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文章を書くことは“深い森を歩く”こと。勇気を振り絞らなければならないワケ

誰でも文章を書いたことはあると思いますが、なかなか書き始めは苦労するもの。重い腰を上げて書くという人がほとんどで、スムーズに進められるものではありません。そんな書くことに関して思いを綴るのは、『からくりTV』『金スマ』などを企画制作したTVプロデューサーの角田陽一郎さん。自身のメルマガ『角田陽一郎のメルマガDIVERSE』の中で、「文章を書くことはとても勇気がいる」と語り、さまざまな角度から検証していきます。

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『抜け出す、息抜く、そして生き抜く』

「勇気を振り絞って」

おはようございます。今日は2022年最初の満月です。今回はミニマムムーン、地球から最も遠い満月だそうです。

僕はと言えば、満月の朝に、今この文章をiPhoneでソファに寝っころがりながら書いています。なんていうかデスクに向かいたくない時ってあるんですよね。これ、本当困るのですが、でも午前中には原稿を書いちゃいたいので、今勇気を振り絞って書いています。

今、“勇気を振り絞って”って書きましたが、この言葉をここで使うのには違和感がありますよね?

メルマガで文章を書くのに“勇気を振り絞って”書く必要があるのでしょうか?と。

でも、文章を書いたことがある人は、というかほとんど全員文章は書いたことあると思うのですが、何かの文章を書くという行為は、とても勇気がいる行為ですよね。だから、この“勇気を振り絞って”という言葉には、なんか皆さんのうちの何人かは少しは理解してくれるような気もします。

逆にいえば、勇気など振り絞らずに文章を書ける人もいらっしゃるでしょうから、そんな人は、きっと文章を書くのがそんなにストレスじゃないのでしょう。

なので、僕が、この文章を書くのにあたって“勇気を振り絞って”書いているってことは、多分僕には根源的に、文章を書くのが“恐い”あるいは“苦手意識”を持っているんだってことが、自己分析できます。

あれ?角田陽一郎ってのは、たくさん文章を書いてるじゃないか?

書籍だってどんどん出版してるじゃないか?

そんなに文筆をしている人間なのに、そんなに文章を書くことに恐れを抱いているのか?

そんなに苦手意識を持っているのか?

そもそもメルマガだって連載してるじゃないか?

むしろ文章を書くのが好きだからやってるんじゃないのか?

って思われる方もいらっしゃるでしょう。

でも、その文章で、僕の心境を告白してしまえば、そうなのです、僕は文章が書くことが恐いですし、とで苦手意識を持っているのです。

でも、なんでそれでも文章を書いているのか?

今日は、そんなところを紐解いてみたいと思うのです。

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というか、ここまで書いてみて、自分でも、僕が“勇気を振り絞って”文章を書いてることの一番の原因が見て取れます。

それは「何を書いていいか?わからないところから、書かなければいけない」ということなんです。

文章を書きたい、その根源的な欲望は、もともとはたしかに“ある”のです。

なんなら、昨年夏に初小説『AP』を上梓しましたが、なんなら文章を書くことを生業にして、職業として作家になりたいくらいなのです。なので、“書く場”はあります。このメルマガ然り、他の連載然り、何冊か出版社さんからは依頼もいただいてますし、なんならnote等で自分で文章を発信もしています。そういう意味で“書く場”はあるのです。

そして、文章を書くという行為は、その“書く場”という未開の領域を探検しなければならないのです。

それはつまり、深い森の中を探検する行為に似てる気がします。

森の中を探検する行為、それってとても憧れますよね?

僕にとって(多分誰にとっても)文章を書く行為というのは、森に深く分け入る行為なんだと思うのです。

でも実際、その森を進もうとすると、迷ってしまうのではないか?

なんか猛獣に襲われるのではないか?

怪我してしまわないだろうか?

事故に合わないだろうか?

装備の準備は足りてるのだろうか?

自分一人で抜け出せるのだろうか?

その森で夜を過ごすとして、その漆黒の闇に一人で孤独に耐えられるのだろうか?

そんないろんな不安がよぎるだろうと思うのです。

つまり、文章を書くというのは、そんな未開の森を進もうとする“恐さ”を併せ持った行為なのでしょう。

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「インセンシティブ=鈍感になる」

実際、でも森を探検する=キャンプ、なんだと思うととても楽しい行為だとは同時に思います。キャンプしたいなー!って思いますし、実際キャンプに行くと楽しいこともたくさんあります。でも、やはり、それは億劫で大変で、相当な下準備と心構えを持たないと遂行できないイベントなんだと思うのです。つまりそんな快楽と逡巡が同時に惹起される行為が、森を探検する行為なのです。

そして、その森とは、実は自分の“脳内”なのです。なので、その恐怖は実際の森を進むこと以上にある意味とても恐いことなんだと、僕には思えるのです。

文章を書く行為は、自分の脳内を探検しなければなりません。多分、僕は自分の脳内に深く分け入ることに、とても恐さを感じてるんだと思います。

当然、甘美で洗練された場だって、脳内という森にはあります。ちゃんと脳内地図がしっかりあって、迷わずに向かえるような領域だってあります。でもそれと同時に、分け入りたくないような領域があるのです。

脳内の森には、たしかにあるのです。どす黒くて、目を背けたくなるような場所、でも森の中を探検していると、そんな場所にうっかり足を踏み入れてしまうものなのです。

その時の恐怖といったら、というか仮にその場をなんとなく自己同定して、その場に近づかないようにしようと努力していても、つい道に迷ったり、その途上で地図の現時点がわからなくなったり、コンパスが狂ったりして、結果どんどんそんな漆黒な領域へ自分は進んで行ってしまうのです。

あるいは、またそんな暗黒領域に自分は入ってしまうのではないかという、恐れを事前に感じてしまうのかもしれません。

そんなスリルに、そんなアドベンチャーに、それをワクワクドキドキ楽しもうと思える心身の健全さがあるのならば、この脳内の森を進む行為は、とても楽しくエンターテイメントであることでしょう。

でもその体力がない時には、とても耐えられたものじゃありません。つまり、それが“文章を書けない”あるいは、文章を書くことに恐怖を感じてしまう源なんだと思うのです。

今、ここまで書いてきて、つまり僕は今日この満月に自分の脳内を探索してみて、今どんな気分なんだろう。満月は満るタイミングです。そういう意味で2022年が始まり正月3日新月で始まった上弦の月は、今満月となって、これから欠けていこうとしています。

僕はといえば、その新月から、新たな2022年を新たな気持ちで始めてみようと“意気込んで”みたものの、この満月あたりでなんとなく早くも“息切れ”してしまったのかもしれません。だから、今は、ソファに寝っ転がってなんとか書いているんだと思うのです。

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でも、それでも、そんな低調子で森の中を探検していても気づけたことが一つだけ、あります。それは、自分がなんで“息切れ”してしまっているのか?ってことです。

多分、推測するに、それは“意気込み過ぎた”ってことだと思います。で、脳内を探検するのに、“意気込み過ぎ”ると、それは過敏=センシティブになってしまうっていうことなんだと思うのです。

いろんな外観で起こった事象と、それから影響される自分の内観、その外観と内観が過敏に過剰反応してしまって、そこに自分が過剰対応してしまってるような状態です。脳の過呼吸とでもいうか。

だから、僕がこの“息切れ”から脱出するためには、つまり脳内の森の中で自分が踏み込んでしまった暗黒領域からなんとか抜け出すためには、そんなセンシティブな自分を、止める必要があるのだと思うのです。

敏感の逆、つまり鈍感になる。

でもこれって、難しいのです。文章を書くという行為は、あらゆる外観にセンシティブに反応する内観が必要なんだと思うのです。だから何かが書けるということは、森の比喩で言えば、さまざまな森の中の危険な予兆に過敏に対応し、過敏に防御をし、過敏に準備をする、そんなセンシティブさが必須なんだと思うのです。

でも、そのセンシティブな自分は、センシティブなだけに、森の中で遭難してしまう。そこから抜け出せない。だから遭難から脱出するためには、センシティブという道具を自ら捨て去る必要があるのです。

敏感=センシティブを捨て去るとは、つまり鈍感になるってことですよね。何事にも鈍感になる。なれるのだろうか?鈍感になって文章が書けるのだろうか?はたまた脳内の森の中を本当に抜け出せるのだろうか?

それってもう目を瞑って、あてずっぽうに彷徨い歩くってことなのだろうか?

僕は、もしかしたら、この文章を、先程から実はそんな感じで書き綴っているのかもしれません。だから書けているのかもしれません。

敏感って英語でセンシティブですよね。ちなみにでは鈍感って英語でなんと言うのだろう?
気になって調べてみました。

<insensitive インセンシティブ>

つまりセンシティブに反対の接頭語inをつけただけでした。

でもインセンシティブ、なんかそんな状態になる必要が、僕にはあるのです。

で、多分皆さんにも、きっとあると思います。

多分2022年、オミクロンがまた蔓延して、トンガの火山が爆発して、雪がたくさん降って、無差別殺人行為が起こって、いろんな人がいろんな森で迷ってるのかもしれません。神経過敏になってるかもしれません。

だとしたら、インセンシティブになってみるのはどうだろう?

世界に鈍感になる。

この満月で気持ちがぱんぱんに満ったのならば、ここから気持ちを抜いてみる。

抜け出す。

息抜く。

それが、この世界で生き抜くための最後の手段なのかもしれません。

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image by: Shutterstock.com

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