例えば経費精算など、社会生活の基本とされることが得意ではない。クリエイティブの才に長けた人にありがちな傾向で、そういう人たちが集まった会社の事務職の人は苦労も多いようです。小言も増えて疲れてきたという相談に気持ちが軽くなる考え方を教えてくれるのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤かおるさん。チーム戦と考えると、仲間ができないことができるのは“最強の武器”であり“やりがい”になると伝えています。
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ちょっと御相談がありまして:小言に疲れた
皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。
Q.
30代。会社員です。子どもの頃から、「なんでもそこそこできる」タイプでした。ずば抜けているものは何もないのですが、平均点を大きく下回るものもありません。言われたことをきちんと守る、まじめなタイプだと思います。会社員の両親のもと、ごく平均的に育ちました。
就職するとき、興味がある業界に入ろうと思い、デザイン関係の会社に入りました。とはいえ、私はデザインの才能があるわけではないので、事務職です。入社してからわかったのが、社員の個性の強さ。とにかく、飛びぬけた才能を持っている人が多いのですが、その分「普通のこと」ができない人達が大半なのです。
時間が守れない、納期が守れない、経費精算がいつまでもできない、敬語がおかしい、お願いしたことを忘れる、備品を無くす、デスク周りが異常に汚いなど、私の常識ではありえないことばかり。いつもヒヤヒヤさせられるし、ずっと「ちゃんとしてください!」と小言を言っていることに疲れました。
本当に「大人としてどうよ?」と思うことだらけなのですが、社長からして変人ぶりが突き抜けていますし、なぜか業績は悪くない会社なのです。私がお客の立場だったら「失礼だな」と思うであろうことでも、お客様は「いいよいいよ、素晴らしい仕上がりだから」と評価してくださるし、ある意味そういうお客様しかいらっしゃらないのです。
悪い人達ではないですし、悪意があって書類の提出期限を守らないわけではないこともわかっています。私のことも、「小うるさいな」と思いながらも、頼ってくれているのもわかります。でも自分よりも10も20も上の人たちに、毎日同じような小言を言っている現状に疑問を感じています。私はどうしたらいいのでしょうか。
【永藤より愛をこめて】
本当にお疲れさまです。世の中に一定数いるんですよね、「え?今までの人生、どうやって生きてきたの?」と心配になるくらい、いろいろなことができない大人の皆さん。でも、あなたのそばに今いる人たちは、「いろいろなことができない」を軽くぶっ飛ばすくらいの、「すごい何か」を持っているんですよね。それがあるからこそ、その人たちはその「何か」で会社に貢献している。
なんだろうな、きっとあなたとは持っている武器がまったく違うんです。
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チーム戦で戦う時、一人ひとりが異なる役割を持つことって大事だと思うのです。前線で敵陣にワーッと斬り込んでいったり、ヘリコプターから真っ先にパラシュートで敵地に降り立つようなタイプ。敵が自陣に侵入しないようしっかりと防御を固めるタイプ。戦況を冷静に見渡して的確な指令を下すタイプ。そしてそこにいるみんなの食事をきちんと確保したり、休息する場所を整えたり、傷を負った人達を救護したりするタイプ。
多分あなたは、いろんなことに目配り、気配りができる常識人。「まじめにコツコツ期限を守って、マイナス点を作らない」というのは、あなたがいう「個性の強い人達」にとっては、あり得ないほど難しいことなんです。でもあなたはそれを「普通のこと」といい、さも当たり前のようにこなしている。それがあなたの強みであり、最強の武器。あなたと同じ武器は、周りの人には使いこなせない、扱えないほどすごい武器。それを存分に発揮できているのが、今いる場所ではないでしょうか。
多分業界の性質上、あなたのようなタイプが増えることはあまりないでしょうし、「個性の強い人達」があなたのいう「当たり前のこと」ができるようになる日もすぐに来るとは思えません。そうだとしたら、そこにイライラカリカリしてもあまり生産的ではないので、「この人たちが苦手にしていて、私が得意にしていることを担う」、つまり、「ここはアタシに任せときなっ!」という気持ちに切り替えると、楽になるのではないでしょうか。
まあ、あまりにも周りのダメさ、だらしなさに疲れてしまったら転職もアリかもしれませんが、みんなが常識人のところに行ったら、あなたは「な~んかつまんないなぁ~」って思うかもしれませんよ。
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