素人でも分かる「生ける伝説」ヴァレンティーノ・ロッシのモノ凄さ

 

そういえば一度だけ大きな怪我をしていた。右脛骨の複雑骨折である。調べると2010年のことである。複雑骨折と言うのは折れた骨が皮膚を突き破って外に飛び出て来る開放骨折のことである。そんな大怪我を負いながらも僅か41日後にはレースに戻り4位を取った。一体どんな治療を受け、どんな養生をすればこんな芸当ができるのか不思議で仕方がない。

というのも自分も子供の頃、まったく同じ場所を複雑骨折しているからだ。勿論受けられる治療のレベルも天と地ほどの差があったに相違なかろうが、それでもこっちは治りの早い子供である。その子供をもってしても記憶では少なくとも半年はベッドで過ごしていた。返す返すも41日が信じられない。実際、世界中のメディアがシーズン中の復帰は絶望的と報じていた。この怪我を治す謎の力も大切な要因であろう。まあ、どこまで行っても謎は謎のままなのではあるが。

そういった超人的な能力以上にすごいと思うのが人に愛される能力である。ファンはもとより、スポンサーに愛され、エンジニアに愛され、スタッフに愛され、何よりライバルからも愛された。こんな選手はちょっといない。白状すると自分は決してロッシのファンではなかったし、寧ろライバル選手たちの方を贔屓にしていた。それでもこの喪失感である。

そう言えば数年前に母国イタリアで子供たちに「一番好きなスポーツ選手は誰ですか?」というアンケートを取ったところ、男子は1位がロッシ(因みに2位から5位は全てサッカー選手)、女子は2位がロッシであった。こういう調査の場合、女子は回答が多様化する傾向にある。憧れの男性としても答えられるし、憧れの女性としても答えられるからだ。その中にあってMotoGPライダーが2位というのはやっぱりすごい。バイク乗りがランクインなど、日本では女子はおろか男子でさえもおよそ考えられない。

先にも述べた通り、最高峰クラスに22年である。トップ20人に22年である。しかもつい4年前の2017年には優勝もしている。トップの中のトップクラスにいた訳である。偉大な選手の引退である。これにはひねくれ者の自分もただただ素直に称賛の拍手を送るばかりである。

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image by:Rainer Herhaus / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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