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症状のない人への健康診断は全くのムダ。日本医療の不都合な真実

従業員への健康診断が法律で義務付けられている日本では、毎年多くの人たちが指示された期間内にいそいそと受診しています。しかし、科学的な比較試験によって証明されているのは、症状のない人への健康診断は「全くの無駄」ということ。“健康診断産業”で働く人たちのために制度が続いていると呆れるのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』で先生は、高血圧の基準値引き下げや前立腺がん検査推進などは、医療機関や製薬会社が儲けるためのものと主張。数値を見るのではなく「自分の体の声を聴く」のが長生きの秘訣と訴えています。

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自分の体の声を聴く

会社の命令で健康診断を受けている人も多いと思う。症状がない人に対する健康診断は、総死亡率もがんや循環器疾患による死亡率も共に減らす効果がないことは、コクランビューと呼ばれるメタ解析によってずっと以前からはっきりしていた。

しかし、この解析は1980年以前のものであり、最近の医療の発展に伴って、健康診断にも一定の効果があるのではないかとの批判を受けて、2014年にデンマークで、虚血性心疾患の予防を目的に、大規模なランダム化比較試験が行われた。

5万9616人の健康な人を1万1629人の介入群と4万7987人の非介入群に分け、介入群には健康診断の受診案内を送り、それに応じた人には健康診断を行い、異常がある人には禁煙やダイエットや運動についてのアドバイスをして、場合によっては医療機関を紹介した。

10年間の追跡調査の結果、虚血性心疾患や脳卒中の発生率のみならず、総死亡率も介入群と非介入群に有意の差は見られなかった。要するに、症状がない人に対する健康診断は全くの無駄なのである。

アメリカやEUは、企業に従業員の健康診断を義務付けておらず、必要と思えば個人が健診を受ければいいだけだ。独り日本だけが、健康診断を律儀に毎年行っているが、上記の通り、受診者にはメリットはなにもない。時間とカネの無駄である。日本では、健康診断で食っている医者や関連企業が沢山あり、やめると、これらの人が食えなくなるので、エビデンスを無視して、健康診断を強行しているのだろう。

インチキな人為的地球温暖化論を振りかざして、ソーラーパネルや電気自動車で食っている企業と選ぶところはない。エビデンスという事で言えば、健康診断は寿命を延ばす効果がないというのは、繰り返し行われたランダム化試験の結果、科学的に反論の余地がないわけだから、さらに質が悪い。

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私は、もう20年近く、健康診断もがん検診も受けたことはない。がんの検診は精度が上がって、例えば前立腺がんはPSAというマーカーを調べることにより、早期に発見できるようになった。患者数はうなぎ上りに増えたが、それで、治療して治って、死亡数が減ったと思いきや、前立腺がんの死者数は微増しているのである。やらずもがなの治療をされて、死期を早めているのではないかしら。

前立腺がんのほとんどは良性で、放置しても患者を殺すようなことは滅多にないので、欧米では見つかっても治療をしないことが多い。そうであればPSA検査もする必要はないことになる。欧米ではPSA検査はやめようという流れになっている。ここでも日本だけが法律で決まっている検査項目でないとはいえ、一般的な健診でPSA検査を行っていることが多い。近藤誠は長生きするコツはなるべく医者に近づかないことだと言っていたが、至言だと思う。

それでも、具合が悪ければ医者に行く方がいいし、多くのサラリーマンは会社からの圧力により、無理やり健康診断を受けされられることも多いだろう。その時は、レントゲン検査は受けたばかりだからとか、適当なことを言って、血圧測定や血液検査などの、体に侵襲を与えない項目だけを受けたらいいと思う。

歳をとると、検査項目がすべて正常という人はほとんどいなくなる。例えば、血圧は、日本高血圧学会の基準によれば140/90mmHg以上が高血圧という事になっているが、この基準では60歳以上の人の6割以上、75歳以上の人の7割以上が高血圧である。老人に関しては、マジョリティが異常で、マイノリティが正常という事になる。高血圧は長生きしないという思い込みで、この基準を決めたようだが、健康で長生きする人が正常で、病気で短命な人は異常という事になると、100歳以上生きた人だけが正常で、後の人は異常という馬鹿げた話になりかねない。

実は2000年以前は160/95mmHg以上が高血圧であったものを、基準を引き下げたのである。その結果高血圧と診断された人は激増して、降圧剤の売り上げも激増したのである。おそらく製薬学会と結託して、基準を引き下げたのであろう。ところが、老人は多少血圧が高い人の方が長生きするのである。高血圧と診断されても、自覚症状がなければ、降圧剤を飲む必要がないばかりか、飲めば副作用によってむしろ体の具合が悪くなる。

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検査結果は数値で出るので、とりあえずは客観的なデータであるが、それを基に個々一人一人の血圧を、正常あるいは異常と判断することはできない。血圧が160/95mmHgでも、本人が何ともなければ、正常なのである。具合の悪さが本人にしか分からない感覚の場合、これを表す客観的な数値は存在しないので、検査数値を見ても役に立たず、自分の体の声を聴くしか術はない。

頭が痛かったり、おなかが痛かったり、だるかったり、高熱が出たりすれば、具合が悪いことは自分ではわかる。この中で体温は数値として出てくるので、客観的なデータである。最近ではオキシメーターと言って、動脈血の酸素飽和度を簡単に測れる装置があるので、これも客観的な数値として出てくる。

医者はこれらの数値が異常であれば、病気だと認知してくれるが、頭が痛いんですと訴えても、CTやMRIの画像や血液検査の数値に異常がなければ、取り合ってくれないことが多い。コンピュータとにらめっこして、「おかしいですね。痛いはずはないんですけどね」などと平気で宣う医者もいる。

反対に検査の数値が異常であれば、本人に自覚症状がなくても、治療を勧める医者も多い。私は滅多に血液検査をしないけれど、5年ほど前に、偶々、血液検査を受けたところ、HDLコレステロールが基準最高値の2倍近くあり、医者にびっくりされたことがある。HDLコレステロールは所謂善玉コレステロールと言われ、少々高くても問題はないのだが、あまりにも高いものだから、精密検査を受けた方がいいと言われたが、私は別に不具合を感じてなかったので、聞き流して、それから病院には行っていない。

繰り返して言うが、検査結果を無闇に信じるより、自分の体の声を聴くことの方が大事だ。医者に話してもどんな痛みかという事を共有することはできない。痛みのクオリア(自分が感じることができる感覚のこと)は、視覚のクオリアと違って、他人と共有することができないのだ。(『池田清彦のやせ我慢日記』2021年10月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)

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image by: Shutterstock.com

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