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岸田政権コロナ対策に「弱点」あり。今すぐ再確認すべき4つのポイント

未だ正体不明のオミクロン株の蔓延や第6波襲来の可能性など、気を抜くことが許されないコロナ対策。我が国は今現在、重症者数・死者数ともに低く推移していますが、岸田政権のコロナに対する備えは万全と言えるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、アメリカから見た日本のコロナ禍の現状を「うらやましく見える」とした上で、この状況を維持するため厳しく再確認すべきポイント4点を提示。さらにそれぞれについて詳しく考察しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2021年12月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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岸田政権のコロナ対策、本当に改善しているのか?

今日現在で言えば、岸田政権のコロナ対策ということでは「水際作戦」が話題になっているようです。私は、オミクロン株が弱毒性だということがハッキリ証明できない間は、日本が一定程度の「国境閉鎖」をしながら「時間を稼ぐ」という姿勢については短期的な合理性はあると思います。

ただ、今後のことを考えると、海外からの帰国者について、

  1. 外国人配偶者は入国禁止
  2. 3、6、10日の強制隔離は無料だが実務が混乱
  3. 国内世論に配慮してワクチン接種を義務付けられない

といった問題は検討課題だと思います。1.は日本人と同居していることからリスクはイコールなので認める方向、2.についてはシンガポールの一時期のように、有料(14日で15万円とか)にする代わりに実務を安定させる、3.は接種義務づけにして(タイミングによってはブースターも義務付け)、その分だけ規制を緩めるというのが現実的と思います。

それはともかく、心配なのは本来のコロナ対策です。岸田政権は、菅政権が政権末期に世論に見放された経験を踏まえて、その「経験に学んで」バージョンアップをしようとしている、その姿勢は見えます。また総理の発言には相当な力が入っているのは事実だと思います。ですが、具体的な点に関しては、まだまだ弱い点が気になります。4点指摘したいと思います。

1点目は、司令塔です。安倍政権の際には、初期には厚労省の幹部がデイリーの会見をしていましたし、やがて当時の加藤勝信厚労相が司令塔的な会見をしていました。ですが、勝信さんはどうしても勝信さんであり、カメラの前では「組織防衛語」しか話せないことから外された経緯があります。

菅政権になってからは、田村厚労相(当時)が司令塔なのかというと、徐々に西村康稔氏が経済(再生=この言い方やめませんか?)担当大臣になって、この西村氏が司令塔になっていました。つまり、厚労省が司令塔になると、どうしても感染対策が経済より優先するニュアンスになるので、経済担当が司令塔という形にしたわけです。

実は、この判断は五輪を強行するためでもあり、当時の世論は相当な違和感を持っていたはずです。西村氏は、ここで「経済」と「役所」と「世論」という、全く相入れない3つの要素を「ノラクラ」と渡って、何となく危機管理風のコミュニケーションをやっていました。切れ味はないのですが、組織防衛的とも言えない、意味不明ではないが曖昧ではあるという不思議な言葉を話す人でした。

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一方で、感染症の専門家については「分科会」という「傍へ追いやる」ネーミングに変わっており、これも「経済重視=五輪強行」シフトというニュアンスであったように思います。

更に、これは菅さんのヒットだと思うのですが、ワクチン接種をスピードアップするために、担当大臣として河野太郎氏を置きました。河野氏は見事に「突破力」を示したのは事実であり、この秋には急速な効果が確認できるようにもなったと思います。

ですが、厚労省、経済再生相、ワクチン担当相という3人の大臣がいて、そのほかにも官房長官がありというのでは、一体誰が司令塔なのか分からないという状況であることは間違いありません(ちなみに、菅政権の官房長官は、勝信さんで依然として組織防衛話しかさなかったので、その点は混乱はなったわけですが)。

岸田総理は就任にあたって「健康危機管理庁」を設置して、コロナ司令塔を一本化するとタンカを切っていたはずです。

健康危機管理庁に関しては、時間がかかるのは分かります。ですが、厚労相(後藤茂之)、経済(再生)相(山際大志郎)、ワクチン担当(堀内詔子)という3人体制は変わっていません。しかも官房長官(松野博一)もいるわけです。

しかも現時点では、4名とも知名度はイマイチであり、そのために新しいことをやる際の説得力とか、説得の方法としてのキャラというのも認知されていないわけです。

一方で、ご本人たちは現在の不安に満ちた世相の中では、国民の瞬間的な世論に気を使うはずが、現時点では「世論より組織防衛」という姿勢が透けて見えます。それはともかく、とにかくこの4名の体制ではなく、スッキリ司令塔を一本化しておかないと、この後で第6波が来た場合にも、反対にオミクロンが完全に弱毒かつ他の株を置き換えてくれて社会をオープンできるようになった場合にも、明確な方針を示して世論とのコミュニケーションはできないと思うのです。

2点目は、医療体制です。菅政権の失敗を踏まえて、岸田政権は「第6波に備えて、病床確保をしっかり」行うという公約を掲げています。この公約を掲げて、衆院選を戦ったのですから、極めて重たい公約です。ですが、問題は「病床は確保する」と言っていながら「医療従事者も確保する」という点は曖昧なわけです。

勿論、医療従事者の現場は「第5波」との戦いで疲弊しており、現在は通常モードに戻しつつ、力を蓄えている時期だと思います。ですが、それはあくまで現場レベルの話であり、国家レベルとしては、万が一にも「第6波」に備えるのであれば、病床だけでなく、医療従事者の確保についても具体案を持っているべきです。そのために医師会などとどんな調整をしているのか、サッパリ見えてこないというのは気になります。

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3点目は、ワクチン戦略です。具体的には「ブースターを早める」のかという点と、別の問題として「オミクロン対応型にチューニングされるのを待ってからブースターに行くのか」という問題があります。これは大変にクリティカルな問題であり、判断を間違えると多くの人命に関わります。

ムダを覚悟で、多方面の手配をするのが肝要であり、堀内大臣には河野氏以上の「突破力」が求められます。にもかかわらず、「接種体制の変更負荷には反対した方が、現場が安心する」という判断なのか、「ブースターの8ヶ月後から6ヶ月後への前倒し」に反対するかのような、つまり組織防衛的なスタンスで仕事をしているように見えます。

更に言えば「余っているモデルナを使って欲しい」的な動きをしているのは稚拙です。つまり心筋炎の問題から忌避が始まっているモデルナについて、本気で世論の懸念を払拭するような「突破」の姿勢ではなく、組織防衛的な匂いから「モデルナも使ってくれ」というのでは、世論は動きません。

もしかしたら、堀内大臣には将来は厚労相になりたいという野心があり、その時のために「官僚組織と仲良くしておく」ために組織防衛的に動いているのかもしれません。だったら、政治家として見方が甘すぎると思います。もっと本質を見て、世論にストレートに向き合っていかねば政治は動かない時代だからです。

とにかくこれは心配です。厚労省だけでは動きが停滞する問題があり、そこにワクチン担当相を置くことで「突破」できるというのが菅政権の設計で、これは組織的な最善手だったわけです。その辺が理解されていないというのは心配です。

4点目は「GoTo」です。この状況で1月からスタートというのは、本当にうまく行くのか心配です。仮にですが、世論が懐疑的になる中で、山際大臣が突っ走ると政治的には良くない状況になってしまいます。この点でも、やはり司令塔の一本化をしておかないと、下手をすると政権全体が失速することになりかねません。

アメリカから見ていますと、日本のコロナ禍の現状は「まぶしく」「うらやましく」見えます。とにかく日本としては、せっかく現状まで持ってきたわけですから、これを、できるだけ維持していかねばなりません。そのためにも、この4点を厳しく再確認していただきたいと思います。

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image by: 首相官邸

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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