MAG2 NEWS MENU

前澤友作への批判に乙武洋匡が苦言。“金持ちの道楽”宇宙飛行を称賛するワケ

先日、前澤友作さんが日本民間人初の宇宙飛行を成し遂げ、地球へ帰還しました。その話題に対して“金持ちの道楽”という批判も聞こえメディアでも取り上げられましたが、メルマガ『乙武洋匡の七転び八起き』の著者・乙武洋匡さんは、前澤氏に感謝の言葉を贈りました。その理由とは?

何度転んでもまた起き上がる乙武洋匡さんのメルマガ詳細はコチラから

 

前澤氏の宇宙飛行を「金持ちの道楽」と批判する人に伝えたいこと。

前澤友作さん乗せた宇宙船がドッキング 日本民間人初ISS滞在へ

素直に「おめでとうございます」と、私は言いたい。

ところが、そういう心持ちの人ばかりではないようだ。テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』でコメンテーターを務める玉川徹氏は、自身が閉所恐怖症であるが故に宇宙旅行には興味がないことを明かした上で、「僕は自分が興味ないってこともあって申し訳ないんだけど、金持ちの道楽見せられてもなっていう感じですけどね。正直言うと 」とコメントして話題となった。

玉川徹氏、前澤友作氏の「宇宙旅行」に「まったく興味ない…金持ちの道楽を見せられても」

これにはネット上の声も賛否両論で、「素直に感動したけどな」「金持ちはガンガン経済を回してほしい」といった肯定的なコメントもあれば、「玉川さんに同感で興味ない」「もっと他に放送すべきことがあるはず」といった否定的なコメントも並んでいた。

「もっと他に放送すべきことがあるはず」という意見については、わからないでもない。たしかに興味のない方にとっては、「こんな話題、ニュースとして放送に値するだろうか」と疑問に思うだろうし、扱うにしたってもっと短い時間でいいはずだと感じることだろう。

ただ、世間の人々が何に興味を持っていて、どんなアンテナを張っているかは千差万別だ。もっと海外で起こっていることに興味を持ち、国際的なニュースを流すべきだと感じる人もいるだろうし、そんな小難しい話はいいから芸能スキャンダルをもっと扱ってほしいという声も残念ながらあるだろう。

そうした視聴者に寄り添いすぎるスタイルがいいかどうかは別にして、現実としてテレビ局はそうした様々な声を拾い集めながら総合的に判断して扱うニュースを決めている。それで言えば、玉川氏や一部の人にとっては前澤氏の宇宙旅行は「興味のないニュース」だったのだろうが、多くの人にとっては関心事であると、少なくともテレビ局は判断したのだろう。

何度転んでもまた起き上がる乙武洋匡さんのメルマガ詳細はコチラから

 

さて、本題。玉川氏の「金持ちの道楽」発言。私はこのコメントを聞いて、率直にこう思った。

「それの何がいけないの?」

絵画や音楽、映画や建築など、多くは「金持ちの道楽」によって発展してきたといっても過言ではない。たとえば、世界的な建築家として真っ先に名前が挙がるであろうアントニ・ガウディも、繊維業を営むエウゼビ・グエルに見出され、生涯にわたって彼の支援を受けながら作品を創り続けた。言い換えれば、世界中を虜にする ガウディ作品は、グエルという大富豪の「金持ちの道楽」によって生み出された と言っても過言ではないのだ。

今回の前澤氏の宇宙旅行にも、そのような側面がないとは言えない。これまでは“プロフェッショナル”しか行くことができなかった宇宙に、日本人として初めて民間人が到達することができた。たしかに、その理由は「彼が富豪だから」だ。しかし、今後も「私も行きたい」という富豪が後に続き、宇宙旅行というものが少しずつ一般化していけば、将来的にはコストが下がり、海外旅行の延長線上にあるような位置付けになる「かも」しれない。

そうした意味では、「金持ちの道楽」は決して批判されるべきものではないはずだし(ニュース番組でどれくらいの時間を割くのが適切かは別問題として)、むしろ称賛したり、感謝する声がもっと上がってもいいのではないかとさえ思っている。まあ、前澤氏の場合は、SNSのフォロワー集めのための露骨な“お金配り”をやって反発を招いたりもしているので、今回の宇宙旅行に関してもそうした延長線上で捉えてしまった人も多いのかもしれないが。

さて、今回のニュース、個人的には前澤氏に感謝している。というのも、私の将来に関して、ひとつの“選択肢”が浮かんできたからだ。

何度転んでもまた起き上がる乙武洋匡さんのメルマガ詳細はコチラから

 

私のなかで、以前からずっと解決できない疑問があった。この地球上において「障害」というマイナス要素として捉えられる私の肉体は、無重力状態においてはどうなるのだろうか。やはり地球上と同じく、不便な肉体なのか。それとも健常者と呼ばれてきた人々よりも有利になる部分も出てくるのか。それは「手がない」ことと「足がない」ことでは意味合いが変わってくるのか。

しかし、これまで宇宙飛行士と言えば、もっぱら「手足がある人」ばかりだから、私の疑問が氷塊されることは一生ないのだろうとあきらめていた。しかし、今回の前澤氏のニュースを見て、ひょっとしたら私が生きているうちに宇宙に行けるチャンスも、ワンチャンあるのでは……と思うようになったのだ。

もちろん、私自身は独力で宇宙旅行に行けるほどの資産家ではないけれど、どこか酔狂な金持ちが「面白そうだから乙武を同行させよう」なんてことにならないとも限らないではないか。

そんな妄想を抱いていたら、なんと今年3月に配信されたこんなニュースを発見した。

宇宙における「真の多様性」を実現すべく、欧州が身体障害のある飛行士の募集に動き出した

ESAの担当者の説明によると、先天的もしくは後天的な理由で片足または両足が欠損している候補者も検討対象になる。ほかにも、例えば左右の足の長さが異なる人や、身長が130cm未満でも応募が可能という。

ほら。これ、ワンチャンあるぞ!?

「宇宙飛行士・オトタケ」、夢が広がるじゃないか!!

何度転んでもまた起き上がる乙武洋匡さんのメルマガ詳細はコチラから

 

image by: Shutterstock.com

乙武洋匡この著者の記事一覧

乙武洋匡が目指す「誰もが平等なチャンスを得られる社会」に向けた仲間を募集しています。時事ネタや趣味に関するコラム、人生相談やQ&Aコーナー、義足プロジェクトの進捗状況を交えたマネージャー日記など、豊富な内容をお届けしていきます。また、新作小説『ヒゲとナプキン』もこちらで連載開始。
常人とはまったく異なる境遇を生きてきた乙武洋匡の物の見方や社会に対する考え方、日頃の活動の様子などをお伝えしていきます。何度転んでもまた起き上がる不屈のスピリット「乙武洋匡の七転び八起き」にぜひご参加ください。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 乙武洋匡の七転び八起き 』

【著者】 乙武洋匡 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 土曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け