2度目の敗戦危機。岸田首相「対中優柔不断」が日本にもたらす災い

ktn20211222
 

岸田首相の中国に対する優柔不断な態度が、日本に大きな災いをもたらすことにつながりかねないようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、第2次世界大戦の敗戦をはじめ、日本の指導者たちが致命的な失敗を犯してきた理由を分析・解説。さらに岸田首相の近視眼的にすぎる姿勢を批判するとともに、一刻も早く北京五輪の外交的ボイコットの決断を下すべき訳を記しています。

日本が負けたのは【●●的視点】がなかったから。そして今も…

日本は戦後、GHQに自虐史観を植えつけられました。それで、いろいろ困ったことが起こりました。たとえば、

「日本が第2次大戦に負けた真の理由を分析することができなくなったこと」

なぜ?「自虐史観」というのは、要するに

  • 日本は悪い国です
  • 日本人は悪い民族です

ということ。それで、「日本が負けた理由」は、

  • 日本が悪いことをしたから

で終わらされてしまった。しかし日本は、史上最悪の独裁者スターリンのソ連より悪いことをしたでしょうか?原爆投下より悪いことをしたでしょうか?大英帝国より広大な植民地をつくったでしょうか?

冷静に考えれば、「日本は悪い国だから、日本人は悪い民族だから、日本は悪いことをしたから負けた」というのが、「まったく論理的でない」ことに気づきます。

では、なぜ日本は負けたのでしょうか?

日本が負けた理由

私はかなり長い期間、「日本が負けた本当の理由」について研究しています。いろいろわかったことがあります。たとえば、

  • 日本敗戦の遠因は、日露戦争後の対応にあった
  • 日露戦争時日本に多額の財政支援を行ったアメリカは、戦後南満州鉄道の共同経営を望んだ。日本はこの提案を拒否したため、日米関係は悪化した
  • 第1次大戦時、当時日本の同盟国だったイギリスは、日本に陸軍派遣を要請した。日本はこれを拒否し、一兵も送ることはなかった。イギリスは幻滅し、戦後日英同盟は破棄された
  • 日本が1932年満州国を建国したことに中国は反発。国際連盟は「リットン調査団」を派遣した。昭和天皇は、「リットン調査団」の勧告を支持したが、日本政府は反対。結果、日本は国際連盟内で孤立し、脱退することになった(しかし、脱退する必要はなかったともいわれる)
  • 国際連盟を脱退した全権代表松岡洋祐は、帰国時「英雄」として熱狂的歓迎を受けた(日本国民は、国際連盟脱退を喜んでいた)
  • 1939年、第二次世界大戦がはじまった。この年、日本は、ナチスドイツの同盟国ではなかった。しかし、1940年、日本は正式にドイツの軍事同盟国になった
  • 1941年8月、アメリカは、日本への原油輸出を停止。石油の90%以上を輸入に、そのうち8割をアメリカに頼っていた日本は危機に陥る。それで、「真珠湾攻撃」を決断。しかし、実をいうと真珠湾を攻撃する必要性はなかった。オランダ領インドネシアの油田を確保していれば、石油問題は解決された。日本がアメリカを攻撃しなければ、「不戦」を公約に掲げていたルーズベルトは、日米戦争を開始できなかっただろう

などなど、ざっくり書きましたが、敗戦の原因は山ほどあります。

こう書くと、「やはり北野は自虐史観だ」と思う人もいるでしょう。

いえ、そうではありません。私が書いていることは、「日本が負けにつながる行動をとった」という話。「日本が道徳的に悪かった」という話ではないのです。

日本が負けた理由は、いろいろいろいろあるのですが、一つ一つの「負けにつながる行動」のベースにある「見方」があります。なんでしょうか?

それは、日本の見方が、「近視眼的だった」ということ。別の言葉で、「戦術的だった」ということ。

たとえば、アメリカと南満州鉄道を共同経営するという話。日本政府が、「戦略的視点」をもっていたら、どういう決定を下したでしょうか?

当時日本最大の仮想敵は、いうまでもなくロシア帝国です。日本がもっとも恐れていたのはロシアの「南下政策」。これを防ぐための「緩衝地帯」として、朝鮮半島、満洲に進出した。

では、アメリカを南満州鉄道に入れたらどうなるでしょう。ロシアが南下してきたら、アメリカが戦ってくれるでしょう。そうなれば、どれほど日本は楽になったことか。こういう「戦略的視点」が、当時の日本にはありませんでした。

アサヒビール名誉顧問の中條高徳氏は、名著『おじいちゃん戦争のことを教えて~孫娘からの質問状』の中で、こう書いています。

日本にはもっと賢明な選択肢があったのかもしれない。たとえば、満鉄を共同経営しようというアメリカの鉄道王ハリマンの提案をそのまま受け入れていたら、昭和の歴史は大きく変わっていたのではないかとおじいちゃんには思えてならない。(p31)

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