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このまま行けば自民は敗北。岸田首相が総選挙前に今すぐ修正すべき政策

岸田首相がかねてから提唱し、所信表明演説でもその実現を目指す考えを改めて示した「新しい日本型の資本主義」。格差を広げ分断をもたらした新自由主義からの転換を評価する声も多く上がっていますが、具体的にはどのような手法で進められるべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「公と民のバランス」をキーワードにそのプロセスを考察。さらに新しい日本型の資本主義が目指すべき社会を示すとともに、そのために必要な施策の洗い出しを試みています。

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岸田首相が所信表明で発言した「日本型の資本主義」とは何か?

日経平均株価は岸田首相が決まってから8日続落で、12年3ヶ月ぶりの下げになった。菅首相不出馬で上げた分を帳消しにした。この間、2,700円以上も下げた「岸田ショック」である。分配と成長というが、株式市場にとっては、大きな荷重がのしかかってきた。

この大きな荷重は、金融所得への課税強化であり、一律5%の引き上げになる可能性が高いようである。これに反発したように見える。

岸田派の山本衆院議員は、株式譲渡益や配当金など金融所得への課税について、現行の一律20%(所得税15%、住民税5%)から25%程度への引き上げが適当だとした。この発言は岸田首相の意を受けてしたものと思われる。

貯蓄から投資へという掛け声で、一般投資家が増えてきた。この人たちへの裏切りである。課税率が少なくなる所得1億円以上の所得のある人たちへの金融所得増税には賛成するが、金融所得一律増税には、反対という人たちが多い。累進制の導入をするべきだ。

もし、このまま、この一律増税を修正しないと、衆議院選挙で、自民党は、大幅な議席数を失いかねない。年金生活者の半分程度とサラリーマンの半分程度は投資をしている。

この人たちの票を失うことになる。多くの人が今回は自民党に入れないという。投資家は、今まで自民党支持であったが、今回は違うことになる。

立憲民主党の枝野党首は、岸田首相の「分配と成長」の国づくりは、菅直人政権で言っていたことであり、所信表明演説で具体策がないと批判している。目指す方向は野党も一緒をいうことである。それほど、岸田政権の方針は野党である。しかし、それでは自民党支持者を失うことになる。

自民党の支持者を敵に回すことは、自民党の崩壊になる。岸田政権は自民党から野党への政権交代をしたような感じであり、今までの自民党支持者は離れ、社会的弱者で今まで野党支持の人たちが自民党支持者になる。野党票を取りに行って、自民党票を手放すということになる。

下手をすると、政権を失うことになる。なんで、この時期に山本衆院議員は、多くの自民党支持者を敵に回すことをいうのか、よくわからない。

コロナ禍で傷ついた飲食業界や旅行業界に給付金を出さないことで今回は自民党に入れないとした人たちを助ける必要があるが、その財源を得るために、より広範な自民党支持者を敵に回す気のようだ。

野党は、この部分を選挙の一大争点とするべきである。これは自民党の大きな失点になる。そして、自民党支持者の多くの票を得ることができるはずだ。

岸田首相は、金融所得税の累進制での増税と修正して、離反する支持層を少なくするべきである。もし、あいまいにすると、国民は一律増税ととらえて、自民党には投票しない。結果は見えている。

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新しい日本型資本主義とは

「分配と成長」は、非常に良いことである。中間層にサヤ寄せして、中間層の厚みを増やすことは重要である。目指す方向は、大賛成であるが、どのように実現するかでしょうね。

基本は、公と民のバランスをどう取るのかである。公の仕事がうまくいかないなら、民の仕事として規制緩和をする。今、見直しはコロナ禍で保健所のボトルネックが発生していた。この部分を民に回すしかない。

コロナ自宅待機者への食糧供給や、病院手配と病状確認などは「かかりつけ医」や地域ボランティアなどを指定して、保健所のネックを解消しないと、無用な死者を出すことになる。規制緩和が必要なことになっている。

保育所も規制緩和で民に任したことで数を充足できたが、保育士の数が足りなく待遇改善をするべきだが、補助金を増やしても民の儲けになり、保育士に補助金が回らないことになる。それなら、公が出るしかない。規制強化である。

このように問題解決するために、公と民を組み合わせることだ。

民でうまくいかない問題は、公が出るしかない。貧富の差が拡大するのは、分配がうまくいっていないからで、その部分には、公の仕事である。一番日本の成長に必要な研究開発は、民だけでは足りなく、公が出ていくことであるが、純粋な公だけでは、基礎と応用研究の2つをつなぐことができない。このため、準公という存在も必要になる。

もう1つが、人間は金に目がくらみ、公の汚職や民間の詐欺や過剰債務などが起きるので、それが起きたときは、権利・権力を移動することも必要になる。

このため、公と民の権利の循環が起きている。規制強化と規制緩和を使い、その調整をすることである。今は、民の権利が大きくなり、貧富の差の拡大や国民の利益を阻害しているので、世界的に規制強化の方向になっている。

もう1つ、日本では、権力が官邸に集まり過ぎて、政治家の腐敗が大きくなり、その浄化が必要な時期であり、岸田政権のように官邸から党や官僚に権限移譲は良いような気がする。

観点は違うが、3つ目は、非正規社員と正規社員の格差であるが、企業もテレワークしやすいようにジョブ型の仕事にシフトさせているということは、社員全員を非正規社員にして、管理職以上を正規社員にすることで、非正規と正規の差をなくすしかない。これで、日本企業内での格差は、なくなる。

そして、国としては最低賃金を上げることで、全体の賃金を上げて、貧富の差を縮小させるしかない。

新しい日本型資本主義とは、日本に生きる人たちが全員、笑顔で過ごせる人間中心の資本主義を作ることである。イデオロギーではなく、そこに生きる人たちの多くが、満足ではないが不満ではない社会にすることだ。

そのためには、累進制度をしっかり作る必要がある。社会保障費のような一律の税金のようなものではなく、相続税や所得税のような累進課税、使う分に課税する消費税、贅沢品に課税するぜいたく税などという累進的な課税システムにすることである。贅沢品に課税する分、食糧には課税しないことである。この仕組みを作るにも、マイナンバー制度で、収入を捕捉する必要がある。

最終的には、ベーシック・インカムは必要になると見る。最低保証で、そのあとは個人の努力という世界であろう。

さあ、どうなりますか?

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image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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