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追い詰められた習近平。米英豪のAUKUS設立で世界に広がる中国包囲網

米英豪が突如発表した、「AUKUS」なる三カ国による安全保障のパートナーシップ。習近平政権が猛反発するこの新たなる対中包囲網は、アジアの安全保障にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、考えうる中国の今後の動きを予測・解説。その上で、日本の対応がこの先大きな焦点となってくるとの見立てを記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年9月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】AUKUSに見る豪州のフランス切りの理由と切迫したアジア情勢

EU離脱の英国、AUKUSを影で主導 成果誇示も仏とは険悪に

9月15日、アメリカ、イギリス、オーストラリアが新たな安全保障の枠組みとして「AUKUS」を発表しました。AUKUSとは、オーストラリア、ユナイテッド・キングダム、USAの頭文字をつなげたものです。

つまり、インド太平洋地域の安定・安全を維持するための防衛協力体制です。そして注目が集まったのは、オーストラリアがフランスと結んでいた12隻の潜水艦建造の契約を破棄し、英米の協力のもとで原子力潜水艦を建造することが発表されたことでした。

これに対して、500億豪ドル(約4兆円)もの契約を反故にされたフランスはカンカンで、アメリカとオーストラリアに駐在している大使を召還する事態にまで発展しています。とはいえ、フランス側も建造の期日をどんどん延ばし、オーストラリア国内で現地生産するという約束も進んでおらず、また建造費も当初の4兆円規模から7兆円にまで引き上げていることで、オーストラリアの不信を招いたようです。

フランスとの契約は2016年に行われました。このときの入札には、日本も防衛省や三菱重工、川崎重工の官民連合で挑みましたが、フランスに敗れたことは記憶に新しいと思います。

豪潜水艦の共同開発相手は仏に軍配、日本敗れる

契約では、フランスは2030~2050年までに12隻の潜水艦を建造する予定でしたが遅々として進まず、中国との対立が激化しているオーストラリアとしては、建造が遅れることへの危機感を募らせていたわけです。やはりインド太平洋地域に属するオーストラリアと、フランスとでは、中国に対する危機意識の度合いも違うのでしょう。

フランスとAUKUSとの問題で思い起こされるのは、台湾の台北~高雄(左営)までの高鉄(新幹線)建設のときのことです。李登輝総統時代にフランス高速鉄道が落札しましたが、ゴミ箱すらも価格が高く、おまけに工期も約束と異なりかなり遅れたために、李登輝総統も我慢の限界となり、日本の新幹線技術を起用することになったのです。

やはり工期厳守や技術の確かさは日本のほうが上です。オーストラリアも日本の潜水艦技術を導入していれば、フランスとの関係悪化も招かなかったでしょう。

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もっとも、今回の決定で重要なのは、オーストラリアに米英の技術協力によって原子力潜水艦が導入されるということです。フランスとの契約では建造するのは通常動力型でしたから、大きな飛躍です。

現在、原子力潜水艦を保有している国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インドの6カ国に限られていますが、オーストラリアは7番目の原潜保有国となる可能性があるわけです。アメリカの対中戦略としても、地域における安全保障の点でオーストラリアの原潜が加われば、アメリカの負担を減らすことができますので、メリットが大きいと言えるでしょう。

もちろん台湾でも、このAUKUSについてのニュースは非常に大きな関心を集めています。先日の自由時報では、オーストラリアのダットン国防相が台湾をめぐる中国との軍事衝突の可能性について「過小評価すべきではない」と発言し、地域の同盟国と協力して平和維持に務めるとしたことや、オーストラリアのフィナンシャル・タイムズが「オーストラリアは台湾海峡での戦争に備えなければならない」という社説を掲載したことなどを報じていました。

自由廣場》台澳兩國有安全合作戰略空間

AUKUSについては、言うまでもなく中国は猛反発していますが、マレーシアやインドネシアは地域の軍拡競争を激化させるとして、懸念を表明、フィリピンは地域のバランスを回復・維持させるとして評価するなど、国によって反応はまちまちです。

日本にとってはプラスであり、原潜を保有するようになったオーストラリアとの連携はもちろん、いずれ日本の原潜保有につながる可能性があるのではないかと思います。また、先日、中国がTPP加入を正式申請しましたが、オーストラリアは加入交渉に応じない立場を貫いており、オーストラリアとのタッグは日本にとってもますます重要になってくると思われます。

豪、中国TPP加入交渉に応じない立場示唆

なお、米英豪から外されて激怒しているフランスですが、当然のことながら、中国はフランスに近づいてくるはずです。これまでも中国は、ドイツとフランスに接近し、欧米の中国包囲網を切り崩そうとしてきました。

一方でフランスは、台湾の国際機関参加を支持する決議案を上院で圧倒的多数で可決したり、台湾と兵器取引契約を結ぶなどで、中国から強い反発も受けてきました。

仏上院、台湾支持の決議案を反対ゼロで可決 外交部「心から感謝」
台湾との兵器販売契約を破棄せよ、中国がフランスに要求

そのフランス上院議員団が、10月上旬に台湾を訪問する予定です。これに対して台湾外交部は「熱烈に歓迎する」と表明しました。一方、中国の駐仏大使はフランスの訪台議員団に訪問を断念するように圧力をかけてきたことが判明しています。

フランス上院議員団、10月初旬に台湾訪問 外交部「熱烈に歓迎」

おそらく武器売却や経済的な協力関係などについて話し合われると思いますが、今回のAUKUSが、台湾とフランスの交渉にどのような影響を与えるのかが注目されるところです。

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このように、アジアにおける安全保障問題は急展開しているといっていいでしょう。そこで焦点となるのは、日本の対応です。とくに2022年の北京オリンピック後には、中国のアジア地域での覇権主義路線が強まると見られています。秋には共産党大会もあり、3期目の最高権力者の座を狙う習近平主席としては、何らかの実績を誇示するために、強硬手段に打って出る可能性もあります。

また、先日もお伝えしたように、中国ではいま不動産大手「恒大集団」が経営危機に陥り、社会が不安定化しています。格差も広がり、少子高齢化により十数年後には労働人口がインドのみならずアメリカにも追い越されるとも目されています。

「9・9・6」問題(朝9時から夜9時まで、週6日働いても貧しいまま)といった格差問題も深刻で、「躺平主義」(横たわって何もしない主義)といった無気力主義が社会に広がっています。経済や社会の停滞の元凶になると中国当局は警戒していますが、中国共産党に反抗するわけでもなく、しかし何もしない若者が増えているのです。

それだけに、現在の中国は懸命に「戦狼外交」で他国を恫喝し、国内向けにも富裕層や芸能人たちを吊し上げ「人民の敵」をつくっているわけです。こうした動きに警戒する必要があります。

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