いまや観光街となった大阪・新世界。ディープなイメージは払拭されたかのように思えますが、お店に入れば昔のままの新世界を体感することもできます。そこで今回、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんがメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』で紹介するのは、新世界で名物となったある一軒のお店。メディアに多く取り上げられるというその理由とは?
「酒のモーニング350円」。話題性の裏に隠された本当の実力
大阪新世界。言わずと知れた、ディープな街。
以前は、柄の悪い連中や酔っぱらいがうろつき、決して安全とは言えない場所でした。
しかし、いつの頃からか、そのレトロさが見直され、観光客がやって来るようになりました。
安い居酒屋や串カツ屋、激安の寿司屋、将棋道場、弓道場、大衆演劇場、スマートボールなど、いまの若い世代が知らない“文化”が残っており、物珍しさが注目されるようになりました。
観光客が来るようになると、いままでゴミが散乱していたようなところも掃除され、酔っぱらいが道端で寝ることもなくなりました。
「レトロ大阪」をテーマにした観光地の誕生です。
全国各地から、また海外からのお客さまも増え、ディープな街というイメージは払拭されたかのようです。
明るく賑やかで、元気な街となっています。
しかし、居酒屋に入ると、そこでは昔の新世界を見ることができます。
近寄り難き、酔っぱらいのおっさんたち。
外をうろつく姿はあまり見掛けませんが、お店の中でたむろしていたのです。
酔っぱらい、健在。
その証拠に、朝から開店している居酒屋もちらほらあります。
その中の一軒、ジャンジャン横丁と呼ばれる小さな商店街の中に、朝9時オープンの立ち呑み屋があります。ここは、テレビや雑誌でも度々取り上げられている有名店です。
なぜ取り上げられるのかというと、「お酒のモーニングセット」があるからです。
生ビールまたはチューハイ+ゆで卵・塩昆布で、350円。これが、注目を集めているのです。
モーニングと言えば、喫茶店のメニューですが、立ち呑み屋で提供しているのは珍しく、「酒のモーニング発祥のお店」と言われています。
周辺にも朝早く開いている居酒屋はありますが、このモーニングを目当てにやって来るお客さまが多くいます。モーニングの集客力は絶大なのです。
しかし、このお店の本当の魅力は、モーニングではありません。
確かに、注目度も集客力も高いのですが、それはマスコミや新規のお客さまを誘引しているに過ぎません。
多くの常連さんを抱える秘密は、お酒や料理にあります。
お酒は、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、テキーラなどを揃えています。
中でも日本酒は、「剣菱」「呉春」「賀茂鶴」など、通好みの品揃え。
焼酎は、各種チューハイがありますが、「コーヒー焼酎」や「紅茶焼酎」、ヒアルロン酸とコラーゲンの入った「うるおい酎ハイ」などのオリジナルも用意しています。
料理は、おでんや刺身、肉豆腐などの定番のみならず、くじらおばけやくじらベーコン、マグロユッケ、梅くらげ、肉スープ、ホルモン炒め、おでんだし巻き、鶏のハラミなど、多種多様な味わいを楽しむことができます。
酒呑みとしては非常に嬉しいことで、毎日来ても飽きない品揃えなのです。
味の評判も良く、しかも安い。
これが、このお店の魅力なのです。
酒呑みが多く、周囲に居酒屋も多いということは、それだけ競争も激しいのです。
その中で生き残り、勝ち抜いて来たのですから、その実力は間違いのない、本物です。
「酒のモーニング」で注目はされたとしても、それ以上の魅力がたくさんあるからこそ、繁盛し続けることができるのです。素晴らしいお店です。
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