最悪のタイミング。それでもバイデンがアフガン撤退を敢行した真の意図

2021.09.30
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トランプ・バイデン両氏に共通する姿勢

今回の米軍完全撤退によって、バイデン流のアメリカファーストは明らかになった。バイデン大統領はこれまでアメリカファーストを貫いてきたトランプ氏を痛烈に批判し、パリ協定や国連人権理事会への復帰など脱トランプ路線を示してきた。しかし、中国への対抗姿勢に加え今回の完全撤退によって、バイデン大統領にはバイデン流のアメリカファーストがあることが鮮明になった。要は、“米国の国益を第一に守る”、“米国はそれほど余裕はない”、“米国は世界の警察官ではもはやない”という姿勢は両氏とも共有する考えであり、1人で突き進むか、同盟国や友好国と協力するかという手段が違うだけと考えた方がいい。

では、今後バイデン大統領はテロの問題にどう取り組んでいくのか。当然ながら、対テロ戦争は終結させたとしても、米国が安全保障上懸念するイスラム過激派の脅威は残っている。今後タリバンが政権を運営していくことになるが、アフガニスタンにはアルカイダやそれと関係を持つイスラム過激派が存在し、世界各地にはイスラム国を支持する武装勢力が活動している。

20年前のように大規模な軍事力で突っ込んでいくようなことはないが、おそらくバイデン大統領はソマリアやイエメンで実行しているように、ドローンや無人爆撃機によるピンポイント攻撃をアフガニスタンでも続けていくことが予想される。その際にはタリバンとの協力が欠かせなくなるが、地平線の見えない先から攻撃する「オーバー・ザ・ホライズン(Over the horizon)」戦略を重視していくことになるだろう。また、他国との協力を重視するバイデン大統領としては、アルカイダやイスラム国が活動する国々の政府との情報共有や軍事訓練などを強化し、テロの脅威に向き合っていくことになるだろう。

アフガン撤退から感じ取れるバイデン大統領の意図

バイデン大統領の外交安全保障政策において、中国が最大の課題であることに疑いの余地はなく、今後はインド太平洋への関与をいっそう深めることだろう。日米豪印で構成されるクアッド、また、英国やフランス、ドイツなど欧州のインド太平洋への接近が加速化した背景にもバイデン政権の誕生がある。今後はこれら自由や人権など同じ価値を有する国々とタッグを組み、中国に対抗していくことになる。今回のアフガン撤退は、そういうバイデン流のアメリカファーストを中国に強く示す狙いもあったはずだ。今回の米軍完全撤退からは、中国を第一としながらもできる範囲で引き続きテロにも対抗していくという意図が感じられる。

image by: archna nautiyal / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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