現在、日本では携帯電話の利用に必要な周波数の割当には、比較審査方式を用いていますが、この割当方式を検討する会議でNTTドコモがオークション方式に前向きな姿勢を見せたと伝えられ、それに楽天の三木谷氏が「大反対」と噛みつきました。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、ドコモと楽天それぞれの事情を解説。もし、オークション方式を導入するのならば、総務省との“なあなあ”を許さないルール作りが必要と訴えています。
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NTTドコモが電波オークションに前向きな姿勢──楽天・三木谷社長が「大反対」と噛みつく
電波オークションが騒がしくなっている。事の発端は11月16日に総務省で開催された「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会(第2回)」において、NTTドコモの井伊基之社長が「価格の透明性や将来の需要の変化への柔軟性をもったオークション方式を、今後の割り当ての方針として検討することは価値がある」と前向きな姿勢を示したのだ。
この件を翌日、日経電子版が報じたところ、噛みついたのが楽天モバイル・三木谷浩史会長だ。Twitterで「電波オークションは、NTTドコモなど過剰に利益をあげている企業の寡占化を復活するだけで、最終的にはせっかく下がってきている携帯価格競争を阻害する『愚策』だ。NTTドコモなどにとっては当然資金力に物を言わせて新規参入、競合排除するには漁夫の利だろうね。弊社として大反対」と声を上げたのだ。
確かにピュアなオークションを行えば楽天モバイルは相当、不利な立場に追い込まれるだろう。11月26日に楽天グループは12月2日に3000億円の普通社債を発行すると発表していたりと、とにかく楽天モバイルの設備投資に金がかかっている状態だ。
今後、楽天銀行の新規株式公開を通じた資金調達も計画しているようだが、3キャリアとネットワーク品質で互角に戦うにはまだまだお金が足りないのは間違いない。かつてのソフトバンクのように有利子負債は膨らむ一方であり、新たに周波数を獲得するのにオークションで、さらに大金が必要になるなんて、考えたくもないだろう。
確かに総務省による、周波数割り当ての審査がキチンと機能してきたことはあまりないというのが実態だ。2005年には新規参入組に割り当てたら、ソフトバンクは新規割り当ての電波を諦めボーダフォンを買収してしまうし、アイピーモバイルは計画を遂行できずに断念。残ったイー・モバイルも最終的にはソフトバンクに買収されるという、総務省の大愚策ともいえる周波数割り当てもあった。
これまではどのキャリアも電波オークションに対しては慎重な姿勢を示してきた。というか、どちらかといえば、本心では「反対」だろう。ただ、NTTドコモとしては今年、楽天モバイルに割り当てられた東名阪以外の1.7GHzにおける審査方法に納得がいっておらず、かなり根に持っていると思われる。明らかに楽天モバイルに有利な、恣意的な審査基準となっており、出来レースで周波数帯を持って行かれたことが悔しかったのではないか。
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