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たとえ1億あっても足りぬ。老後を支えるのは「運用」しかない訳

2019年に金融庁が発表するやたちまち大騒動となった「老後2,000万円必要報告書」ですが、このような「平均値」にあまり意味はないようです。今回のメルマガ『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』では、元青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授で、現在は「MOTO教授」の名でマネー評論家など幅広く活動を展開する榊原正幸さんが、60歳前後でリタイヤしても困らない経済的独立を果たすため必要な「各家庭各々が把握すべき数字」の導き出し方をレクチャー。中でも一番重要なのが「自分が長期的に達成可能な運用利回り年率」とし、その根拠となる理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』の2021年10月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:榊原正幸(さかきばら まさゆき)
会計学博士、税理士、マネー評論家。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授、東北大学大学院経済学研究科教授を務めた経験から「MOTO教授(元・教授)」の肩書きで活動。資産形成のノウハウを発信し、60歳前後でリタイアする「21世紀の日本を生き抜く方法」を自らの経験と株式投資のプロの視点から提唱している。

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遊んで暮らすFIRA60(ファイラ60)のための基本公式

こでまず、「FIRA60(ファイラ60)」の定義を思い出しておきましょう。

「FIRA60」とは、“Financial Independence: RetireAround 60”の略で、「60歳前後でリタイヤするための経済的独立」を意味します。

1 必要な要素は3つ

FIRA60到達までの進捗度を考える時の必要な要素は、次の3つの項目です。

  1. リタイヤ後に、自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらか?
  2. 自分が長期的に達成可能な運用利回りは年率何%か?
  3. 自分の世帯が受け取れる年金の手取り額は毎月いくらか?

それぞれについてもう少し説明します。そして、その後に、具体的な数値例をいくつか当てはめてみましょう。

1.リタイヤ後に、自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらか?

実は、このことがかなり重要な要素です。2004年頃のヤンリタ関連の本や2010年以降のFIRE関連の本を見ますと、この「自分の世帯が満足する生活費」をなるべく少なくして、「早く」リタイヤしよう!と声高に叫んでいます。

2004年頃にヤンリタを提唱したヒロ・ナカジマさんは「ケチオネア」という概念を提唱していました。すなわち、ヒロ・ナカジマさん曰く、1億円か2億円を貯めて、それを不動産に投資して、諸経費や税金を引いた真水の手取りで400万円~800万円くらいの年収を得ましょう。そして、年間の支出をその年収(400万円~800万円)以下に抑えれば、未来永劫、遊んで暮らせますよ、というのです。

1億円か2億円を持っているから「ミリオネア」だけど、そのわりには比較的少なめの支出で生活するから「ケチ」で、合わせて「ケチオネア」だというのです。

しかし、それでは面白くないな、と2004年当時の私(43歳)は思いました。せっかく稼いでいるなら、ケチな生活はせずに、豪華で贅沢な暮らしをしたいと思ったのです。

一方で、ヤンリタできるなら(=イヤな仕事から解放されるなら)、ヤンリタ後は地味な生活でもいいから、やっぱり少しでも、「早く」リタイヤしたい、と考える人もいると思います。

そこで、「ケチ」でもなく「贅沢」でもない、中庸を得た生活すなわち、「ケチ」な生活を前提とするのではなく、あくまでも、「自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらなのか?」を基準に考えるのがよいと思う
のです。

いわゆる「老後2,000万円不足問題」の基になった(政府が2019年6月に公表した)報告書(以下で、「報告書」と記す)では、毎月の生活費の平均値は、65歳の夫と60歳の妻2人で「26万数千円」だとしていますが、「平均値」はあまり意味がありません。あくまでも、「自分の世帯が満足する生活費」ということが大事です。この金額は、まさに十人十色です。「毎月15万円もあれば充分」という人もいれば、「現役時代に生活水準を上げたい放題上げてしまったから、毎月80万円くらいはないと満足する生活ができない」という人もいるでしょう。

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また、毎月の生活費とは別に、臨時で必要となる出費もあります。自宅の修繕費や冠婚葬祭の費用など、意外と色々とあります。ですから、毎月の生活費を12倍した金額に、少なくとも30万円から多い人は150万円くらいを年間の支出額として見込んでおく必要があるでしょう。

すなわち、年間の支出額は、「毎月15万円もあれば充分」という人でも、(15万円×12+30万円=)210万円くらいは見込んでおく必要がありますし、「毎月80万円くらいはないと満足する生活ができない」という人は、年間の支出額を(80万円×12+150万円=)1,110万円くらいは見込んでおく必要があります。このように、質素な家計と優雅な家計では、かなり大きな開きがあるのです。

ですから、一概に「年間の支出額の平均は○○万円」というのは意味がなく、各自で自分の家計を把握して、「年間の支出額はいくらなら満足か」を把握する必要があります。そのためには、現金出納帳をつけて、毎月の家計簿を作ることは必須です。

「報告書」のように、年金収入との差額の30年分を計算する(その結果がおよそ「2,000万円」です)というよりも前に、まずは「自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらなのか?」を把握する必要があります。老後には、このくらいの経済水準で生活していきたいな、という生活水準を金額的に把握することが一番先で、それを実現するために必要な資産規模を算出するのです。そして、それを目標の金融資産総額とします。

2.自分が長期的に達成可能な運用利回りは年率何%か?

この「運用利回り」ということは、とても重要なことです。いや、「FIRA60」を実現するためには、この「運用利回り」ということが一番重要なことです。

日本人は、資産運用が苦手な人が多いようで、そもそも「資産運用」という概念を度外視してしまって、年金収入と貯金の取り崩しだけで老後の生活費をなんとかやりくりしようと考えている人が多すぎます。

というか、それしか考えないのが当たり前、みたいな風潮がありますが、とんでもありません。「資産運用」を全くしなくても老後が安泰なんていうのは、大成功した起業家か先祖代々の資産家で、5億円も10億円も(いや、それ以上も)持っている超富裕層だけです。

たとえ1億円を持っていても、運用をせずに取り崩しだけで生きていこうとすれば、そして、年金収入がゼロだったら、生活費が月30万円でも30年しかもちません(30万円 ×12ヵ月×30年 =1億800万円)。

年金収入が毎月20万円あったとしても、生活費として月50万円つかいたければ、1億円を持っていても、やはり30年しかもちません。

ですから、「FIRA60」をしようがしまいが、老後を支えるのは「運用」しかないのです。

なお、本書では「運用利回り」といった場合、特別に書き加える場合を除いて、原則的に「税引後」の利回りを意味します。

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3.自分の世帯が受け取れる年金の手取り額は毎月いくらか?

2.でも述べたように、「自分の世帯が受け取れる年金の手取り額」は、1.の「リタイヤ後に、自分の世帯が満足する生活費」に直接的に関係してきます。なので、ここでは3つ目の項目として年金の額を入れました。

各世帯が受け取れる年金の手取り額というのは十人十色です。年金を払ってこなかったため、ゼロの世帯もあれば、夫婦共働きでやってきたので、2人合計で50万円くらいもらえる世帯もあります。あまりにも個人差が大きいので、ここでもやはり一般論は意味がなく、「自分の場合はどうなのか」しか意味がありません。

なお、年金の手取り額は将来的に減っていくことが確実視されていますが、とりあえずはこのくらいはもらえるだろうという額がわかっている人は、それを考慮に入れます。ただし、考慮に入れる場合は、少なめに見積もった金額で考慮に入れる必要があります。年金の手取り額は将来的に減っていくことが確実視されているからです。

「年金なんて、あてにできない」とお考えの方は、この項目は「ゼロ」としてもよいでしょう。

なお、年金も含めて「年収」といった場合、本書では「税引き後の手取り額」を前提とします。自分の年収を言う場合に、「税込み」で言う人がいますが、「少しでも多く言いたいのかな~」と思えてしまい、涙ぐましく感じてしまいます。

「年収」も、後に出てくる株式投資の「利回り」も、「税引き後の手取り」の値しか意味がありません。

(『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』を2021年10月中にお試し購読スタートすると、この続きを含む、10月分の全コンテンツを無料(0円)でお読みいただけます)

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本企画『目指せ!60歳でハッピーリタイア』は、メルマガ『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』内で好評連載中です。

【目次】

「目指せ!60歳でハッピーリタイア」 

~幸せな人生の歩き方。歳をとればとるほど楽になっていく人生設計とは~

第1章 60歳で「ハッピーリタイア」をしよう!

1-1節 本書で伝えたいことの概要
1-2節 長い自己紹介
1-3節 今や、60歳で辞めることこそが、「ヤンリタ」
1-4節 本書を読む必要がない人は、最高に幸せな人

第2章 日本版の「FIRE ムーブメント」

2-1節 「FIRE ムーブメント」とは
2-2節 なんで今さら!?
2-3節 日本版の「FIRE ムーブメント」は「FIRA60(ファイラ60)ターゲット」

第3章 「早く」達成するべきことはリタイアではなく、「イヤじゃない仕事」に就くこと

3-1節 いわゆる就職適齢期の時の考え方について
3-2節 海外生活について

第4章 仕事を辞めるって、どういうこと?

4-1節 人生は100年時代ではない!一番大事なのは「人生の残り時間」
4-2節 仕事を辞めるって、どういうことかを深く考えてみました

第5章 お金の問題

5-1節 遊んで暮らす「FIRA60(ファイラ60)」のための基本公式
5-2節 あとどのくらいで「FIRA60」に到達できるのかは、登山にたとえることができる
5-3節 大事なことは「早く」でもなく「高く」でもない
5-4節 資産運用のススメと副業のススメ

第6章 資産運用の具体策 年金代わりの株式運用

6-1節 配当の受け取りを主軸にした盤石の資産運用
6-2節 投資対象の絞り込みと目標の買い値
6-3節 売り値と重要な注意事項

第7章 「ヒマだ病」と闘う覚悟

7-1節 暇(ヒマ)があり過ぎるのもストレスだ
7-2節 60代を「第二の青春」にする
7-3節 「人生でやり残したことリスト」を作る
7-4節 「イヤでも、死ぬまで働くしかない」という状態からの脱却

終章 この世の天国は「オレの庇護の下でぬくぬくと暮らすこと」

 

image by: Shutterstock.com

榊原正幸この著者の記事一覧

2021.4-現在 還暦を前に早期退職して、MOTO教授として幅広く活動を展開 2004.4-2021.3 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授 2003.10-2004.3 東北大学大学院経済学研究科教授 2001.7 英国レディング大学より博士号 (PhD, 会計学専攻)を 授与される 2001.2-2001.3 フランス・国立レンヌ第一大学経営大学院客員教授 1997.4-2003.10 東北大学大学院経済研究科助教授 1990.3 名古屋大学大学院経済学研究科博士課程 (後期課程) 単位取得満期退学 1984.3 名古屋大学経済学部卒業 1961.6 名古屋市生まれ

 

「MOTO教授」の榊原です。「MOTO教授」というのは、「元・教授」を私なりに表現した新しい肩書きです。 株式投資で資産形成をして、老後の資金を準備して、60歳前後でリタイアする「21世紀の日本を生き抜く生き方」を、自らの経験と株式投資のプロの視点から提唱していきたいと思っています。

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【著者】 榊原正幸 【月額】 ¥500/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 1日 発行予定

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