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安倍政権「影の総理」が原発推進論で垣間見せた“国民見下し”の何サマ

気候変動対策として「脱炭素」が叫ばれ、わが国も2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言。目標達成には原発の稼働が欠かせないとの言説が聞こえてきます。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、安倍政権の「影の総理」と言われた今井尚哉氏のエネルギー政策に関する考察を紹介。ポーランドの実情を語る形で「原発推進派」のロジックを巧みに展開していて、「経験」として「原発に対する不安」を抱く国民を見下し愚民扱いしていることがよくわかると訴えています。

※本記事はメルマガ『週刊 Life is beautiful』2021年11月30日号より一部抜粋したものです。全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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私の目に止まった記事

「脱炭素と脱原発」~ 二兎は追えない | キヤノングローバル戦略研究所

日本の原発中心のエネルギー政策を作り、安倍政権時代は、「おぼっちゃん」である安倍総理を意のままにあやつる「影の総理」として君臨したことが知られている今井尚哉が、キャノングローバル戦略研究所の研究主幹として執筆した、小論文です。

「原発推進派」の人たちが、どんなロジックで「日本は原発に力を入れるしかない」と言っているかが良く分かる文章なので、是非ともお読みください。要約すれば、「再生可能エネルギーだけで化石燃料を置き換えることは所詮出来ないのだから、国民が嫌がろうが原発をやるしかない」となります。

理路整然とした文章なので、これだけを読むと説得されそうになりますが、「国民が嫌がろうが原発をやるしかない」という部分に、「選民思想」が明確に表れており、なぜ安倍政権が国民を愚民としてしか捉えて来なかったかが良く分かります。

今井氏が見過ごしているもっとも重要な点は、日本国民の間に広がる「原発に対する不安」そのものです。その不安は、いわゆる「風評」と呼ばれるような誤解に基づくものではなく、福島第一での事故という経験に基づいた「人間にミスはつきもの」という経験であり、「エリート官僚に対する不信感」なのです。

事故調査委員会が報告した通り、事故の原因は「想定外の津波」ではなく、「官僚と電力会社の癒着」と「勤勉な日本人なら原発を安全に運転できる」という驕り(おごり)にあったわけで、それらの払拭なしに原発など危なくて運転出来なくて当然なのです。

にも関わらず、その事故を起こした原因を作った張本人が、「脱炭素と脱原発は両立しないんだよ」と原発を怖がる国民を見下して書いているのがこの文章なのです。

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私の目に止まった記事 その2

みずほ銀行「国家管理」、完全対等合併のシステム統合は無理だった (宿輪 純一) | マネー現代 | 講談社

このメルマガでも以前に取り上げた、みずほ銀行のシステムの問題を分かりやすく解説した記事です。最も重要な点は、下の2つの段落に書かれています。

組織の経営に2つや3つの対等な力関係はトラブルの根源でしかない。銀行の経営では力関係で、システムも1社に任せるものである。三菱UFJ銀行は三菱銀行のシステムに、三井住友銀行では住友銀行のシステムに「片寄せ」した。

 

しかし、みずほ銀行の場合は対等合併であり、特に今回トラブルのエリアであるリテール部門のシステムは、当初、富士銀行の「TOP」と第一勧業銀行の「STEPS」を対等につないだ。その後、「MINORI」では銀行業務を分解し、ベンダーは分担して開発に当たった。そこにどうしても無理が出てくる。それは、人事などの経営でも一緒である。組織というものはそういうものである。

富士銀行と第一勧業銀行の「対等合併」だったゆえ、どちらかのシステムを捨てる「片寄せ」が出来ず、両者のシステムを温存したまま、二つのシステムを無理矢理繋ぐという複雑な設計を選んだため、こんなことになってしまったのです。

さらに問題なのは、このシステムに絡む外部のベンダーの数です。この記事によると、

システム会社も、富士通、日立製作所、日本IBM、そしてNTTデータといった4ベンダーをはじめ約1000社が入って、複雑化した。この「複雑さ」が連続するシステムトラブルの主因である。

とのことなので、私のような部外者から見ても「うまく行かなくてあたりまえ」の状況です。今後、みずほ銀行のシステムは金融庁の管理の元に置かれるそうですが、それで問題が解決するとは私には思えません。私が金融庁の担当役人であれば、みずほ銀行に対する廃業命令を真剣に考えるだろうと思います。

(※本記事はメルマガ『週刊 Life is beautiful』2021年11月30日号より一部抜粋したものです。全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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image by:Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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