」とアドバイスしましたが、すでに彼女の気持ちは決まっている様子でした。それから1週間後、彼女は「妊娠」の診察を受けた産婦人科の病院で、今度は「中絶」の手術を受けたのです。やはり、嫌いな男性の子供を産んで育てていく気持ちにはなれなかったようです。

後日、彼女から一通のLINEが届きました。術後は実家に戻り、彼とは連絡をとっていない模様。今も中絶の後遺症に悩み、その影響で1日2、3時間しか眠れない日が続いているといいます。そして食事がとれる日、とれない日が交互にくるとのこと。彼女は12キロも体重を減らし、急激にやせ細りました。まだ仕事には復帰できていません。

LINEの最後には、こう書いてありました。「後から知ったんですが、彼の一家はみんな離婚しているようです。両親のことは知っていましたが、兄弟、従妹、伯父さんまで……なんでもっと早く気付かなかったんでしょう」と。

別れ際に味わった悔しさや失望感。それは今でも、まだ彼女の中で尾を引いているのです。なぜなら、彼女が婚活で失ったものは、もう取り返しがつかないものだからです。彼女が社会人になってから今までに築き上げ、そして今回の結婚で一気に失ったものの一覧です。 

あくまで仮の話ですが、もし美玲さんが出産に踏み切っていたら、どうなっていたのでしょうか?

母子家庭の平均所得はわずか243万円。子どもを抱えているのに生活保護の基準を下回るという地獄絵図です。だからといって子供の父親からの養育費も当てになりません。

現在、養育費をもらっている母子家庭は全体のたった24%ですが、それもそのはず。美玲さんの彼はギャンブル性で金使いが荒く、金銭感覚に問題があります。さらに美玲さんの方から別れを切り出した手前、彼と連絡をとり、養育費の金額を約束させ、毎月きちんと払わせるのは相当難しいでしょう(統計値はどちらも平成28年の全国ひとり親世帯等調査)。

つまり、美玲さんが後先を考えず、彼に内緒でこっそりと出産しても、お先は真っ暗だったのです。  

婚活は「少子化対策」という大義名分があるので、批判の対象になりにくいのが現状です。そのため、一瞬の気の迷いから、すべてを失う危険と隣り合わせであることは意外と知られていません。特にできちゃった婚の場合、産むも地獄、堕ろすも地獄。婚前交渉(結婚する前に肉体関係を持つこと)にはくれぐれもご注意ください。

image by:Shutterstock.com

露木幸彦この著者の記事一覧

行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

注)離婚手続に関する一般的説明や経済的観点から必要な離婚条件に算定を超え、個別事情を踏まえた離婚手続や離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

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